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脱温暖化社会へ:アジアの最前線から3

人口集中:省エネ型都市へ分岐点



北京市内の農業地区に掲げられた、太陽エネルギーをアピールする掲示板。人口約500人のこの地区では、市が太陽光やバイオマスを活用した「エコ村」建設を進めている=北京市房山区で、森治文撮影

寒さの厳しい北京は11月半ば、一斉に暖房が入る。夜中は零下10度を下回ることもあるが、「凍えて帰宅しても家の中はぽかぽか」と、業界紙記者の鄭紅艶さん(31)は満足そうに言う。

会社員の夫と2人で暮らす広さ86平方メートルのマンションは集中暖房で、不在の時でもつけっぱなしだ。「いったん冷えると暖め直すのに時間がかかるし、かえってむだなエネルギーを使う気がする」。暖房代は広さで決まっており、年間2580元(約4万円)。おかげで部屋は隅から隅まで常に心地よい。

3年前、仕事などの関係で湖北省の小さな町から移ってきた。テレビを大きめにするなど電化製品を全部買い替え、パソコンなども新たに購入した。電気使用量は1年で1500キロワット時、約740元(約1万2000円)ほど。暖房費とあわせると安くはない。

いずれは車も買いたい。「地球温暖化のことはよく知っている。何かしたいけど、具体的にと言われると難しい」

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二酸化炭素(CO2)の排出量は、エネルギーを多く使う先進国の方が発展途上国より多い。ところが、都市に限ればそうとも言い切れなくなってきた。

「1人あたりのCO2排出でみると、北京や上海は東京を上回る」

広島大の金子慎治助教授(環境システム工学)によると、東京の約5.4トン(04年)に対し、北京は約8.0トン、上海は12.7トンに上った。

上海や北京の電力がCO2排出量の多い石炭火力中心だったり、工場が多かったりするという事情もあるが、中国の都会暮らしも確実に先進国並みに近づいている。

豊かさや快適さを求めて、中国など途上国では人々は農村から都市に向かい、無意識のうちに膨大なエネルギーの恩恵にあずかる。家の中だけでなく車での移動や商業施設、職場の空調、あふれるモノ……。一人ひとりが農村とは比較にならないほどのCO2を出し、温暖化に手を貸す。

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だが、「人が集中して住むことは見方を変えれば、エネルギーを能率よく使う可能性も秘める」と金子助教授はいう。

そのカギは人々の意識の向上と省エネ型の都市づくりにある。

環境意識について、大阪大社会経済研究所の瀋俊毅・特任研究員らが昨年秋、上海市民600人に面接調査している。温暖化に関心があると答えた人は約81%に上った。

温暖化の現状について「とても悪い」「悪い」という割合は約半数で、危機意識は高いとはいえないし、省エネラベル「能効標識」のついた家電製品の購入経験者も3分の1ほどにとどまる。

ただ、買ったことのない人も含め9割以上は「買う気がある」と、前向きだ。瀋研究員は「以前にくらべて意識はずいぶん上がった」という。

しかし、そんな意識が実行を伴っているとは必ずしもいえない。北京や上海の朝夕の交通渋滞はその象徴だ。結局はお金が行動を左右すると冷ややかにみる向きもある。

北京は五輪などをきっかけに車通勤から鉄道に誘導しようと、地下鉄建設に取り組む。将来は総延長を世界一に延ばす構想もあるが、実現には不透明さもつきまとう。建物の省エネも力を入れ始めたところだ。

大都市はいったんインフラが出来上がってしまうと、やり直しは簡単ではない。省エネ型の都市か、それとも米国のような大量消費型か。発展著しい途上国の都市は今、その分かれ道にさしかかっている。

◆キーワード
<大都市化>
欧米に比べてアジアは人口集中による大都市化の傾向が強い。国連人口部の統計によると、05年に人口が1000万人以上だった世界20都市のうち、11都市をアジアが占める。トップは東京(首都圏)で、ムンバイ(インド)が5位、上海が7位のほか、ジャカルタ(インドネシア)、北京、ダッカ(バングラデシュ)、マニラ(フィリピン)など。15年には1000万人都市は22に増え、アジアでは広州(中国)が新たに入るとみられる。

 

2007年 2月 5日


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