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AAN発
動く中国とつきあう
「もうかる農業」を追求
 階層分化生む農の効率化
長岡昇

北京のスーパー
北京のスーパーに並ぶバター、チーズなど乳製品の数々=岩崎稔氏撮影

 四川省の成都市郊外。なだらかな丘に、プラム(西洋スモモ)の果樹園が広がる。面積約20ヘクタール。広大な農園を経営する張道春さん(51)は、6年前まで省政府直営の建設会社で電気技師をしていた。

 生活は安定していたが、公営企業では自分の創意工夫を生かすことができない。「農業に参入して、自分の可能性を試してみたかった」という。自己資金や借金で8万元(1元=約15円)を用意し、67アールの農地を借りた。

 最初から、米国産のプラムに狙いを定めた。都会では高級な果物として人気が高かったが、まだそれほど出回っていなかったからだ。狙いは当たり、年間売上高300万元、従業員100人の優良企業に成長した。

 「農民には市場が何を求めているかが分からない。技術もない。農業経営には私のような都会育ちの方が向いている」と張さんは語った。

 

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 中国の農村は今、第3の改革の波に洗われている。生産請負制の導入、農産物の流通自由化に次ぐ「農業の構造改革」という波である。

 農業経営の大規模化をめざし、企業の参入が大胆に進められている。農村の余剰労働力の吸収を期待して、政府も企業化を後押しする。

 構造改革のもう一つの柱は、付加価値の高い農業の振興だ。典型が酪農である。

 市場経済化が進み、中国の朝はあわただしくなった。都市部では、朝食を「饅頭(まんとう)と粥(かゆ)」から手軽な「パンと牛乳」に替える家庭が増え、乳製品の需要が急増した。

 河北省の鹿泉市は、北京に近い地の利を生かして酪農に力を注ぎ、全国有数の産地に躍り出た。

 かつては数頭の牛を飼う農家がパラパラとある程度だったが、90年代に酪農団地を次々に造成した。飼育頭数は今や1万頭を超す。

 張景風さん(44)は小麦栽培をやめ、酪農に転じた。9頭の乳牛を飼い、畜産指導員の資格も取った。年収は夫婦で3万元と、以前の数十倍に増えた。

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 「もうかる農業」の道をひた走る中国。だが、だれもが改革の波に乗れるわけではない。

 酪農団地の牛舎で寝起きしながら働く出稼ぎの農民に話を聞いた。

 朝4時に起床。休息をはさみながら夜7時まで働く。賃金は年に4千元。休日はない。年に一度ほど、里帰りで休むだけという。

 規模が大きくなると、酪農家は牛の世話を出稼ぎの人に任せ、経営者になる。農民の間で階層分化が急速に進んでいる。

 経営規模の拡大や企業の参入、農民の移動に伴って、農地の流動化も激しくなっている。田畑の利用権を持つ農民が賃貸するだけでなく、借りた農地を転貸するケースも今や珍しくない。

 中国の耕地は世界の全耕地の7%。その土地で世界総人口の22%、13億人を養わねばならない。農地の利用効率を高めるためにも、流動化をさらに進めるしかない。

 もっとも、米や小麦、トウモロコシなどの食糧生産では、規模拡大があまり進んでいない。農民は食糧用の農地を手放したがらないからだ。

 「中国は食糧を大量に輸入せざるを得なくなる」との予測もあるが、いまのところ年間5億トン前後の食糧生産を維持し、自給体制をほぼ維持している。

 むろん、楽観はできない。世界貿易機関(WTO)への加盟に伴い、価格面で国際競争力のないトウモロコシや大豆などは厳しい輸入圧力にさらされている。

 摩擦ときしみも増大させながら、中国の農業改革は新たな段階に踏み込もうとしている。

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