「大干ばつで荒廃 砂漠化加速」 「坑道の水飲み 手足にしびれ」
成長を続け、世界貿易機関(WTO)にも加盟した中国。まだ多く残る貧困地域の離陸を目指し、西部大開発計画も打ち出した。朝日新聞アジアネットワークの「アジアの環境エネルギー」チームのメンバーが取材した結果をもとに、中国への日本の協力や開発と環境のきしみについて報告する。
●森林を削る
標高が1000メートルを超える高原は、年間平均の降水量が400ミリの乾燥地帯だ。しかし、ひとたび雨が降り始めると局地的な豪雨になることが多く、表土が流出し、浸食谷が至る所に出現する。
92年以来、現地の中国共産党青年委員会と協力して、はげ山の植林活動を展開している市民団体・緑の地球ネットワーク(本部・大阪市、略称GEN)の植林体験ツアーに参加した。
大同市西郊にある左雲県の丘陵地帯を進む。道路の左右のジャガイモ畑は枯れて土がむき出し。昔、馬賊が身を隠して逃げ回った逸話が残るコウリャンもせいぜい1メートルぐらいだ。油を搾るアマも高さ10センチで生育が止まっていた。土は、表面はザラザラしているが、下はカチンカチンに固まっている。死んだ畑だ。
大同郊外の今年の降水量は1〜6月合計で46.6ミリだった。例年の3割強にすぎない。雨が少ない地域で、森林を削り、耕作地を広げたため、砂漠化が加速した。雨が降っても土壌が保水できないから地下水も干上がる一方だ。
黄土高原を定点観測して、写真集「中国黄土高原」(東方出版)を出した写真家橋本紘二さん(56)はこんな深刻な例を教えてくれた。
炭鉱がある南水頭村では低地でかんがい用の井戸が掘られたため、丘陵地の井戸が枯れた。人々は炭鉱の坑道にたまった地下水を飲み始めた。その結果、手足のしびれを訴える人々が増え、まっすぐ歩けない犬が出始めた。
●大地は乾く
橋本さんの指摘で、当局が水質検査した。鉱毒が強く、人体に危険との結論が出た。この水を飲めなくなった村人は遠く盆地の集落まで水を買いに行くことになった。
GENの高見邦雄事務局長(53)は毎年、100日以上訪中し、植林を現地指導しているが、機関誌「黄土高原だより」にこう記している。
「ずっと以前、この地方に森林があったのはたしかでしょう。山西省の森林被覆率の推移について、以下のような推定があります(『山西通史』第9巻『林業誌』) 秦代以前50%、唐宋代40%、遼元代30%、清代10%未満、中華人民共和国建国時2・4%」
増加する人口を養うための過剰な開墾、都市造営や金属・陶磁器の精錬、焼成のための木材伐採、相次ぐいくさ……。
「文明の前には森林があり、文明のあとには砂漠が残る。大同はその典型の一つでしょう」
(AAN幹事 高木和男)