今年からナマズとティラピアの養殖と養豚を始めたダン・ベン・クアンさん(46)は「知人がもうかっているのをみて始めた」という。3頭のブタは妻マイさん(50)が世話をしている。「もうかったら、家をれんがにしたい」。ニッパヤシの葉でふいた屋根を見上げて言った。
果樹農家のグエン・ベン・ウットさん(47)の家では、VACRとセットで推奨されているバイオガス発生装置を2年前につけた。「ブタの糞尿は、発酵させてから流した方が、池の水をきれいにできるからね」
値段は日本円で約4500円、寿命は4、5年。安くはないが、結構火力も強い。「まきよりずっと便利だ。次も作るつもりだよ」
VACRは、地元のカントー大学農業システム研究所などが、伝統農業を参考に、農家の収入増と環境保全を同時に満たすシステムとして研究開発した。90年代から普及を進めており、今ではメコンデルタの3割の農家が採用していると推定されている。
「貧しい小規模農民のための農業システム。うまくいけば、手取り収入が2倍になる」。早くから開発に取り組んできたアンザン大学のボー・トン・スワン学長はいう。
環境面はどうか。渡辺主任研究官が99年の窒素循環を調べたところ、外からは化学肥料やわずかな飼料の窒素が持ち込まれるだけで、最終的に農地に残る窒素は1ヘクタール当たり39キロ。畜産からの窒素だけで150キロという日本とくらべてはるかにうまく循環していた。
VACRは、家族旅行に行くこともなく、暗いうちから起きて働く農民によって支えられている。人々がもっと豊かになってもこれを続けてくれるだろうか。政府の畜産拡大計画もある。VACRが将来も安泰かどうかは分からない。