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AAN発
アジアに開く日本
対馬・九州発

行き交う民、流れ加速 

趙景達
千葉大学教授

趙景達
趙景達

対馬に住む崔英姫(チェ・ヨンヒ)さんは韓国・釜山の出身だ。大阪出身の日本人と結婚し、この島で韓国料理店「釜山亭」を始めた。「釜山の実家には博多に行く気分で頻繁に帰ります。対馬は住みやすいし、日本人と本当の友人でいられる。外国に住んでいるという感じはありませんね」。彼女は屈託なくほほ笑んだ。

釜山から対馬まで船で2時間半。歴史的に朝鮮半島と日本の交流路だった対馬では、いまも開かれた空気が流れる。

ここでは「親友」を「チング」といい、朝鮮語に淵源(えん・げん)がある方言がいくつもある。厳原町(長崎県)の町役場が正午に流す時報を耳にした瞬間には驚いた。植民地時代に朝鮮人が郷愁を歌った名曲「故郷の春」。道行く人に「知ってますか?」と問うと、「いいえ。でもきれいなメロディーだと思っていました」。 「日本」「朝鮮」を意識しすぎることなく暮らしを営む人々。「開かれた」とは、たとえばそうした状態である。

伝統を守るカギも「開く」、つまり開放的な姿勢にある。伊万里・有田焼伝統工芸士会会長の矢鋪(や・しき)秀治さん(佐賀県西有田町)との語らいで、そう実感した。

「佐賀県マイスター」に選ばれた現代の名工だが、現状への危機感は強い。「最近、中国の景徳鎮産陶磁器など、安いだけではなく、品質が急に上がってきた」

対応策として常識的に考えられるのは、輸入制限など「閉ざす」こと。だが矢鋪さんは力説する。「有田焼を発展させるには韓国や中国との交流が必要だ。韓国などで開かれる展示会にはどんどん出かけて技量を磨くことが大切だ。ぬくぬくしていてはいけない」

対馬地図

矢鋪さんは韓国の展示会に2度出品し技を競い合った。そうした体験を通じて、自分たちでなければ出せない味わいも見えてくる。たとえ高くても良いものならば売れる。そんな陶芸品を作れてこそ活路は開ける、というわけだ。

考古学者で久留米大客員教授の森醇一郎さんは、佐賀県立名護屋城博物館の創設に尽力し、前館長を務めた。「日韓の市民に顔を向け21世紀型の博物館にしなければならない」と熱心に語った。日韓の市民に、という言葉が印象的だった。

豊臣秀吉の朝鮮侵略の出港地となった名護屋城。城跡に93年に設立された博物館は、古代から日本が朝鮮半島を植民地とした時期まで、2千年以上にわたる交流の足跡を展示している。日本水軍を撃破した李舜臣製造の亀甲船など、朝鮮側の視点も尊重している。

近代以降、博物館は社会の集団的記憶を刻み、人々の間に「国民」としての一体感を醸成する機能を担ってきた。森さんたちの試みは、こんな博物館像を「市民」の立場から打ち壊し、開かれた博物館で「国」を超えた交流を活性化することだ。いま年4千人近い韓国人が訪れる。

九州各地を歩くと日韓の民間交流は後退しようのないことがよく分かる。初めての日本旅行が長崎のハウステンボスだと話した韓国人OL3人組。別府の大手ホテル経営者は韓国客の誘致策を熱っぽく語ってくれた。

では、日本全体としてはどうなのだろう。

北朝鮮の拉致問題に端を発して朝鮮学校などへの敵意が強まり、それが在日朝鮮人、ひいては日本に住むアジア系外国人全体への排外主義の空気に広がりつつある。商売などで本名を名乗れなくなったという在日の人もいる。その一方で、教育基本法を改正して、「国を愛する心」を育もうとする動きがある。

歴史をみても、国を開こうとすれば、閉じようとする逆の力学が働いてきた。開くことで支配力が弱まる勢力や、生活に与える影響を不安がる層がいるからだ。19世紀の日本では、「開国」に際して世界と自分たちを隔てようとする動きが「閉じる」力として働き、それが強固な国民国家を誕生させた。 21世紀の開国にあたって求められるのは、加速する一方のグローバル化に身構え、閉じようとする心と戦うことである。そして「国」のしがらみに捕らわれすぎずに、他民族と、そして彼らがまとう文化や歴史と、市民同士の同じ目線の高さで向き合うことだ。対馬や九州で私が出会ったのは、それを自然にしている人たちだった。

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