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 コラム・時評
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インドネシア ポルノ規制で揺れる世論


バクティアル・アラム
インドネシア日本研究協会会長

アラム

穏健派イスラム教徒を中核に多民族、多宗教の国であるインドネシアで4月上旬、米誌「プレイボーイ」のインドネシア語版が発刊され、論議を呼んだ。

ジャカルタでは、強硬派団体の支持者数百人が同誌編集部があるビルに押し掛け、窓ガラスに投石し、警察と衝突した。デモ隊は創刊号を燃やして気勢を上げ、編集部員や同誌に広告を出した企業の幹部をわいせつ罪の疑いで訴えると息巻いた。

創刊号にヌード写真はなかった。記事の内容もまじめさが目立った。なぜ激しい抗議が起きたのか。折しも、国会でポルノ規制法案が一大争点になっていた。発刊は保守派とリベラル派の対立の炎に油を注いだ。

プレイボーイ誌に対する反対運動が高まる中、保守勢力は「ポルノ規制法の成立を急げ」と強く主張。他方、女性団体など市民約6千人がジャカルタ中心部で法案に反対するデモを行った。市民の関心は、プレイボーイ誌論争から、この国の言論・表現の自由と直接関連する本題のポルノ規制法案に収斂(しゅうれん)した。

インドネシアでは98年のスハルト政権崩壊の後、報道や表現の自由が確立されたが、次第に性的な内容を含む出版物や映像が各種メディアに氾濫(はんらん)してきたため、是正策として同法案が提出された。しかし、内容が個人の人権や自由を束縛するとの批判が女性団体や知識人から続出した。

法案ではわいせつ行為や「官能的」と見なされる体の部分や行為が極めて広範にわたっている。例えば、接吻(せっぷん)もわいせつ行為。「官能的な身体部分」には、へそ、太もも、二の腕なども含まれる。

女性団体は、「法案の道徳観は女性や女性の肉体に対する蔑視(べっし)に基づいているうえ、自由な創作活動も制限する」と批判する。

ポルノ規制をめぐる保守とリベラルの対立は、かつて中央集権のもとで抑圧されていた言論活動が自由になった証しでもある。特に規制に反対するリベラル派の主張には、この国の言論活動の成熟が感じられる。

問題はこれからだ。インドネシアの民主主義が一層熟成するためには、両勢力が民主的な方法で意見を戦わせ、冷静に着地点を見いだすことが必須条件だ。

2006年 5月13日
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