成長著しい都市部との格差に悩む中国の農村部で、農協づくりがいま静かなブームになっている。
人民公社の解体後、生産請負責任制下で個人経営となった農民は組織に対し慎重だったが、流れが変わり始めたのは90年代半ばだ。市場経済からの落後が明らかになった。バラバラの零細経営のままでは市場での発言権が弱く買いたたかれる。そこで世界の先進例を考察し、生き残り策のモデルを日本の農協に求めた。
中国農業省によると、昨年末の農協数は約15万、参加農家は2300万戸を超え、全国の農家の1割を占める。生産技術の交流から共同購入、共同販売へ。一時は信用事業まで協力のすそ野は広がった。産地を形成して市場での価格交渉力の向上を目指す。従来の官主導の合作社とは異なり、農民の自主性が強いのが特徴だ。8割以上が村や町の小組織だが、県の壁も越えて輸出の全国組織に成長したところもある。
現場からの盛り上がりだけに、農業再建への貢献を期待する声は大きい。
だが、課題もまだ多い。
昨年やっと政府の支援策が強化され、人材育成や商標登録、有機食品の認定などで110余りの組織に総額2千万元(約2億8千万円)が支出された。しかし組織の要である人材育成ひとつとってみても、新しい市場経済のもとで海千山千の集荷商人や企業と対等に渡り合える農民指導者の数はまだまだ足りない。
根幹には、続々と生まれているこうした組織について党と政府の腰が据わっていない問題がある。かつて「日本の農協に学ぼう」と音頭をとったこともあったが、農民による自主組織を公認する法律はいまだに制定されていない。政治の壁が残っているのだ。
また以前は、農家の貯金を集める農村合作基金会が農協と連携して信用事業も担う日本式総合農協を目指す有望な動きがあったが、その後ライバルの政府系金融機関の圧力でつぶされてしまった。これも自主的な動きに対して政府の腰がふらついている一例だ。
国民の大半を占める農民の苦境打開へ正面から取り組むためにも、早期に信用事業の解禁、復活に踏み切り、農協の事業基盤を強化する必要がある。