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AAN発
日中韓合同シンポ


討論

進む核開発、切迫感欠く6者協議と国際社会

【伊豆見元・静岡県立大学教授(現代韓国朝鮮研究センター所長)】 お三方のお話を伺っておりましても、1つその思いが強くなりましたのは、現在、我々は北朝鮮の限られた、制限された核能力というものを受け入れている。そのリミテッド・ニュークリア・ケーパビリティーを我々がすべて受け入れて、それと、少なくとも当分の間、共生することにも黙示的に、暗黙のうちになっているのだなということであります。

過去1年半、北朝鮮は明らかに核開発を進めました。核兵器開発を再開してそれを進めました。プルトニウムが増えたことは間違いないわけでありますし、北朝鮮はみずからが核兵器を持っている、保有しているということを公言するようにもなった。かつては核兵器を持っていると言いますと、言いがかりをつけていると言って怒り狂っていたわけでありますが、最近では自分のほうから核兵器を持つとまで言うようになっている。そして、プルトニウムを昨年からつくり始めた。それが現在も続いていると言っていいのは5メガワットの原子炉が稼働し続けているからであります。

伊豆見元

今、国際社会は、あるいは6者協議は、その継続している北朝鮮の核開発を切迫感を持って極めて短いうちに止めようとはしません。深刻さがあまりない。北朝鮮はおそらく困っている部分もあると思いますが、これは核の開発の継続がおどしのカードとして使えなくなってきている1つのいい現象だとは思いますが、しかし、北朝鮮は現在も核開発を続けていますし、もうすぐ私は北朝鮮は50メガワットのリアクター、原子炉の再建設に踏み切ると思います。これは将来の交渉ということを考えても極めて意味のあるといいますか、メークセンスであると思いますのは、50メガワットだけは寧辺(ヨンビョン)という地域のニュークリア・コンプレックスにありますし、将来、凍結、あるいは廃棄等を含めても、寧辺という地域にある核施設を1つ集中するということを考えても、50メガワット原子炉の建設の再開、全然おかしくない。

問題は、そこに設置する50メガワットのリアクター、原子炉のほうは一体どこでつくっているのかという話でありまして、これは別段、寧辺でつくる必要はないわけであります。既に北朝鮮がこの50メガワット・リアクターの建設を凍結して、中止して10年たっておりますが、これをどこか、いわゆる地下施設で北朝鮮が今までもつくっていたとすれば、それをあとはアセンブルするだけ。そんなに技術的に難しいわけでも、時間的にかかるわけでもない。

すなわち、我々は、北朝鮮の50メガワットのリアクターは10年間止まっていますから、簡単には完成しないだろうと思っていますが、そうでないかもしれないという可能性があります。国際社会は北朝鮮の核開発を止めることに熱心ではありますけれども、切迫感がない。すぐ今止めなきゃいけないと思っていないとおそらく北朝鮮は感じていると思います。おそらく北朝鮮がそう感じているのは正しい評価でありましょう。だとしますと、今、我々は北朝鮮のそういうリミテッド・ケーパビリティーと、しばらくそれを認めてつき合おうとしているんだなということであります。

しばらくということであれば、北朝鮮が手にする核兵器は十数発程度でありましょうか、あるいはその十数発の核兵器をつくり得るプルトニウムということになりましょうか。しかし、50メガワットの原子炉が完成したとしますと、燃料は稼働しながら一部分リロードできるわけですから、5メガワットの10倍規模だと考えれば、10発分ぐらい年間にはプルトニウムができる。簡単な計算であります。5メガワットがそのまま動いていれば、年間に1発分ぐらいのプルトニウムができます。さらに忘れてはならないのは濃縮ウラニウムのプログラムも彼らは進めていますから、それは数年考えたら、やはり2発分ぐらいは、今度はウラン、ウラニウムタイプが2発ぐらいできる。

そうしますと、プルトニウム型で11発、ウラニウム型で2発、毎年、毎年増える。まあ、単なる計算ですけれども、論理的には十分考えられる。そういう時期にあっという間になるかもしれない。ですから、今の非常に限られた数の少ない北朝鮮の核兵器能力というのを許してといいますか、受け入れて、しばらくそれにつき合っていると、ある段階から数がワッと増えるかもしれない。年間10発程度増えても構わんという話になるかどうかは、まあ、それぞれの国がどう考えるかでありますが、問題であろうかと思います。数が増えれば、当たり前ですが売りやすくなる。

中韓は圧力を、日米はインセンティブを使え

そういう北朝鮮のリミテッド・ニュークリア・ケーパビリティーと共存するという選択はあまりよろしくないと思っているということを申し上げたい。ですから、北朝鮮の核開発を止めるということは急ぐべきであるというのがポイント。急ぐためには、やらなきゃいけないことがある。当然でありますが、それはプレッシャーをかけられる人はプレッシャーをかけるべきだと私は思います。もう一つ、非常に魅力的なインセンティブを出せる人はインセンティブを出すべきだと思います。

今、問題は、プレッシャーがかけられる人たち、国はプレッシャーをかけない。非常にアトラクティブなインセンティブを提供できる国はそれをしない、これが問題です。プレッシャーをかけることができる国は、当然のことながら中国と韓国です。これだけ継続的に相当大量の援助を中国も韓国も北朝鮮に提供し、北朝鮮は中国の援助と韓国の援助に依存しています。相当依存しています。依存している相手が止めれば、あるいは止めるぞと言っておどせばもちろん聞くわけですから、有効なプレッシャーがかけられるのは中国と韓国だけ。しかし、中国も韓国もそういうことをやりたがらない。

魅力的なインセンティブは、やはり日本とアメリカだろうと思います。それは日本だけがこの地球上で最大の経済協力を北朝鮮に提供することが可能な国だからです。アメリカだけが特に北朝鮮の目から見れば、そのセキュリティー・アシュアランス、安全の保障を北朝鮮に提供できます。ただ、問題は、北朝鮮にとって最も魅力的なインセンティブを提供できる日本もアメリカもそれを出したがらないというところにある。そうすると、我々が考えるべきは、やはり北朝鮮を変えるには非常に有効なプレッシャーと極めてアトラクティブなインセンティブを一緒にミックスして、組み合わせてやるというのがいいわけですから、今までの我々の政策を改める。中国と韓国は圧力をかける。日本とアメリカはインセンティブを出すというのがよろしいのではないかと思います。

半島情勢の安定に6者協議が大きな貢献

【戚保良・中国現代国際関係研究院朝鮮半島問題担当研究員】 地域安保問題、また、6者協議についての発表がありました。6者会談の枠組みの中で核問題の解決のための言及がありました。4人の方の発表を聞きながら、私も考えたことを申し上げたいと思います。

第1に、6者協議については、もう少し積極的な評価があってもいいのではないかと思います。6者協議のスタートは、だれがどういう計画を持って、そのために準備して始まったものではありません。核問題、核疑惑が発生したときに、対話の試み、また、3者会談という過程を経てスタートしたのです。北の核問題が6者協議のスタートを促したとも言えるでしょう。現状で、北の核問題を解決するためには、このような多国間の安保協力体が必要です。

第2に、6者協議が始まってから2回の会合があり、5月には作業部会もありました。これらの会合は、朝鮮半島情勢の安定に大きな貢献をしたと言えます。北朝鮮核問題が起きて以来の朝鮮半島危機が緩和されたと言えます。対話を通じて対立から対話に向かう枠組みを提供したからです。だから、この6者協議をもっと高く評価すべきだと思うのです。多国間の協力体というのは、多くの長所を持っています。まず公平さを持っている。2者会談ではいろいろな問題が絡み合いますが、多国間の枠組みの中では公正性が保たれます。2回にわたる6者協議を通じて十分に各国の立場を表明することができました。

また、共通認識もつくられました。各自の意見を聞くという多国間の枠組みを発揮することができたから、会談の公正性が維持されていると思います。6者協議の開催後、多くの人々がこの会談が今後、北東アジア地域の多国間安保協力体に多くの貢献ができるのではないかという期待が持ちました。最終的には地域の多国間の安保協力体の基本になれるかは、北の核問題を解決できるか、もしくはそのために役割を果たすことができるかどうかにかかっていると思います。北朝鮮の核問題を解決できたら、6者協議はこの地域の多国間安保体制の基本になれる。そういう可能性が十分にある。私たちは期待を持つ必要があると思います。

2番目に、北の核問題に関して、6者協議を通じて北の核問題をどう解決すべきかについて私の意見を申し上げたい。今のところまだ楽観的な考えは許されないと思います。2つの当事国、北朝鮮とアメリカはまだ対立しております。先般の作業部会でも大きな進展はありませんでした。ですが、ほかの面から見る必要がある。北の核問題は少しずつではあるが進展があるということです。悪化傾向が抑えられておりますし、また、関係国が引き続き努力をしているということです。

北朝鮮にも変化、日朝会談や南北関係改善もプラスに

北の立場から見た場合、北でも多くの変化がありましたし、北朝鮮の態度にも変化がありました。ご承知のように、朝鮮半島問題において南北の関係にも改善がありました。一昨日でしたか、南北軍事当局者の会談が初めて開かれました。大変意義深い会談だったと思います。また、先週は小泉首相の再訪朝も高く評価すべきだと思います。大きな効果を得たと評価できるでしょう。人道的な支援も行われることになりました。また、小泉首相は引き続き日朝国交正常化を続けると言いました。小泉首相の任期中に日朝関係を正常化すると述べました。また、一方で北朝鮮も日朝首脳会談に際して多くの努力をしました。拉致問題に関して北朝鮮はこれまでできることはすべてやったと思います。ミサイル問題についても日本側と約束をしました。6者協議について、金正日総書記も明確な立場を表明しました。日朝首脳会談は大きな成果を上げたと言えるでしょう。

核問題で米朝の対立が続いておりますが、南北関係の改善は6者協議にも役立つし、北の核問題の解決にも役立ちます。アメリカが妥協するためには、次の段階を踏む必要があるでしょう。まず第1に約束するということ。一方的に約束を取りつけようとしてはだめです。今、対立しているのはアメリカが北朝鮮に一方的にCVIDを押しつけているからです。北のほうは受け入れることはできないと言っています。だから、双方が約束する必要があります。そうしないと妥協は生まれないでしょう。それでこそ公正というものです。今回の小泉首相の平壌訪問も双方の約束を守った結果、可能だったと思います。

最近、凍結による補償ということが言われていますが、ここにも少し考えなければならない点があります。双方が約束した場合、ともに行動に移さなければなりません。どっちかが先に行動を起こし、その後に自分たちも行動をすると言っているのは非合理的です。核問題の解決のためにもっと真剣な態度で臨む必要があると思います。

北は核をあきらめないとも言えないし、あきらめるとも言えません。前提が必要です。公正さということが前提でなければなりません。双方がともに約束するとか、ともに行動するとか、ともに約束を履行するとかという前提が必要です。それがなければ、核の問題の解決はできないでしょう。そういうことが可能になれば、北朝鮮を説得して、もう少しこの現状を正確に理解するように説得できます。北も国際情勢をよく承知しているようですが、一方的にあきらめるように強要することはできないでしょう。彼らの言い分にも耳を傾けるべきです。北の核問題についていろいろな方法が提案されましたが、公正さ、合理さが必要だと思います。

朝鮮半島の非核化についてもいろいろな話があります。アメリカでは北の核廃棄の範囲についても話がありますが、ここにも合理性の問題があると思います。朝鮮半島の非核化は核兵器の放棄です。合理的な原子力の利用まであきらめなさいというのはこじつけです。アメリカは北にいろいろな要求を突きつけています。NPTはまだ持ち出すべきではないと思います。最も重要なのは平和と対話を通じて問題解決に当たるということだと思います。

希望と共に袋小路に陥った不安も

【方炯南・東亜日報安保担当論説委員】 発表を伺いながら、私は希望と可能性といった前向きの考え方、そしてまた不安な感じの両方を感じました。お三方とも、6者協議が、懸案である北朝鮮問題の枠内で満足するだけでなく、大きくは北東アジアの平和と安定のための重要なプロセス、既存の6者にモンゴルとカナダまで含める北太平洋協力機構というご提案、そして21世紀の北東アジアの平和建設の第一歩というような希望と期待というお話もありました。その面で、南と北が分断されており、中国は台湾と分断している、いかなる地域よりも不安の要素が存在している北東アジアにおいて、新しい多国間の安保の枠が必要であるという話もありました。ここは6者の中で3者が集まっているセミナー席上でありますけれども、そのような議論が出たということを私はとても意義深いことであるというふうに考えております。

もしそういう目標が達成できれば、6者協議というのが、今あらわれている問題を解決するための消極的な場ではなく、共同の未来を開拓するためのとても発展的、希望的な場になり得るのではないかという希望と期待を感じることができました。

しかしながら、各論のほうに入りますと、不安感も感じざるを得ないというのが私の心情であります。河英善先生のご指摘にもありましたように、今すぐ北朝鮮の核問題の解決を考える際に、北朝鮮も一貫した立場を堅持しており、アメリカも一貫した立場を変えていない。どちらかが譲歩しない限り、容易に妥結できない状況であるということです。6者協議が2次協議と作業部会まで開かれたわけですが、ほんとうに今、袋小路に来てしまったのではないかという不安も感じました。

河英善先生から発展的な民族協調、そして国際協調を一緒にした民族的な、調和のとれた方法を提案いただきましたが、北朝鮮と韓国が短期間内にそういう方向に向かうことができるのかについて少し懸念があるのも事実です。現在のところ、北朝鮮が主張する民族協調というのは、単純に考えますと、アメリカが主導する核問題、そして敵視政策を無視して、韓国と北朝鮮が共同でアメリカに対応しようという立場でありますので、韓国がこれに同調することもできませんし、もし韓国がそれに同調するにしましても、そういうふうになりましたら、アメリカと直接ぶつかることになってしまいます。そうなってしまうと北朝鮮との核問題そのものは解決が遠くなってしまうのではないかと考えます。

船橋先生からも国内政治が6者協議に与える影響、そして各国の微妙な戦略的な側面についてお話がありました。6者協議がスタートした当時から、6者がそれぞれの多様な観点を持っておりました。6者会談がうまくいけば、6者が共同で北朝鮮の核問題の解決方策について考え、保障策を考えるという意味で大きな意味を持つとも思いますが、もし悪化する場合、十人十色的な観点があらわれて、むしろ、多国間協議のわなに引っかかってしまうのではないかという心配もあります。

日本と北朝鮮の拉致問題、これも小泉首相の2回にわたる北朝鮮訪問によって5人の拉致者が帰国し、また、家族も帰ってきたので、相当の成果が上げられた。ほとんど解決に近づいてきているのではないかと見ております。先ほど船橋先生の発表の中で、これが必ずしも日本の独自的な問題ではない、6者協議の議論の材料になりますし、アメリカもこれを支持しているという立場をお話しくださいましたので、今後、日本は6者協議の席上でもこの拉致問題を議論のテーマとして出す可能性があると思います。それも見方によれば不安の要素になるのではないかと考えております。ですから、結局、希望的な見通しと現存している不安の間、その真ん中、どちらかに、どこかに解決策が書かれていると私は考えております。その解決策を見出すための観点としまして、私は北朝鮮の核問題の解決という時間との戦い、また、北朝鮮の核に対する6者の異なった観点、また、変化する6者間の関係というのを考えなくてはならないと思います。

6者協議が進行する中で、関係国の間では相当レベルの二国間協議、二国間交流というのが進展しております。それなりに意味があり重要であると思いますが、その中で最も私どもが重視したいところは、米韓関係、そして南北関係、北と韓国の関係であると思います。残りの関係は後で日本からの方々、中国からの方々のご意見を伺いたいと思います。まず米韓関係を申し上げますと、米軍の装甲車による韓国の女子学生2人が死亡した事故がありました。その後1年間、キャンドル集会が開かれました。それによって反米感情、そして反米主義というのが韓国にはほうはいしてきております。そして、イラク追加派兵をめぐっても、韓国では国論が分裂し、アメリカに対する韓国国民の目線は悪化してきております。

最近、在韓米軍の一部をイラクに派兵することになって、米韓関係に悪い影響を与えております。これから進行する龍山の米軍基地の移転も解決が容易ではない問題であります。このような諸問題を考える際に、韓国では不幸にもアメリカの対イラク政策を対北朝鮮政策、あるいは対朝鮮半島政策と混同するか、同一視するという結果をもたらしたと思います。これが6者協議に肯定的な影響を与えるのではなく、否定的な影響を与えているというふうに私は判断しております。

次に南北関係の最近の状況を見ると、この間、龍川で爆発事故がありました。韓国の全国民が心を1つにして北朝鮮を助けるために、実際の支援をしたところです。この事故が南北間の相手方を見る見方の転換点になったことは明らかです。しかしながら、否定的な観点も1つありまして、龍川の爆発事故によって北朝鮮の大変弱いところ、こういった爆発事故も管理できないぐらい北朝鮮が弱い国なのではないかということが赤裸々にあらわれたというのです。この解釈をめぐって、異なる視角、見方が韓国内にあります。それだけ弱い北朝鮮が核兵器をつくって韓国を脅かすことができるのか、北朝鮮は全く脅威にならないと見ている観点があります。

もう一方では、核兵器を開発しているのは龍川の住民なのではなくて、北朝鮮の指導部と軍部ですから、北朝鮮の脅威を払拭はできないと見る人もいます。軍事当局者の会談が先週ありましたが、これを北朝鮮の軍部も緊張緩和を希望していることの証拠と評価する人もいる一方で、会談が開かれることには意味があるけれども、実際の成果が出るまでは北朝鮮に対する観点を変えることはできないと見ている人もいます。

なぜ中韓は圧力を避けインセンティブを与えるのか

【伊豆見】 中国の先生にお伺いできるのであれば申し上げたいのは、中国は決して北朝鮮に対して圧力を行使されようとはしない。むしろ、それはマイナスだと言われております。それはある意味では理解できるんですが、しかし、その結果として言えることは、中国が圧力をかけないために北朝鮮の姿勢が今まで変化しなかったというのも事実だと思います。これはせっかく中国側がホストをされて、昨年、3者会談、そして6者協議を2度開きましたけれども、大きな成果を生み得なかった。非常に大きな要因は、中国が北朝鮮に圧力をかけて説得をするということをされなかったからだと思います。

中国はむしろ、北朝鮮を6者協議の場に引きずり出すために小さなインセンティブを与える。昨年10月に呉邦国さんが訪朝されたときもしかりでありますし、圧力よりもむしろ小さなインセンティブを出すわけですが、それは有効ではない。中国が有効な力を発揮し得るのは大きな圧力のほうであろう。中国がやるべきは圧力のほうであって、インセンティブのほうはむしろ日本とアメリカがやるべきであろうと考えております。

皮肉なことは、本来、それぞれが持っているレバレッジといいますか、カードといいますか、力というものを4カ国とも使わない。中国も韓国も圧力をかけませんし、日本もアメリカもインセンティブを出さない。むしろ、反対のことをやるわけです。

核問題解決を優先し、「半島平和体制」論議はその後に

【文河泳・韓国外交通商部政策企画官】 核問題の解決方法について所見を述べさせていただきます。

北東アジアの安保における最大の脅威は北朝鮮の核問題です。核問題には背景が3つありまして、その1つは、核問題が域内の安定を破壊していることです。そして、北東アジアの安保協力を増大する必要があるのに最も大きな障害物になっているのが核問題である。次は、北朝鮮の核問題は域内の核紛争を引き起こすおそれがある。そして、北東アジアにおけるアメリカの単独主義、ユニラテラリズムを促すおそれがある。この域内6カ国は核問題を早く平和的に解決しなければならないと考えております。

この核問題の平和的な解決には4つの方法があると思います。第1は、日米韓の3国協調です。そして2番目は日韓中の協調です。3番目は、中国の北朝鮮説得です。この説得は言葉でもできます。4番目は南北関係における韓国が一定の役割を果たす必要があるということです。

伊豆見先生のご指摘とちょっと違いますのは、この米中韓日4カ国で、どちらかが圧力とか、プレッシャーとか、インセンティブを提供するのではなくて、4カ国がそれぞれインセンティブと圧力をかける必要があると思います。このような核ゲームで北朝鮮が考えるのは2つあると思います。1つは体制の生存。生存というのは安全保障がまず前提です。2番目は北朝鮮が望んでいるのは経済発展であります。

その半面、韓国をはじめとする5カ国が望んでいるのは、徹底かつ透明な北朝鮮の核廃棄です。それはCVIDであれ何であれ、その内容は徹底かつ透明な北朝鮮の核廃棄です。これは明確な韓国政府の目標であります。そして、伊豆見先生のご指摘とは違って、制限的な北朝鮮の核能力を全く私たちは認められません。徹底かつ透明な北朝鮮の核廃棄は、プルトニウムの廃棄、そして2番目はHEU(高濃縮ウラン)生産計画の廃棄、そして3番目はいわゆるパキスタンのカーン博士が言いました核装置、このすべてに関する透明な廃棄を言います。この目的を達成する上で、6者協議が重要なツールとなっております。この核問題の解決には、場内における解決策プラス場外での解決策が必要だと思います。

ですから、最近の小泉総理の訪朝は大変歓迎すべきことであったと思います。日朝間の拉致問題がある程度解決することにより、相当の推進力がかけられたと考えております。核問題が結局のところ、北東アジアの安保協力における鎖となっております。これが解決されないと前に前進できません。核問題が解決されて、そして6者協議で朝鮮半島の平和体制について議論するのがその順番であると思います。

北東アジアには6者協議のほかにもフォーラムが存在しております。学会のトラック2もありますし、トラック1・5もあります。カリフォルニア大学が進めております北東アジア安保協力対話がございます。シーズカップもあります。

また、最近、ワシントンで日米韓3国の政策協議会がございました。この枠内で、ワシントンで駐米の中国とロシアの大使を迎えて、環境エネルギーなどの地域協力に関する5カ国協議がございました。地域協力の大変いい流れではないかと思います。

そして、アジア・リージョナル・フォーラム、ARFがございます。この中で安保問題を議論しております。ARFの枠内でアメリカは国防長官会議、長官級会議ですとか、次官級会議を提起されております。ですから、6者協議と、そして6者協議を通じました核問題の解決、プラスこのような多様な1・5トラックでの議論が加わることによって北東アジアの発展が図られるのではないかと思っております。

核開発阻止の優先目標が色あせる恐れ

【金東成・中央大学教授】 6者協議のスタート当時の基本的な目的は、核問題の解決でありましたが、この解決を超えながら、その焦点が周辺諸国の国内政治と関連づけられてきた。先ほど中国側の発表にもありましたが、北東アジアの新たな秩序、新たな平和協力、安保協力と関連する制度化の問題にまで6者協議を大変拡大解釈しているということです。

もちろん、それには理由があります。中国の場合は周辺の安定があって経済発展が図られるという状況です。現体制の中国のリーダーシップの外交的な力量を発揮する必要がありますし、周辺諸国に対する中国の影響力も必要です。次第に時間がたつにつれて、6者協議に臨む各国の態度、これに優先順位をつけてアプローチしている。つまり、優先順位を決めることからスタートして、少しずつその意味が色あせているのではないかということです。

もう少し申し上げますと、先ほどNPT体制の維持、あるいは平和安定のためには絶対的に北朝鮮が核開発をしてはならないし、今後も交渉がうまくいかなくて北朝鮮が核を保有するということ自体について、これはだめだということでしたが、これが色あせてきているということです。

そのような中で、中国の場合は最初は核問題からスタートして、次第にだんだんと北朝鮮の核問題というよりは、周辺と関連する国際関係のほうに焦点を当てているような気がします。そして、韓国政府の立場も国内政治的な影響と世論の影響があるがために、双方が北朝鮮が核を今後保有する可能性が高いということ、これの危険性を軽視しているのではないか。軽く考えているのではないか、こういう方向に進んでいるのではないかということです。

ここで思い出されますけれども、河英善先生の発表の内容は、結局のところ米朝間の妥協の問題であるということです。このように焦点が外れることによって現実的なものではなく、北朝鮮の問題についての認識も変わってきておりますし、核の危険に対する認識も変わってきております。こういう傾向が時間がたつにつれてより拡大しているのではないかということです。そのように時間がたつにつれて解決されればいいのですけれども、解決の可能性は少なくなってきておりますし、そのため、各国は今は決定を下さなければならない段階に来ております。どういう決定かといいますと、各国なり、それなりのプライオリティーについて、今は立場をはっきりすべき状況なのではないかと思います。

つまるところ、一国の主権とか、北朝鮮の主張について、例えば、中国の立場でこれが妥当であると認めるとしましても、全体的な枠内で考えて、目標は北朝鮮の核問題の解決でありますので、ですから、もう少し強く強制的に北朝鮮の核問題の解決を位置づける問題と考えなくてはならない。それに焦点を当てるための圧力が必要なのではないかと思います。そういう決定が必要な時期です。今それを決定しないで過ぎてしまいますと、外交的には平和かもしれませんが、北朝鮮の核問題そのものについては解決されないまま続く可能性があるということです。

韓国の立場もそうです。韓国の立場も何か選択の岐路に立っておりますけれども、今どちらかを選択しなくてはならない立場です。

最後に申し上げますと、未来といいますのは、今の問題よりもより進化する可能性があるということです。結局、6者協議が今後21世紀の北東アジアの国際関係をつくり上げる上でのある制度化のスタートラインになるということですけれども、そのスタートラインをつくるためにも、今現在の選択は必ず必要であるという認識が必要ということです。

中国の役割は公正な基礎の上での仲介役

【シン海明・駐韓中国大使館参事官】 中国が6者協議で北朝鮮の核問題にどういう役割をすべきなのかについて、私の個人的なご意見を述べさせていただきます。  中国が圧力をかけていないという話がございましたが、圧力をかけるような問題ではないと思います。問題の中心にいるのは中国ではないからです。日本でも韓国でもありません。これは北朝鮮とアメリカの両国間の問題であるからです。中国は、北朝鮮とアメリカを同じ席に座らせた役割はしました。北朝鮮はアメリカが北朝鮮に対して引き続き敵対視政策をとっていると、圧力をかけていると、だから核兵器を保有せざるを得ないと言っています。

アメリカは北朝鮮は信頼できないということで両国の間には不信が高まっています。中国は北朝鮮の味方でもアメリカの味方でもあります。公正な基礎のもとで解決のために仲介役に立ったのです。対話をするために私たちは努力をしました。平和的に北朝鮮核問題を解決できる方法は6者協議しかないと中国は思ったのです。中国はあらゆる方法を動員して6者協議までたどり着くようにしました。これには韓国、日本の協力もありました。中国と韓国の立場は、今一致しています。韓国と中国の協力というのがとても重要です。日米韓の協力も重要でありますけれども、問題解決の根本的なものは、中国も努力をしていきたいと思いますけれども、その問題の中心にあるのは中国ではないということです。申し上げたいことは、公平、そして公正に6者協議に臨んでいるということです。

北朝鮮が核を持っている証拠も、合理性もない

【程玉潔・中国現代国際関係研究院研究員】 中国が北朝鮮に圧力をかけるということに関してですが、中国は強い方法を用いないことを望んでいます。北の核問題は特殊な状況です。アメリカが中国または韓国に、北朝鮮に対して圧力をかけなさいという場合は前提が必要です。その前提は北朝鮮が核を持っていることがはっきりすること。そのとき韓国や中国に圧力をかけるよう要求することができます。

北朝鮮が核を持っているか、持っていないか。この問題も確認できていない状態で圧力をかけること、アメリカがやっていることも成立し得ないと思います。北朝鮮は閉鎖的な国です。外からは北朝鮮の最新の状況を知ることはできません。

アメリカや西側の諸国は、北が核を持っていると思っています。私たちは北朝鮮は核を持っていないと思っています。使用できるほんとうの意味の核を持っているとは言えません。アメリカは確実な証拠は提示できていません。核がある、ないの判断はできません。だからアメリカが圧力をかけてほしいというのは説得力を持ちません。

圧力をかけたときの効果についてもやはり疑念があります。副作用もあり得るでしょうし、また、一部の地域の安保にも影響を及ぼすでしょう。個人的には、地域の安保、地域の安定にもよからぬ影響を及ぼすことになると思います。北の核発電について、最も進んだ技術を持っている国、また最も強力な軍事大国であるアメリカが、使用できる核兵器を開発していると感じているでしょうか。私はそうではないと思います。アメリカ内部では北朝鮮の核の能力について、外部に向けて言っているのとは違う考えもあると思います。アメリカが、北朝鮮は核を持っていると外側に向けて言っているのは違う考えがあるからではないか、つまり、戦略的な考えがあるからではないかと思うのです。

核問題はアメリカのそういう人為的な考え方や行動とも関連があると思います。もし仮に北が核兵器を持っているとしたら、その脅威はどのくらいなのか。アメリカにとってあまり大きな脅威にはならないと思います。北朝鮮の核技術、軍事力というのは、アメリカと対抗することはできない水準です。もし北朝鮮が核を持っているとしても、アメリカが北朝鮮に軍事行動を実行に移したとした場合、北の軍事力では対抗できません。北朝鮮の核が生き残り、安保に役に立たないとすれば、北朝鮮が核を持つことによる脅威をもう1回考え直す必要があると思います。

では、北が核を持っているとしたら、周辺国にどういうことが起きるでしょうか。日本の方もそういう心配をしているようですが、日本は核の脅威を最も早く、そしてその影響を最も大きく受けると日本の人は思っているようですが、理解ができます。ほかの国に比べてショックが大きいかもしれません。ですが、これもあくまでも仮説ですが、北が核を持っているとしても、日本や韓国にとって大きな脅威になるでしょうか。そうではないと思います。仮に北が核を持っているとしても、それほど簡単には使えないと思います。北が核を持っていて、それを使おうとすれば、アメリカは座視しないでしょう。何らかの手を打つと思います。もしそういう事態が発生したとすると、北朝鮮もその結果を考えざるを得ないでしょう。核を使うときは、彼らの生存ももう終わりだということを彼らも考えるはずです。だから彼らは核を使わないと言えます。

北の立場からすると、核を持ちたいという欲求はあると思います。ですが、現状、特に経済的な状況を見ると、核兵器を開発するのは経済的な制約があると思います。経済レベルは軍事技術と直接的な関連があります。だから北朝鮮が現在の状況で核を開発することはいろいろな障害があると思います。核を開発したとしても、生き残りが保障できないなら開発する理由がないではありませんか。

いろいろなことを分析してみると、私の考えでは、北が核を持っているという確かな証拠を提示できない現在の状況では、北は核を単なる切り札として使っている、そういう可能性のほうが高いと思います。以上です。

中国の説得力にも限界、アメとムチの併用が効果的

【伊豆見】 北朝鮮がほんとうに核を持っているのかどうかわからないとおっしゃられました。そうかもしれません。しかし、今、問題なのは、昨年からは北朝鮮自らが自分で「核兵器を保有している」と人に言うようになったことでありますし、さらに「核抑止力」という言葉を昨年の6月から初めて使うようになって、現在も「核抑止力を強化する」という言い方を続けていることです。

外から見ていてある種の脅威感というものを持つのは当然のことだと思います。当然、説得をされるでしょうが、今までもされているでしょうが、北朝鮮は全然言うことを聞かない。すなわち、中国の説得力にはもう限界があることがはっきりしている。ですから、私は説得に加えて圧力もお使いになるとより効果的ではなかろうかということでお願いを申し上げているのでございます。

もちろん、中国だけがそうすればいいということではありません。日本側はもっとインセンティブを北朝鮮に対して向けるべきだと思いますし、幸いにして小泉総理の訪朝がありまして、日本側は拉致問題だけということではなくて、少し広くものが考えられるようにこれからなるはずでありますし、北朝鮮に対するインセンティブということも考慮できるような環境が少し整ってまいりました。日本も努力できそうな雰囲気でありますから、中国にもぜひ頑張っていただきたいと思うわけであります。

1年半の間に北朝鮮の核兵器開発はむしろ進展しました。6者協議をやっているにもかかわらず、目標である非核化には近づかず、むしろ皮肉なことに北朝鮮の核開発は進んでいるということであります。もう少し我々は切迫感を持ったほうがいいと思うわけでありますが、6者協議があまり有効でないならば、相互補完的に、いろいろやることは、あり得るわけでありまして、私は、そういう中では、一番いいと思っていますのはリビアンモデルであります。これを追求してみる必要がある。実はリビアンモデルになると、これを責任を持って行うのはアメリカと日本ということになろうかと思います。中国と韓国にはいろいろサポートしていただく、エンドースしていただくという役割にとどまるとは思いますが、しかし、6者協議を1年半やってみて、あまりいい成果が出ていないというときに、もう一つ日米が主導的にリビアンモデルを追求するというのも結構なことだろうと思います。

リビアンモデルの場合はインセンティブがなければいけない。リビアはまさに大量破壊兵器をすべて廃棄・解体し、ミサイルに関しても規制いたしました。それを一方的にやることによって、その後に見返りがある、インセンティブがある。これはアメリカとの関係正常化、国際社会への復帰ということであります。インセンティブによってリビアを変えたわけですが、インセンティブを与えられるのはアメリカと日本だけです。安全を保障できるのはアメリカだけ。経済の支援をして経済再建にまで至る大規模な経済協力ができるのは日本だけですから、インセンティブが与えられるのは日本とアメリカだけということでリビアンモデルは日米でやるということしかなくなると私は考えています。

対米関係優先の中国、核問題は切り札か

【朴斗福・外交安保研究院教授】 北朝鮮の核問題に関する中国の役割についての話が出ておりますので、それに限ってお話をさせていただきます。

伊豆見先生の、北朝鮮の核問題に関する中国の役割に対するご意見、中国は北朝鮮に圧力をかけられるにもかかわらず、そうしていないということから始まって討論が活発になっておりますが、この点に関してはっきりさせなければならない点があります。北朝鮮に対する中国の影響力はあると思います。エネルギーや食糧面における中国への依存度から見て影響力はあります。

この現実の問題と影響力を行使するということは分けて考える必要があると思います。北朝鮮に対する中国の影響力が行使されるためには、中国と北朝鮮の正常な関係が必要だと思います。中朝間で話し合い、交渉できるような正常なチャンネルがある場合に、ようやく影響力の行使が可能になると思います。中朝関係が私たちが考えているように確固としたものかどうかを見直す必要があると思います。私は個人的に中朝関係には状況によって容易に傷つく、そういう弱い面もあるのではないかと思います。

これまで北の核問題に関して中国が積極的な役割をできなかった。いろいろな原因があるでしょう。その原因のうちの1つが中朝間の不正常な、不便な関係があったということを指摘したいと思います。中朝関係を評価するときに、それはこれまで思っていたような確固としたものではない。これまでは血盟関係にありましたが、今は互いの国益を優先して、状況によって容易に傷つく関係なのではないかと思います。だから伊豆見先生が提示されている圧力的な手段というのは両者関係を傷つける面もあります。中国が北朝鮮の核問題に対して建設的な役割をするとき、圧力をかけるという方法は望ましくないと思います。

中国の役割は、現実を見ると、大変現実的なアプローチをとっていると思います。中国の立場について、中国側に1つ質問をしたいのですが、それは北の核問題についてどのくらい切迫した感じを持っているのかということです。

最近、中国は、これまでとは違って、北朝鮮の核問題に積極的に乗り出して、これが6者協議にまで進展しましたが、中国が北の核問題について積極的に乗り出すようになったのはいろいろな原因が絡まっていると思います。その中で最も重要な要因のうちの1つがアメリカとの協力的な安定した関係の維持、その中で中国が北朝鮮の核問題を活用しようという側面があるのではないかと思います。中国は持続的な高度成長とか、台湾との分離政策においてアメリカとの依存度が高まっています。だからアメリカへの関係改善を優先視しているとすれば、この対米関係において北朝鮮の核問題を1つの手段として活用しようとしている、そういう面があると思います。

中国の立場からすると、6者協議または6者協議の持続ということが中国の対米関係で重要な切り札に成り得る面があると思います。そういう対米関係における有利な切り札としての効力を長続きさせようという面があるのかもしれません。北の核問題に対する中国の切迫感、いろいろな考え方があると思いますが、これに関する中国側の立場を聞かせてください。

中国はどのように北朝鮮を多国間協議に引き込んだのか

【河英善】シン海明参事官に、私も3つほどお聞きしたいと思います。

第1は、6者協議の成立に中国が決定的な役割をしたということには異論はないと思います。じゃ、どうしてそういうふうにしたのか。中国の公式的な説明がないということです。今後の6者協議の成功のためにとても重要なことだと思います。

パウエル(米国務長官)の話を聞いてみましても、ある意味でアメリカもびっくりしたという面がある。北朝鮮は多国間協議はだめと言っておりましたが、一変して立場が変わった。その前はそれだけ強固にだめだと言っていたのが、その時期を境目としてどうしてころっと変わったのかということです。

2番目は、協議の形式が成功したのと協議の内容が成功したこと、これはクオリティーの面で大変大きな隔たりがあるということです。中国政府はどういうふうに考えているのでしょうか。北朝鮮を形式的には参加させたということですが、内容的な面での参加というのはもっと深い議論、そういうプロセスが必要であると思います。形式と内容の質的な差について、中国はどう思っているのでしょうか。

3番目です。ものすごくもどかしい感じがしますが、北朝鮮の交渉の方法とアメリカを中心とします、あるいは中国が媒介となってつくられました6者協議がすぐさま成果をおさめるであろうとは私は思いません。どちらかが何かをあきらめなければなりませんが、それはできないので、ですからPSI(拡散防止構想、大量破壊兵器の密輸を海上臨検などで防ぐためブッシュ米政権が提唱)と北朝鮮の核抑止のステップというのを一度は経なければならないと思います。アメリカは日本の協力を得てPSIを高めていくと思います。北朝鮮はそれに対して、核抑止力の推移を高めるというプロセスですけれども、それを経てからある決定的な瞬間になって、6者ともが決定しなければならない瞬間が来ると思います。では、そのときになって中国がとれる対応の仕方というのはどれぐらいの幅があるものなのでしょうか。

ギブ・アンド・テークの段階を踏んだプロセスが不可欠

【孔魯明・元韓国外相(現朝日新聞アジアネットワーク会長)】 6者協議のアプローチについて疑問を感じている点が幾つかあります。第1は、6者協議をするようになったのは、アメリカが北朝鮮と2国協議はしたくないと言ったからです。そういう中で、6者という枠内で舞台がつくられたというものです。実際、CVID(完全で検証可能かつ不可逆的核放棄)はアメリカが出しておりますが、これは一朝一夕でできるものではないと思います。段階を踏まなければなりません。

じゃ、その段階を踏むということですが、アメリカが求めるすべてのCVIDを全部クリアしなければ、北朝鮮に何かを保障しないというふうになるとしましたら、北朝鮮はおそらくそれをそんな容易に受け入れることはしないでしょう。それほど信頼がないからです。ですから、ギブ・アンド・テークというようなかぎを1つずつ閉めていかなくてはならない。そういったプロセスが必要なのです。

そのプロセスで最も問題になるのは、私はこう思います。アメリカが今、舞台の上でメインアクターになっておりますが、アメリカの考えがまとまっていないということです。国防総省とラムズフェルド長官を代表とするネオコン、また、国務省の中にもネオコンがおりますが、そのような状況が、まとまらない意見が何とか解決されないと解決策は出ないと思います。6者協議を続けるだけで解決策は出ません。日本の政府の方がもしいらっしゃったらそれに対する正確なお答えがいただけると思いますけれども、いかがなんでしょう。日本側はこれについてどう思っていらっしゃるんでしょうか。これが1点です。

もう1つ、中国側にお答え願いたいのは、私、政府を離れて7年ですので、政府の話はよくわかりませんが、私が政府の中におりましたときも核問題が中心的な問題でした。中国とそのとき話をしてみますと、中国の立場は「北朝鮮にほんとうに核があるんですか」というようなことをいつも中国の方々、学者もそうですし、そういうふうな考えをニュアンスの中で私は受け取りました。中国が今、6者協議をこのようにしていると、そのような変化というのを朴斗福先生は台湾問題に対するアメリカの協力関係を考えた中国の計算から出たものだというふうにおっしゃいましたが、果たしてそうなんでしょうか。じゃなかったら、ほんとうに「核ドミノ」が起こる可能性があると思っていらっしゃるんでしょうか。もし「核ドミノ」があるとしましたら、北朝鮮が核を持っているということについて確信を持っているということだと思います。これについて、もう少し率直な中国のご意見を承りたいと思います。

今、私たちが知っている話の中で、北朝鮮が6者協議に出てはいるけれども、言うことを聞かないから、送油が6週ぐらいストップしたことがありました。中国の説明は故障があったという話でしたが、ほんとうに故障だったのか、バルブを締めてしまったのか。その辺のことを率直にお話しいただけるんでしょうか。

ベスト・ポリシー・ミックス再吟味のとき

【杉山晋輔・駐韓日本大使館公使】 先ほど伊豆見先生が「インセンティブ」、それから「プレッシャー」、こういう用語を使われたのでいろいろ議論になったんだと思うんですけれども、言葉の使い方はともかくとして、おそらく中国の方も韓国の方も、それから日本から出席されている方もほとんどの方が同意されるのは、各国がベスト・ポリシー・ミックスをもっと追求すべきだということについては同意されるんじゃないかと思うんです。それぞれが6者協議の枠組みの中で、ほんとうにベスト・ポリシー・ミックスを今までやってきているかということについては、それぞれの立場で反省すべきところがあるんじゃないかというのが私は伊豆見先生がおっしゃりたかった一番重要なポイントのような気がするんです。

それぞれ、中国は中国で6者協議の開催に向かって、さっき中国の大使館の方から話があったように、大変な努力をされていることを評価しています。日本だって小泉総理の二度にわたる訪朝など非常に多くの努力を払ってきていると思います。韓国も包容政策から平和繁栄政策という名前で呼ばれて、名前がいいかどうかは別として、韓国内の努力を払ってきている。じゃ、アメリカがどれだけの努力を払ってきているかというのが孔魯明長官の1つのポイントなんだろうと思うんですけれども、日本政府はこれまでいろいろな局面でアメリカ政府の中の、対話重視の考え方の人たちを限りなくサポートして、そして6者協議の枠組みの中で、少しずつであるけれども、忍耐を持ってこの問題の解決を図ろうということをやってきたんじゃないかと思います。

ただ、ここで一つ考えなきゃいけないのは、果たして時間がどっちの味方になっているのか。このまま忍耐強く粘り強くやれと言っても、時間がたてばたつほど、伊豆見先生が言われたように、実は核開発というのは進んでいるのではないかという問題点だと思うんです。

先ほど伊豆見先生からリビア型の問題解決の追求を補完的にやることができるかもしれないというご指摘がありますけれども、しかし、問題の一番の核心部分、大きな枠組みの部分というのは、やはり6者協議の枠組みで、それぞれの国がベスト・ポリシー・ミックスをさらに追求して、その努力を強化する以外に手がないんじゃないか。その努力を強化する中で、日本ももっと努力しなきゃいけない。アメリカももっと努力をしなきゃいけない。同時に中国も韓国もまだやることがあるんじゃないか、そういうふうに考えることができるんじゃないかと思います。

市場経済の拡大が核問題解決への追い風に

【南贊淳・東亜日報調査研究室長】 討論に熱が入っておりますが、私はこのテーマと少し離れた立場で私見を述べさせていただきたいと思います。

6者協議と関連して、皆さん、アクターとなる国家を中心にお話をされています。そのような国家中心の議論というよりは北東アジアの構造が北の核問題にどういう影響を与えており、どういうふうに作用してきたのかという問題提起をしたいと思います。

私は93年、94年ワシントン特派員をしておりました。北の核問題が台頭し始めた時期でありましたが、当時の北の核問題を扱うアメリカ、そして北朝鮮、韓国、中国、日本の行動と、今現在の6カ国の立場というのは、行動の様式が違います。その当時は、北朝鮮は生存と安保が切迫した問題でした。アメリカが中国に対してどういう政策をとるべきなのか、政策決定ができていないという時期でした。

韓国は冷戦体制の崩壊によって、韓国に北朝鮮がどういうことをしてくるのかということで戦々恐々としておりました。北朝鮮の核問題を扱う上での政策を見ましても、韓国に関する瀬戸際政策がそのまま受け入れられました。中国も今のように自国の安保問題が確固とした時期ではなかったので、ロシアとの関係を存続するための動きがその当時ありました。ですから、北の核問題にも積極的ではなかった時期です。

しかしながら、その間、4者協議があって、今、6者協議まで来ておりますが、中国の積極的な役割というのがありました。その間、北朝鮮も自国の生存と安保につきましては、相当のベネフィットといいましょうか、枠をつくってきたと私は思います。

中国もそうです。アメリカとの関係で、ある役割をそれなりに設定してきたということです。つまるところ、このような北東アジアの政治、安保の構造がこのようにかなり変化した。このような変化を重視するのが、今、議論されておりますアクター、国家中心の議論よりは効果的なのではないかと私は思います。

では、10年前と今現在の北東アジアのストラクチャーの最も大きな変数はなんでしょうか。私は資本主義の拡大であると思います。今、北朝鮮が韓国に依存している経済的な依存度、また中国における資本主義の拡大、このようなすべてを見てみますと、資本主義の拡大、市場経済の拡大というのが北東アジア全体に大変な影響を与えていると言えると思います。市場経済の拡大というのは、我々の立場から見ますと、北朝鮮の核問題にとても肯定的に作用することができると思います。北朝鮮の瀬戸際戦略はもう限界に来ていると私は思います。

このような環境的なストラクチャーの変化を、どういうふうに、いい方向に機能するようにできるのかに焦点を当てる必要があると思います。河英善先生は「ネットワーク国家」というふうにご指摘されました。あるいは季志業先生は「文化経済」という表現を使われました。このような側面に目を向ければ、各アクター国家が自国の利益を考えてこういうふうにするとかしないとかというよりは、経済的な問題、文化的な問題でアプローチする、あるいは市場経済の拡大ということに焦点を当ててみますと、北朝鮮の核問題の解決策も見えてくるのではないかと思います。

どうしてかといいますと、93、94年にとっていた北朝鮮の核問題に対する態度と、今現在2004年の北朝鮮の態度には大変に大きな差があるということです。

紛争回避に6者協議以上に良い選択肢なかった

【シン海明】 まず、どうして中国が朝鮮半島の核問題に関与するのか。中国の立場はこうです。朝鮮半島は必ず非核化されなくてはならないということです。この主張は、韓国、日本、アメリカ、各国とも賛成だと思います。朝鮮半島に核ができてしまうと、中国だけじゃなくて、ほかの国にも影響があります。ドミノ効果もありますし、ややもすれば、核の拡散問題にまで広がる可能性があります。これは重大な事態を引き起こします。地域における緊張も高まるでしょう。また、紛争の可能性も出てきます。多様な要素があって、これは中国にとっても韓国にとってもいいことではありません。

中国がどうしてこのようにしているのかは、中国にいいことではないからです。積極的に参加しているわけです。中国、アメリカも多様な選択の幅があると思います。アメリカは戦争という方法をとることもできます。核問題が出たときに、アメリカは戦争という表現も使いました。アメリカの大統領は自分の机の上に多様な選択肢が置かれています。どれをとってもいいわけです。でもこの地域の緊張を高め、朝鮮半島の不安定さを増すようなことをしてはならないということです。

まだ問題は解決しておりません。アメリカと北朝鮮が対話を通じて解決できれば、それにこしたことはないと思いますが、現実的に難しいのです。ですから、いろいろな方法を通じて解決を図っているわけです。もし解決できなければ、アメリカ、日本、EUを含めて、中国の役割を期待すると言います。中国が信頼を受けているのはわかります。

北朝鮮の説得の役割も指摘されました。どうして北朝鮮を6者協議に向かわせたのかという質問もありましたが、それ以上いい方法がその当時なかったからです。6者協議に北朝鮮が参加するのが北朝鮮にとっても有利であるからです。そういうふうにしないと戦争が起こるのは明らかだし、朝鮮半島の緊張が高まるであろう。北朝鮮にもいいことではないということです。

もう一つは、北は核を廃棄する意思があるのか。「核は本当にあるのか」というご質問でした。私、北朝鮮に8年もおりましたが、核があるのかないか、ほんとうにわかりません。はっきりとした証拠がないからです。ほんとうにあると仮定して、核をあきらめる可能性はあるんでしょうか。2つの可能性があると思います。

1つは、もしアメリカが安全を保障するのであれば、核を廃棄するでしょう。そういう意思があるでしょう。3国協議でも、6者協議でも、北朝鮮は「核をあきらめるとアメリカは何をくれるのか」と言いました。でも、アメリカははっきりとその対価について言いませんでした。アメリカの国内に多様な意見があり、はっきりと答えられないという側面もあると思います。

2番目は、もしアメリカがこの問題を解決できないとしたら、おそらく北朝鮮は核抑止力という問題を持ち出してくると思います。しかし、対話という方法で核問題を解決するのが私たちの目標であることは間違いないと思います。

孔会長から、中国の送油管バルブのご指摘がありましたが、中国がバルブを締めたことはありません。自信を持って言えると思います。そういう話は日本で最初に出たのですが、そういうことはありませんでした。ここで言っておきます。

6者協議でも解決できない可能性も念頭に

【藤原秀人・朝日新聞編集委員】 私が北京におりましたときは、ちょうど枠組み協定がまとまるころから、4者協議が行われたころですけれども、そのころも、よく東京から、なぜ中国は北朝鮮の核問題で何もしないんだと、まるで私が中国の代表のようにせっつかれたんですね。

92年の中韓国交正常化に比べ、北朝鮮外交というのは中国の当局者にとって割の合わない、あまり手を染めたくない外交だったんだと思います。それがなぜ変わったのかというと、北朝鮮外交がいわゆる中国が重視しているアメリカ外交とつながってきて、それが4者会談ということになったと思います。

しかし、なぜ中国が一生懸命やっているように見えないのかというと、思うには、中国は、まず対米重視プラス北朝鮮の核問題というのが根底にあるんですけれども、朝鮮半島の不安定化は望まない、周辺の不安定を望まない。ですから、安定と対米重視、それを追求するあまり、核問題に対していわゆる圧力というのが見えてこない。それが多分、周辺の我々が持っている疑問の原因ではないかと私は思っています。やることには限りがあって、北朝鮮に圧力をかけるのは確かに難しいことなんですけれども、いま一つ外交が透明ではないがためにそれが理解されていない。

最近は6者協議のことを、中国のある有力者は、上海シックスに倣って北京シックスと呼ぼうといっています。非常にいいネーミングなんですけれども、それを聞いていると、これはそもそも核問題に対する心意気というか、核を感じられない。それが誤解を生んでいるんじゃないか。つまり、核を利用しているのか、別な問題で中国はこの東アジアで主導権を発揮しようとしているのか。この不透明さがそういう誤解を招いているということを友人として伝えたいと思います。

核兵器が存在するかしないかわからないという言い方をされるんですけれども、これは10年前も同じだったと思うんです。確かにわからないかもしれません。わからないけれども、6者協議にあたって、そういう態度を表明することが果たしてどうなのか。どういう影響を与えるのか。これは中国側も考えておかないといけない。

先ほどから時間が切迫しているという見方がありますね。これは対話を続けることによって6者協議で核問題が解決できるという前提だと思うんです。しかし、解決できないという可能性をやっぱり考えておかないといけない。もちろん暴力とか、そういうのを望むわけじゃありませんけれども、一方で中国はそういう覚悟をどれだけしているのかということも我々はやや心配なところです。

核保有は南北統一を遅らせる

【朴チョルヒ・東亜日報21世紀平和研究所員】 季志業先生の発言を聞きながら幾つか考えさせられたので、3点ほど申し上げたいと思います。まず第1点目ですが、核を持っているかどうかということははっきりとはわからない。あるとすれば、アメリカなどが証拠を示さなければならないという点について、私は違う考えを持っているからです。伊豆見先生も既にお話になったように、北が核を持っていると自ら認めたことがあります。また、いろいろな状況証拠からみて核を持っている可能性が高いという話があります。リビアが宣言をしてからは、パキスタンと北朝鮮との連携に関する多くの証拠があります。だから核を持っている可能性が高いという話が出ているのです。

北ではないほかの国が証明しなければならないことは、証拠を示さなければならないという点もありますが、北朝鮮も外側からあると言えば、自らの立場を表明しなければならないと思います。北朝鮮が保障を受けるためには、核についてはっきりさせないと保障を受けることはできないからです。核がどういう状況になっているかを北朝鮮が明らかにしない限り、外から何か措置をとることも難しいのです。

2点目は、北朝鮮はまだ飢えも解決できていないのに核を開発できるだろうかという趣旨の発言がありました。それは逆に裏返せばいいと思うのです。食べるのにもきゅうきゅうしているから核を開発している。だから核を開発して、交渉によって保障を受けたい。また、軍事力のインバランスもひどいので、それを一発逆転するために核を開発している。大変だから、困っているから核を開発していると言えると思います。

アメリカの敵対視政策の話がありますが、それは順序が変わっているだけです。核を開発しようとしているからアメリカが敵対政策をとっているのです。その逆ではないと思います。時間的にも、また、論理的にもそれは理にかなわない話だと思います。

3番目、核を持っていても核を使わないだろう。アメリカは座視しないからだという話がありますが、私は核の保有、それ自体が問題だと思うのです。それを使うかどうか、それ以前の問題だと思うんです。韓国の立場からすれば、南北の軍事的なバランスの逆転のおそれがあります。また、南北が協力関係を続けているのは南北の統一のためです。南北統一というのも北が核を持った場合はもっと時間がかかってしまいます。

また、シン参事官もおっしゃったように、この地域における「核ドミノ」、また、緊張誘発の可能性、核を持つことだけでもそういう可能性が高まります。だから核の保有については立場を明確にして核廃棄に持っていかないと、この地域の安定は望み薄になると思います。

最後になりますが、季志業先生への質問です。冷戦の遺産がこの地域の協力体制づくりを難しくしている理由だとおっしゃいました。冷戦の氷を解凍するためには長い時間温める必要があるとおっしゃいました。朴斗福先生は中国が核問題について切迫感を持っているかどうかという質問をされました。冷戦の氷を解かすためには時間がかかりますが、北の核問題解決のためのタイムスパンは中国はどのくらい煮詰まっているのでしょうか。杉山公使も時間はだれの味方なのかというお話をされました。冷戦の解体が最も望ましいのですが、50年、60年間かかった氷を解かすために50年も60年もかけることはできません。だから核問題にかかるタイムスパンを中国はどのように見ているのでしょうか。

日本はブッシュに、中国は金正日にそれぞれ働きかけを

【若宮啓文・朝日新聞論説主幹】 日本には「泣く子と地頭には勝てぬ」ということわざがあります。泣く子はまさに泣いている子ども、子どもに泣かれると困るということでミルクをやったり、おもちゃをやったり、お菓子をやったり、頭をなでたりもしなきゃいけない。これが北朝鮮の外交であろう。地頭というのは、歴史的な古い言葉なんですけれども、地域を治める役人、強い役人のようなものですけれども、非常に権力的でもあり、力があり、逆らうと怖い。これが日本からするとアメリカである。アメリカがイラク戦争しても、まあ逆らうわけにもいかないから支持しましょう。韓国も多分、気に食わない地頭だけれども、ほんとうに最後まで逆らうと怖いからつき合うと、こういうことではないのかなと思うんですね。

ところで、泣く子と地頭は、それぞれ強いわけですけれども、一体どっちが強いんだろうというのがアメリカと北朝鮮の今ぶつかり合っている、いわば「泣く子と地頭」の戦いであるというふうに私の同僚が言いまして、私はおもしろいなと思って聞いていたんです。泣く子と地頭がぶつかり合いますとどういうことになるか。しかも、その泣く子は最近危ないおもちゃを持っておりまして、頭をひっぱたくと爆発するかもしれないというような泣く子であるということで、この2人だけに任せておくと危ない。爆発されたら近所迷惑だということで、町内会で集まったのが6者協議なのかなという気がしております。

ですから、あくまで最後の主役は、アメリカと北朝鮮なんだろうと思うんですけれども、そこでアメリカというよりもブッシュ政権と言ったほうがいいんでしょうけれども、強い姿勢の背景には、結局のところ、金正日体制を認めるのか、金正日体制をつぶすのかという2つの考え方が、孔魯明先生がおっしゃったように、アメリカの中に2つあって、そこの収拾がついていないんだろうと思いますし、ブッシュ大統領は基本的には何とかつぶせるものならつぶしたいと思っているのではないか。それが北朝鮮にもよくわかるので、このCVIDというのは単に核の問題ではない。こんなものにうっかり応じたら、自分の政権体制がつぶされるのではないかというおそれがあるところで、とてもじゃないけど、うっかり認められないよと、こういう構図ではないのかなと思うわけです。

ほかの4カ国は、金正日体制を好きかどうかは別として、認めて、この体制の中で何とか少しずつ国を変えてもらいたいということなんだろうと思いますが、その中でやや微妙なのが日本なんだろうと思うんですね。先ほど杉山公使は、アメリカの穏健派をエンカレッジしているということで、外務省の立場、日本外交の立場を説明されました。そのとおりだと思いますが、日本の政治の世界、あるいは国民世論の中には、この拉致問題などもありまして、金正日体制をこの先存続させてお金をたくさんあげるというようなことに非常に疑問を持っている向きがあるわけですね。それが拉致問題の難しさだと思うんです。そういう中で、今度の小泉訪朝を中国と韓国の方は大変評価してくださって、日本の国内ではかなり評価が割れているんですけれども、小泉さんがここにいたら大変感激したんじゃないかと思います。私は小泉さんの訪朝の意味というのは、いろいろマイナスもあるでしょうし、評価は難しいんですけれども、最大の意味があったとすれば、小泉さん自ら北朝鮮の体制のもとで日朝の国交を開くんだと、必ずしも体制転換を望んでいるわけではないということをメッセージとして明確に内外に示したということなのかなと思うわけです。

ですから、小泉さんはブッシュ大統領にも影響力のある人だとすれば、そこの意味がアメリカにどういうふうに伝わり、影響力を与えるのかというのが私は大変関心があるところです。そういう意味で、小泉訪朝というのは、なかなか日本では拉致の問題の文脈でしか論じられないんですけれども、ちょっと大きな目で見ると、一つのポイントだったような気がしています。

小泉さんは、余り時間がないのでやめますが、そういう意味でブッシュに対して、これからその線で説得を続けることが役割でしょうし、それから国交正常化というのは、もちろん核問題の解決と同時決着でなければあり得ないでしょうから、そういう環境づくりをしなければいけない。ただし、拉致問題というのがまだ全面解決ではありませんので、そこのところで何としても北朝鮮にもうちょっと誠意を見せてほしいというのがどうしてもあると思うんですね。その辺で私はやはり中国が大変大きな役割を果たされている。日本と中国が靖国問題などで首脳同士なかなか腹を割れないんですけれども、靖国は靖国として、この問題をもう少し日中で腹を合わせて日本はブッシュに働きかける、中国は金正日にというような形でいくことが大事なんじゃないのかなと思っております。

現状維持をのぞむ中国が最後の安全装置になるか

【鄭鍾旭・亜洲大学教授(元駐中国・韓国大使)】 中国の役割と関連して多くの議論がありました。中国はあまり切迫感がないのではないかと伊豆見先生が質問を投げた理由を私も理解することができます。

北朝鮮では、IAEAをはじめ、いかなる国際機関や第三国も、核活動を監視する安全装置が働いておりません。大変異常な状態が続いているのです。中国はこれまで第2次の北の核問題と関連しては、きわめて肯定的、きわめて積極的な役割を行ってきたと思います。第1次核問題のときと比較しても、現在の核の状況というのは、中国の役割という面から見ると全く異なっております。

おそらく93年のときは、中朝関係が中韓国交正常化後悪化しておりましたし、今は中朝関係が改善されて、中国が北朝鮮に対して友情のあるアドバイスができる状況になったということもあるでしょう。また、中国が北朝鮮の核問題をはじめとする状況に対し認識が変わってきた。深刻に状況を受けとめているという解釈もできるでしょう。朴斗福先生もおっしゃいました、台湾関連の話もありました。北が核を持つようになれば、地域内での拡散を中国は懸念しているという話もありました。

それに加えて中国は、アメリカが主導しているミサイル防衛体制(MD)について、実はこの地域の安保のために懸念していると思います。それを北の核自体が触媒の役割をするかもしれないと思っているようです。MDが推進されると、台湾までが加わる日米準軍事体制がつくられる可能性がある。

中国が北の核問題に関して果たせる重要な役割は何だろうか。それは現状の維持だと思います。現状の維持とは何か。それは悪化を防ぐことです。北朝鮮の核問題で朝鮮半島の不安が高まったことがありました。93年ですが、カーターが介入し、金日成が介入し、幸いなことに平和的に解決しましたが、今は果たしてカーターが、金日成が何の役割を果たせるか。それを考えた場合、金日成がいない北朝鮮にとって中国の役割はかつてなく重要だと思います。最後の安全装置になれると思います。

6者協議の有用性に関する議論も活発です。中国側も説明がありました。6者協議は北朝鮮が望んだものではありませんでした。しかし、6者協議という枠組みの中で、北朝鮮の核問題が話し合われており、妥結が試みられています。これは既成事実です。北の問題は核だけを取り上げて話し合う段階は既に過ぎ去りました。朝鮮半島の平和定着、和平、また北東アジアのポスト冷戦の秩序定着とも直接・間接的に結びつけて話し合われております。また、そういう方向で解決されるべきだと思います。

北の核問題は忍耐の競争ではないか。我慢比べだと思うのです。どのくらい続くかわかりませんが、先ほど日本側からも指摘がありましたが、突発事態が発生するかもしれません。突発事態が起きた場合、対応ができるのかどうかということもとても深刻な悩みです。

船橋先生の基調報告の中で出た話だと思いますが、北の核問題が6者で解決されているのであれどうであれ、最も重要な問題は、各当事国が特定の問題について最も必要な選択や決断を猶予するというあいまいな状況が続いているのではないか。早い決断が事態を悪化させる可能性もありますが、アメリカ、北朝鮮、中国も選択をせざるを得ない時期が来るだろうと思います。

多様化した脅威、対処するには地域協力体を

【鄭求宗・東亜ドットコム社長】 6者協議のもう一つの役割、北朝鮮核問題解決プラス・オプションという問題について、私の意見を申し上げたいと思います。

6者協議を通じた平和的な解決、そしてその枠内でのアメリカとの両国間の協議による解決、いろいろ提起されました。しかしながら、北朝鮮の核問題の解決のプロセスは長く遠い道のりがあるということです。この地域の安保と平和と共存を脅かす要因が北朝鮮の核問題だけなのか。そのほかに問題はないのでしょうか。

地域の平和共存のために葛藤を解消するための、紛争を抑制するための解決すべき課題が皆さんから指摘されました。中国と台湾の問題、また、冷戦以前の朝鮮半島の分断と統合の問題も提起されました。また、冷戦後にありました国際的な民族間の対立、また宗教的な葛藤と対立、また民族主義、ナショナリズムの台頭による紛争が地域の共存と安保を脅かす要因として提起されました。

特に、9・11テロで経験しましたように、国際的なテロリズム、大量破壊兵器の拡散というのが、結局は冷戦後の安保を脅かす新しい要素として提起されているということです。アジア・太平洋地域における紛争と葛藤の要因は何なのかを考えてみました。地域各国のナショナリズムの台頭とも関係がありますけれども、例えば、日本と中国の間の尖閣列島領土問題、一国で過激な民間団体、極右団体が不法に上陸をして、占拠をする。そういったことで外交的な紛争にまでなっています。また、領土紛争とは決して言えないと思いますが、韓国と日本間の竹島(独島)問題というのもあります。

最近、日本の極右団体で竹島に船で上陸するということがありました。警備艇が動員されたり、紛争直前にまでいくといった様相がありました。竹島問題がクローズアップされますと、韓国は最近、昔は対馬が韓国の領土であった。今度は対馬でもって対応しようといった過激な話まで出てきたりしています。

ですから、このような領土問題だけでなく、北東アジアの難民問題、特に北朝鮮から中国を通じて入ってきております難民問題、また労働者の流入問題、また、動物による新種のSARSのような変形の疾病の問題が国境を越えております。また、貧しい国に対する食糧支援のような国際的な救護の問題。また、もう少し角度を変えてみますと、歴史的な清算と関連する歴史認識の差による国家間の葛藤、このような問題がまだ残っております。このようなものが国家間の紛争にまで拡大しないように調整できる機構、協議体といったものはないのでしょうか。そういったネットワークを6者協議ですることはできないのかということです。

中国の季志業先生がお話しされましたように、6者協議の協議体を地域協力体に発展させるといったことについても考えることができるのではないかということです。北朝鮮の核問題を基本的な課題としますけれども、プラス・オプションとして地域間の紛争解消の問題も6者協議で話し合うことができるのではないかということです。そうなりますと、6者協議がもう既にアメリカと北朝鮮の両国会談をめぐる残りの4カ国の本格的な協議体のようになっておりますけれども、ここから外交・安保的な懸案だけを協議した役割をもう少し拡大して、地域的な問題、地域的な葛藤の解消の問題までもここで扱うことができるのではないかということです。このような協議体がつくられることこそが、河英善先生がおっしゃった北東アジアのネットワーク国家、北東アジア協力ネットワークにつながるというものではないかと思います。

北東アジアの冷戦体制を終わらせるプロセス

【徐宝康・人民日報ソウル支局長】 記者として北朝鮮に8年間おりました。韓国には6年間おります。ですから、北朝鮮のほとんどの地域を見て回りました。寧辺にも行ったことがありました。そういうところを回った経験から幾つか申し上げたいと思います。

ここで考えますのは、このように一生懸命、活発に討論をしておりますけれども、アメリカの朝鮮半島の専門家がここにいらっしゃらないということ。ほんとうにその意見を伺いたいと思います。朝鮮半島だけではなくて、北東アジアの安保問題はアメリカを差しおいては今のところは何も言えないと思います。ほんとうにそう思います。私の個人的な考えですが、これからアジア、北東アジア諸国も大切ですが、朝鮮半島の主人というのも韓国と北朝鮮ですけれども、アメリカの役割というのは欠かせないと思います。それは無視できない問題だと思います。

ですから、私の考えは、6者協議を一つのプロセスとして考えてはいかがかということです。一つの舞台として考えるのはいかがなのか。どうして朝鮮半島にだけ冷戦体制の遺産が残っているのか。このような状況、環境で6者協議が生まれたわけです。6者協議というのは、北東アジアの冷戦体制を朝鮮半島で終わらせるための過程だということです。今は過渡期なのではないか。この過渡期をどういうふうにうまく活用するのかというのが重要な問題です。

2番目は、6者協議は舞台と申し上げました。舞台は何なのかということですが、6者が各国それなりの国家の利益のために、自国の利益のために演出しています。シナリオが出ています。そのシナリオの中で、今の状況で鍵はだれが持っているのか。私の考えは、鍵は南北朝鮮が持っているのではないかということです。北朝鮮と韓国、今、6者協議で出てくる基本的な内容は、北朝鮮は体制を保障してほしいということです。だれに要求しているのでしょうか。中国に要求しているんですか、いいえ。ロシアでもありません。日本と韓国でもありません。アメリカに要求しています。アメリカはどういうふうに答えたんでしょうか。まだ答えていません。

もう一つ。私の考えでは、6者協議の舞台で北東アジアの安保問題は完全には解決できないと思います。その舞台のほかに、場外により多くの関係をつくる必要があると思います。6者協議をめぐる環境づくり、基盤づくりが必要です。

この間、南北間の軍事当局者の会談が行われましたが、それはとても意義深いことであったと思います。これは今後、朝鮮半島のほんとうの意味での主人としての役割をしたと思います。そして、小泉首相の2回目の訪朝。拉致問題も重要でありますが、私の考えでは、日本が6者協議でどういう役割をするのかというのと関連して、とても重要な出来事であったと思います。日本の小泉首相が北朝鮮を訪問したので、今後、6者協議での発言権は大きくなるでしょう。それは核問題の解決において、今後、大変有意義な役割を果たせるということを意味します。小泉首相が今回、行かなかったとしましても、ほかの方々がこれから訪朝する機会が増えてくると思います。時間の問題です。これはどういうシグナルかといいますと、南北朝鮮の軍事当局者会談もそうですし、日本の小泉首相の北朝鮮訪問もそうですし、これは一つのシグナルであったと思います。タイミングといいますのは、今後、北東アジアの安保はアメリカだけが主導するのではなく、協力して主導していく必要があるということです。

「核廃絶」から「核管理」に移ってしまう恐れも

【張達重・ソウル大学教授】 船橋洋一先生の発表内容を見て、少し韓国で行われている状況に関する理解が必要なのではないかということで幾つか申し上げたいと思います。

まず日中韓、北朝鮮もそうですが、ナショナリズムが政治的に利用されているというのは事実であります。中国における反日感情、そして韓国の反日感情というのはとても大きな差があるということを認識していただきたいということです。今、韓国で歴史問題、小泉首相の靖国神社参拝問題というのが政治的に利用されていると日本側はおっしゃっておりますけれども、私の考えでは、政治的に韓国で利用されておりません。韓国の知識人の中に、もう日本というのは頭の中にないと思います。

また、中国に関する船橋洋一先生の解釈もちょっと私とは見解が違います。といいますのは、今、中国が現状維持をしているというのは、当分の間、中国の経済成長、また平和共存のために必要であると思います。でも、私の考えでは、今、韓国でのチャイナ・フィーバーを考えますと、中国にそのような緩衝地帯(北朝鮮)が必要なのかということです。

もう一つ、この6者協議で今、お話を伺っておりますと、どこに行っても似たような現象ですけれども、日本の発表と中国の発表の内容に大きな隔たりがあると思います。その中に立っている韓国の立場は何なのか。実は、時には日本寄りになったり、時には中国寄りになったりしているのではないかと思います。韓国の政府の立場は、中国の政府の立場と近いような気がしますし、河英業先生とか、ここにいらっしゃる方々の相当の方々は、特に北朝鮮の解決問題におきましては日本に近いと思います。韓国で政治的な主導勢力となっておりますのは、中国と似たような立場を堅持しているのではないかと思います。北朝鮮は譲歩の用意があるんだけれども、アメリカは譲歩する姿勢がないんだというふうに結論づけることができると私は思います。

今回、韓国のウリ党の国会議員から聞いた話ですけれども、今後、アメリカが6月にイラクの政権移譲をしてから、希望的な観測が出ているようです。2つの中の1つですけれども、大統領選挙の前までは6者協議は効果がないであろうというのでありますし、もう一つは、大統領選挙のために北朝鮮の問題において突破口を見いだすのではないかという2つの見方があると思います。ですから、6者協議はアメリカの大統領選挙まではほとんど機能しない無用のものになる可能性もありますし、もう一つは、大統領選挙のために6者協議を利用する可能性もあると思います。今までアメリカは単一ボイスとして会談に出ていないと思います。ですから、ある人は6者協議ではなく7者協議であると、アメリカの立場は2つであると言っている人もいるわけですけれども、こういうことを申し上げておきたいと思いました。

私が心配しておりますのは、アメリカのだれとは言いませんが、前高官、朝鮮半島に関係のある方ですが、平壌を訪問してオフレコで言ったことですが、ほとんど北朝鮮の核開発に対する事実を認めるような発言をしております。その中で結局、これからの北の核問題は核の廃棄から核管理に移るしかないのではないかということです。私は、ソウルで韓国の専門家をお迎えして話をしたことがありますけれども、その方は、控えめに見て5つぐらい開発できるようなプルトニウムがあるのではないかと見ております。中国の方々は、これについてはわからないと言い続けておりますけれども、核問題については北朝鮮とかパキスタンの核技術は中国から行ったものですけれども、どうしてこれをわからないと言っているのかと思います。中国側のご意見を伺いたいと思います。

最後に一つだけ。私は北朝鮮の核問題は究極的には解決するのではないかと思います。ポスト北核問題のときの朝鮮半島はどうなるのかという見解についても伺いたいと思います。これと関連して河英善先生が、20世紀的対立、そして21世紀的な解決策が必要であるとおっしゃいました。私も賛成ですけれども、これは実効性が全くないのではないかと思います。それについてリーダーシップを発揮できるような人はいますか。ネットワーク、ネットワークと言っておりますけれども、日本と中国で、韓国のような市民社会ネットワークは存在しないと思います。韓国は、政府が経済分野の政策を決定しますが、市民社会が第三セクターとして決定しています。中国や日本はこういうのはないと思います。ですから、このようなネットワークはどうやってつくることがアジアではできるんでしょうか。私は不可能だと思います。もちろん、ネットワークはこういう意味だけではないと思いますけれども、21世紀的な解決策というのが、果たして20世紀的な問題の解決に役に立つのかという否定的な見方を申し上げました。

日本に米国説得のさらなる努力を期待

【季志業】 先生の質問に先にお答えします。きょうの会議に出て、多くのことを学びました。2つの要望があったと思います。一つは、中国がもっと大きな役割をしてほしいということ。とにかく中国の役割が期待されていることはよくわかりました。この問題は、中国においても一つの試みの段階にあると言えます。中国は、これまで一回も国際問題に直接介入したことがありませんでした。北の核問題は中国が初めて積極的に介入した事件です。これまでの中国の行動を見ても、大変一生懸命にした結果です。多くの方々の期待に及んでいないというのはわかりますが、それなりに努力したということは認めていただきたいと思います。

皆様は中国と北朝鮮の関係がいいから、もっと大きな役割ができると思っていらっしゃるんですが、葛藤の当事者はアメリカと北朝鮮です。私たちが北朝鮮を説得するだけでは十分ではありません。今、作業部会が始まった段階ですが、もっと弾力的な行動が必要だと思います。アメリカが少しも変化していません。日米関係は良好です。日本はアメリカを説得することができませんか。北朝鮮に核があるからといって、北朝鮮だけを非難することはできません。いろんな分野でアメリカをもっと説得する必要があると思います。それぞれの国はそれぞれの役割をすべきだと思います。

切迫感の話、50年、60年かかってでき上がった葛藤をどうするか。解決する、それを解かすためにまた50年、60年をかけるという意味ではありません。ただ、私が申し上げたかったのは、もっと忍耐が必要だということです。地域協力体というのは、私の個人的な意見でした。この協力体制というのはいつ可能かといえば、6者協議が大きな成果を上げた後、こういう協力体が可能になると思います。それはさっきも申し上げました。6者協議の成果がないと、こういう地域協力体も不可能でしょう。

では、6者協議の進展はどうすれば得られるでしょうか。伊豆見先生もおっしゃいましたが、2回も6者会談が開かれたにもかかわらず、北はまだ核を持っているしというお話でした。ですが、6者会談がなかったらどうなっていたでしょうか。北朝鮮はもっと悪くなっていたのでしょうか。小泉首相が北朝鮮を訪問しました。そして、5人の拉致被害者の家族と一緒に帰国しました。こういうことを日本の国民はあまり高く評価しませんでしたが、6者協議がなかったら、小泉首相の2回目の訪朝が可能だったでしょうか。また、拉致被害者の家族を連れ帰ることができたでしょうか。これらも皆、6者協議の成果だったと思います。中国が積極的ではないとかという問題ではないと思います。中国はもちろん何とかしたいのですが、どうしようもないのです。だから、積極的な対応ができなかったのです。

プロセス楽しむ参加国、まず北朝鮮の変化がカギ

【崔圭徹・東亜日報論説主幹】 北が自分の核をなくすのにどうしてお金を渡さなくてはいけないのですか。おかしいのではありませんか。お金で北の核を買うのですか。私は、疑問を持っております。

韓国のことわざに「一晩中泣いたけれども、どこのお通夜に行っているのかを知らない」という話があります。私は6者協議懐疑論者です。6者も集まって結論を導き出すのは簡単ではありません。プロセスという話がありますが、効率はよくありません。

6者協議を見ると、収益性があるブルーチップス、優良株の話などがあります。優良株が北の核で、北朝鮮も含まれるかもしれません。投資して収益を上げようとする6者協議は株式市場のようなものだと思います。そうなってしまったのです。どうしてでしょう。参加者は、6者協議解決後よりも6者協議それ自体を楽しんでいるように思われます。

中国はどうでしょう、楽しんでいるんじゃないですか。みんなを集めて南北朝鮮に影響力を行使、アメリカにも適当に影響力を行使し、また、日本に対してもいい格好をして、これを楽しんでいるように見えます。もちろん、努力はあったとしました。日本はどうでしょう。北が核を持っている、持っていない。アメリカと手を組んで、アメリカも日本も楽しんでいるようです。日本も憲法も改正し、再武装に進む。日本も日本なりの実利を得ている。ロシアは何をしてるかわかりません、アメリカもそれなりのメリットがあるでしょう。テロに対するアメリカの国益を宣伝する場としての活用度があるでしょう。

南北朝鮮だけ何のメリットもないように思います。韓国のことわざに、「馬を川に連れて来ても、水を飲ますことはできない」ということわざがあります。金正日が核をあきらめるでしょうか。それはできないと思います。では、どうすればいいのでしょうか。金正日が変わるべきです。さっき時間はどちらの味方かという話がありましたが、時間は金正日の味方ではありません。その間に、核を幾つか作れるかもしれませんが、時間は金正日の味方ではありません。金正日が変わらなければなりません。決断を下さなければなりません。どうすればいいでしょうか。自分でその変化の必要性を感じたときです。それが恐怖からの決断であれ、自分で決断を下すしかないのです。でも、6者協議の決裂を望んでいるわけではありません。

放置すれば中国にとって最悪のシナリオも

【伊豆見】 挑発的なことを申し上げて始まりましたので、最後も少しそちらの線で申し上げたいと思います。

なぜ中国は圧力を行使しないのかといういろいろな理由があるというのは、いろいろそういうふうにおありなんだろうとも理解いたしましたが、私の解釈はおそらく、中国が一番懸念されているのは、圧力を強くかけ過ぎると金正日が精神的におかしくなるということを懸念されているんだろう。これはまさに北朝鮮というのは独裁権力の、独裁者が一人で物事を決めているような国ですから、その独裁者を徹底的に追い込んで、精神状態を不安定にした場合には、確かに何をするかわからない。北朝鮮は合理的だと言います。私も合理的だと思います。金正日という人は今、合理的に判断して政策をつくっている。私もそう思います。しかし、彼がものすごいストレスの中にいることも確かであって、彼の精神状態がこのまま平衡を保つかどうかわからないことも事実である。ここに生命線を握る中国が決定的な圧力をかけると、金正日はおかしくなる、狂ってしまうかもしれない。狂った金正日は自殺的な行為も当然するでありましょう。それは決しておかしくないことです。

おそらく中国はそれを懸念されて圧力をかけられないんであろうと思っておりますが、そのまま北朝鮮の核開発が進みますと、もう一人精神的に不安定になる人がいるかもしれない。これは人というより国でありますが、我が日本は大丈夫なんだろうかと思うわけでありまして、ここら辺は幸いにしてこの1年間、北朝鮮の核開発が進んだにもかかわらず、日本の中には核武装すべしという議論がほとんど起きませんでしたし、日本の中でそういう議論をしておりませんので、中国はさぞかし安心をされているであろうと思いますが、しかし、これはわかりません。このまま放置しておきますと、いずれどこかの段階から日本人もおかしくなるかもしれない。北朝鮮の核に対抗するためには我々も核兵器を持たざるを得ないと考えるかもしれませんし、それはおそらく中国にとって最悪のシナリオになるのではないかと懸念をいたします。

そうであるならば、今から北朝鮮をもう少し何とかして、核廃棄のほうに早く誘導しておいて、我が日本人の精神の平衡が保たれるように、ぜひとも中国のご協力をお願いしたいというのが第1点であります。

第2点でありますが、6者会談の中国の役割についていろいろご議論がありました。聞きながら、中国側は誤解をされておられないかなという気がいたしました。我々がおそらく期待しているもの、そして高く評価している中国の役割というのは一種の仲介者であり、そのブリッジングロール、橋渡し役であって、まさに米朝がこの問題の中心にあると中国側の先生方は強調されましたが、そのアメリカと北朝鮮との間の橋渡し役であり、仲介役であり、あるいはメッセンジャーであるかもしれない。その辺がおそらく我々の期待であり、したがってその役割を中国が果たされることを大変高く評価するものである。

しかし、私が感じますのは、中国側がご自分の役割をそう思っていらっしゃらないのではないか。むしろ、自分でこの問題を仕切る、監督をし、解決をする。したがって、中国は北朝鮮も説得するが、アメリカも説得し、両者の譲歩を求めてうまくそこでまとめ上げると。中国の主導的な役割によって米朝間に取引、ある結果を出させて、この核問題をうまく6者の中で処理しようとお考えのように受け取れますが、それならばもう少し違ったやり方がおありなのではないか。

中国は北朝鮮にもっと圧力をかけられるということができるのではないかと申し上げましたのは、やはり中国が圧力をかけて北朝鮮を変えれば、我々は中国の手によって問題が解決したと高く評価するでありましょうし、あるいは、アメリカについてもただ譲歩を求めるだけでなく、例えば、台湾問題について、中国が台湾の独立を認めるということでアメリカと取引をすれば、アメリカが北朝鮮と話し合って北朝鮮に対しても譲歩するかもしれません。中国のダイナミックな外交がそういうところでは発揮されるかもしれないと思うわけでありますが、もとより中国は北朝鮮に圧力をかけられませんでした。あるいは、アメリカに台湾問題で大きく譲歩してまで、北朝鮮に対するアメリカの譲歩を求めようとされないということだと思いますので、そうしますと、結果的に6者会談での中国の役割は、ご苦労さまですけれども、いろいろ場所を貸して、いろいろなところを回っていただいて、そのつなぎをやっていただいて、あるプロセスを継続するだけということになる。しかし、それではせっかく国際問題に初めて介入、積極的に参加されている中国外交の評価が落ちる日が非常に近く迫っているんではないかと。このままのペースでいきますと、中国外交の評価が極めて悪くなる。中国の評価が落ちることを懸念しておりまして、そうならないでほしいと思っております。

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