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| ワン・シャン 現代中日関係を研究し、96年から98年まで早稲田大学大学院で留学研究。 |
この9月に来日して、国交正常化30周年にあたっての日本の多種多様な中国報道に接する過程で、日本のメディアの中の三つの視点が気にかかった。中国共産党の一党支配の弊害を指摘した「崩壊論」、「世界の工場」化や高成長の面に目を向けた「脅威論」、及び環境の悪化、エネルギー危機、水不足に着目した「発展限界論」である。中には、決して好意的ではない見方に立ったものも含まれる。
国交正常化前後の新聞記事も調べた。長期的な視野に立った双方の立場を映して、日本の中国報道は両国関係の先行きを楽観視する論調が主流を占めた。友好ブームはその結果だったといえる。
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ところが30年後の現在、中日の各種世論調査の結果では、相手の印象について「特に親しみを持つこともないが、嫌いでもない」という意味の「普通」という答えが中心になってきた。30年前と比べれば「好感度」は明らかに低下した。それは中日関係が、経済交流の緊密化などによって、形式的な友好関係から、お互いの素顔も知る、次の段階に入ってきたことの結果である。
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| 中国社会科学院日本研究所が9月から10月にかけ、約3400人を対象に実施。「普通」という回答は中国全体では47.6%。一方「親しみがない」は全体で27.7%、「まったく親しみがない」は同じく15.6%。「まったく親しみがない」という回答が最も高かったのは深センなど広東省の27.2%だった。30歳以下の世代に「親しみがない」などの傾向が目立つが、ナショナリズムの影響をあげる見方が強い。なお「非常に親しみがある」という回答項目もあったが低率だったため「親しみがある」に一本化した。 |
ここで懸念されるのは、「特に親しみを持つこともなくなった」という社会心理を重視して、その心理に沿うような、事実関係の確認が不十分でバランスの欠けた報道が出てくることだ。
一般的な国民が、海外に住む人々を知るうえでメディアの役割は極めて重要である。私は現在の中国人が何を考え、どんな状況にあるのかを、もっと日本人に知ってほしい。一つは貧困を脱却したいという気持ちの強さであり、もう一つは、多元的で開放的な考え方の広がりである。改革開放の時代に成長した世代は、インターネットも駆使して世界中の情報を手に入れようとする。9歳になる私の息子だけでなく多くの中国の子供は日本のマンガや日本製のテレビゲームに夢中になっている。それは次世代の友好の芽生えだろう。
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巨大な変化のさなかにある中国を的確にとらえることは確かに難しいが、いま中国で起こっている事象の全体像をできるだけ偏りなく伝え、日本人の中国理解に寄与するという日本のメディアの役割は一層重くなっている。一方で中国のメディアには、もっと日本報道を増やすよう注文したい。普通の日本人がどのような考えを持って日々生活しているのか、中国人にはあまり分からない。
30年余り前、遼寧省錦州郊外で暮らしていた私の実家の隣に、中国人医師に嫁いだ日本人女性がいた。孫が私の同級生だったこともあってか、当時の農村ではごちそうだったギョーザをお互いに作ると、2軒は必ずやりとりした。彼女は確かに日本人だが、私に「ギョーザ食べた?」と尋ねる優しいおばあさんだった。
彼女との交流の思い出がある限り私の中での中日関係は安定している。そんな交流を将来持ち得る多くの日本人や中国人のために、メディアは懸け橋になってほしい。