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AAN発
アジアに開く日本
変わる日本人の意識

新しい歴史が始まった

趙景達
千葉大学教授

趙景達
趙景達

いまから約250年前、日本橋を行く朝鮮使節団(通信使)の行列を、江戸の庶民が迎え入れる有名な絵が神戸市立博物館に残っている。どこかもの珍しげな表情はにじむが、さげすみ、見下すようなまなざしはなく、むしろほほ笑ましげだ。

ところが、明治維新から8年後の1876年6月、約100年ぶりに来日した朝鮮使節団を迎える東京の空気は違ってしまっていた。江戸っ子たちは伝統的朝鮮服をまとった一行を、まるで未開人を見るかのようなまなざしで指さしながら大いに嘲笑(ちょうしょう)したことが、当時の新聞の記述からわかる。

いち早く資本主義近代化を達成した西欧は、アジアを「未開」というイメージで見た。明治維新期、日本もまたそのように見られていた。「遅れている」「進んでいる」という判断は、言うまでもなく西欧が作った物差しによるものだ。しかし明治新政府や知識人たちは、そうしたまなざしから逃れようと、西欧に近づく道として文明開化の必要性を唱えた。

江戸っ子の朝鮮使節団への嘲笑は、その急速な浸透ぶりを示している。「未開であることは恥ずかしい」という意識は、次第に全国の民衆へも広がっていく。そして多くの日本人が、「未開」の人々を高いところから見下ろそうとする西欧と同じまなざしで、朝鮮・中国を始めとするアジアを見るようになった時、日本は近代国家の建設に成功した。

挿絵
日清戦争の時期、日本の大衆誌「団団珍聞」に掲載された、日本人が中国人を「開化せっけん」で洗濯しているという挿絵

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明治維新から27年目に起きた日清戦争は、「文明と野蛮の戦争」とされた。もちろん日本は「文明」の側であり、その勝利とともに「弱い」「不潔」「ずるい」「怠け者」という、「遅れた支那」のイメージができあがった。そして、「朝鮮」には「支那」以下の劣等イメージが刻み込まれた。1910年の韓国併合の際に、「落後した朝鮮を文明国の日本が救うものだ」という言説を疑う日本人はほとんどいなかった。

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西欧の価値観に立って「遅れている」人々を軽く見る心性は、日本に限らず西欧式の国家づくりに成功した国にほぼ共通する。そして日本の場合、アジアの先頭を走り続けなければいけないという意識は、1945年の敗戦を経て半世紀以上たった今もなお、ある種の強迫観念として少なくない日本人の心に潜んでいるように見える。

しかし、とりわけこの20年余りの間、アジアは経済発展がきっかけとなる大変化を経験した。

たとえば韓国では、中間層の増大を背景として、87年に「民主化宣言」が出された。その後の民主化の進展は揺るぎない。民主化運動でかつて獄に入った闘士たちが国会議員や市長に就き、落選運動などの市民運動も熱っぽい。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の混迷がいわれるが、それは民主化を手作りで進めるうえでの産みの苦しみにも似る。その試行錯誤に注目することは、日本にとっても「民主主義とは何か」を考え直す契機になるだろう。

東アジアでも、モノ、カネ、情報が国境などお構いなしに動き始めている。事実上の経済統合の動きはアジアの人々と日本人との取引、交流を今後一層促していく。06年からの総人口減少が予測される日本国内で、アジア系外国人労働者をどう扱うべきかという議論はいずれ避けられまい。

文化的に異質な人々同士が、日本国内で日々付き合うことが次第に当たり前になっていく状況は、均質化社会、あるいはムラ社会と言ってもよい、日本の伝統的な社会システムを揺さぶらざるを得ない。豊臣政権から江戸時代初期にかけて農民が田畑に縛りつけられたことに淵源(えんげん)を持つこのシステムは、大きな変わり目を迎えている。

日本もアジアも、新しい歴史のステージに踏み込みつつある。もはやムラ社会システムに戻ることはできない日本は、何を心がけるべきか。

何よりもまず、「心を開く」ことだ。「文明開化」以来の物差しを外し、アジアの人々と同じ目線の高さで向かい合い、ともに歩こうということだ。それができて初めて、アジア的価値観を日本とアジアの人々が創造していく道が始まる。そしてアジアの先頭という意識から解放される時、日本社会には、「閉塞感(へいそくかん)」とは違った空気が広がっていくだろう。


チョ・ギョンダル 東京都出身。専攻は朝鮮近代史。49歳。

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