中国の内モンゴルで作られた長編歴史ドラマ「成吉思汗(チンギス・ハーン)」が8月末から中国中央テレビのゴールデンタイムで連続放映された。前評判が高かったが、完成から放映まで5年もかかったいわくつきの大河劇だった。
多民族国家・中国は少数民族の一体感が統治に欠かせない。少数民族の文化や英雄は中華民族の文化や英雄でもある。異民族支配の元王朝を打ち立てたモンゴル帝国の元祖であれ、「強い中国」をめざす愛国主義路線には格好の素材だ。
ドラマは全30話で、99年に完成した。だが、新疆(しんきょう)ウイグル自治区のイスラム独立運動への警戒や中央アジアの国々への配慮から、中国当局は放映許可をためらった。ドラマがモンゴル系中国人の民族意識を高め、汎(はん)モンゴル主義の機運を生みかねないと懸念したともうわさされた。
01年には米同時多発テロも起き、アフガニスタン戦争、イラク戦争が続いた。そこはチンギス・ハーンによるユーラシア大陸侵攻の舞台。中央アジアを征服した歴史をリアルに描いたドラマの放映はタイミングが悪い。許可申請は何度も却下されるなど翻弄(ほんろう)された。
しかし、制作段階から注目を集めていた作品だ。ひそかにDVDが出回り、評判になった。02年からは台湾や香港、モンゴルで相次いで放映され反響を呼んだ。中国国内での放映を求める声も高まり、北京五輪と国威発揚をにらんでか、この夏やっと許可が出た。
ただし、放映は中央アジアへの遠征を描いた最後の5話を3話に短縮した計28話。征服された国々や都市の名は大幅に削られたり、ぼかされたりした。
高視聴率を稼ぎ、地方局の中には海賊版を無許可で放映し裁判ざたになったところも出た。しかし、山場の征服戦争が大幅にカットされたことに視聴者の不満が噴出。モンゴル族同様、チンギス・ハーンを先祖とみる中央アジア系の人々の間では「なぜ彼が『中国人の英雄』なんだ」と、戸惑いの声も上がった。
中国が朝鮮古代史の高句麗を「中国史の一部」と強弁して韓国の怒りを買ったのは最近のこと。少数民族の文化と尊厳をどう守るか。中国は建国以来の課題をまだ解決していない。