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The Asahi Shimbun Asia Network
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AAN発
アジアの環境協働管理を
市民同士で解決探る
石井 徹
AAN研究員(電子電波メディア局)

胸元の斑点を調べる医師
 ヒ素中毒の症状である胸元の斑点(はんてん)を調べる医師=バングラデシュで石井写す

 アジアで持続可能な発展を実現するには、政府、企業、市民が横のつながりを深め、「人と自然」の関係を協働して律する「環境協働管理」(環境ガバナンス)の定着が欠かせない。朝日新聞アジアネットワーク(AAN)の「環境とエネルギー・チーム」は、21世紀のアジアにふさわしい協働管理の青写真を描いてみた。

    ◇

 昨年9月に北京で開かれた「環境紛争処理日中国際ワークショップ」で、中国の内モンゴル自治区から参加した農民は訴えた。

 「銅精錬工場から出る二酸化硫黄のせいで、果樹が枯れて死んだ。政府に陳情したが取り合ってくれない。裁判で全財産を費やしたが未解決だ」

 日本側の参加者は耳を疑った。政府の関係者や日本人が出席している中で、公害の直接の被害者がこれほど率直に実態を訴えたことはない。

 日本の研究者らによる「日本環境会議」と、中国で公害被害者の救済に取り組む「中国政法大学公害被害者法律援助センター」が中心になって開いた。同センターは大学の機関のような名前がついているが、98年に設立された事実上の非政府組織(NGO)。被害者から電話や手紙による法律相談を無料で受けるなどの活動を続けてきた。

 ワークショップでは驚くような発言が続いた。「裁判官に環境汚染訴訟に関する基礎知識が乏しい。司法の独立が確立していない段階で正しい判決を下すのは困難だ」と語ったのは現職の裁判官だった。ある医師は「鉱山の乱開発などで、カドミウムによる被害が出ており、日本のイタイイタイ病によく似ている」と明らかにした。

 ワークショップには西淀川や尼崎の公害被害者と弁護士らも参加、自らの経験を語り、中国側の被害者や法律関係者らと交流した。会合の模様はテレビや新聞でも報道された。参加者は公害被害者が中国でも声を上げ始めたことを実感した。

住民の視点で

 アジア各地で、国境を超えた市民社会の互助が始動している。環境政策を政府や企業に任せ切りにせず、市井のつながりで解決策をさぐったり、実際に問題処理にあたったりする動きだ。

 アジアで「開発独裁」が目立った時代には、市民社会の成長、国境を超えた連携は容易ではなかった。だが、多くの国で民主化が進み、中国でも改革・開放路線が進展して、市民レベルの活動を抜きに環境問題を語れなくなった。

 市民社会の連携と互助は、日中国際ワークショップのように、先に環境問題で苦しんだ住民や社会が、知識や経験を伝えるという形で進められることが多い。

 バングラデシュのジョソール県シャシャ郡で、NGO「アジア砒(ひ)素ネットワーク」と国際協力事業団(JICA)が進めている移動砒素センタープロジェクトも、その実例である。

 同ネットワークは94年、宮崎県高千穂町の旧土呂久鉱山でのヒ素中毒被害者を支援してきた人たちが結成した。土呂久で培われた「村に入って住民と同じ視点で解決策を探る」という姿勢は、バングラデシュでも受け継がれている。

 バングラデシュでは、不衛生な水を飲んで病気になったり、死んだりする子が多かった。そこで政府や国際援助機関などが盛んに井戸を掘った。現在、井戸は全国に500万本以上と言われる。

 ところが90年代に入って、井戸から高濃度のヒ素が検出され、患者も確認された。農業などで水需要が高まり、大量の水をくみ上げたため、地中からヒ素がしみ出してきたのだ。汚染水を飲む人は3000万人以上にのぼるとみられている。

 移動砒素センタープロジェクトは、ヒ素対策のため、172村で約2万の井戸の水質を調査する。飲料水に適さない場合は代替水源を探る。

NGOが活躍

 次々と「開発独裁」が倒れ、民主化が進んだ東南アジアでは、地域が抱える共通課題に、国境を超えて協働作業を進めるNGOも少なくない。

 「警官隊が住民を強制排除しそうだ」。00年6月、6カ国を流れるメコン川流域の開発問題に取り組むNGO「メコンウオッチ」の松本悟さんに、現地のスタッフからメールが入った。

 タイ北東部、メコン川支流のパクムンダム。世界銀行の融資によって94年に完成したが、大きな漁業被害をもたらした。地元住民はダムの開放と撤去を求めて、座り込みを続けている。

 「強制排除」の情報は、瞬く間に現地からバンコク、東南アジア諸国を始めとする外国のNGOに広がっていった。メコンウオッチは世界銀行やタイ政府に武力行使を回避するよう申し入れた。結果的に、この時の流血の事態は回避された。

 アジアにはメコン川以外にも、水や森林など環境に関する問題ごとにメーリングリストが存在し、緩やかだが重層的な市民レベルのネットワークが形成されている。

 環境問題が密集するアジアでは、政府、企業、市民社会が協働して、立ち向かっていかなければ、持続可能な発展は望めない。政府、企業に比べて力の弱い市民社会が、連携と互助を通じて力をつけていくことは、実のある協働作業のためには欠かせない。

 であれば、パートナーとなる政府や企業も、国境を超えた市民社会の連携と互助を、積極的に後押ししていく必要があるのではないか。

環境協働管理  環境ガバナンスを本チームではこう訳した。環境という共有資源を政府だけでなく企業、市民が一緒になって保全・管理をする方法。アジアのほとんどの国では、森や河川などを政府が一括管理してきた。それは、資源の保全の点で不十分な上に、排除される弱者を生み出した。協働管理は、利害をもつすべての人々を自然環境の持続のために編成しなおす環境管理制度である。

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