現在位置 : asahi.com > 国際 > AAN ここから本文エリア

The Asahi Shimbun Asia Network
 ホーム | 一線から | コラム | アジア人記者の目 | AAN発 | 書評 | リンク | English
AAN発
脱温暖化社会へ:アジアの最前線から4

産油国:CO2の油田封印狙う


アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビの高層ビル群を抜け、車で約2時間。砂漠を貫く高速道路のわきに、銀色に鈍く輝く巨大な建物が現れた。地下から採掘した天然ガスの処理プラントだ。7本の煙突が、余剰なガスを燃やして生じた大量の二酸化炭素(CO2)を炎とともに吐き出している。

この周辺は、天然ガスとともに石油も豊富に出ていたが、今は埋蔵量が減り、吸い上げるのが難しくなった。そこで地層に水を大量に注入、その圧力で石油を地上に押し出し、採掘している。

もし水の代わりにプラントから出るCO2を地下に封じ込め、大気中に放出しないようにすれば、「温暖化防止に大いに役立てるというわけね」。国営石油会社の関連企業で環境対応の仕事に取り組むハムダ・アル・サニさん(35)は、スカーフからのぞく彫りの深い顔をほころばせた。

          *             *

中東の産油国は、温暖化防止の国際世論の高まりによって、石油の需要が抑えられるのを警戒する。温暖化防止の国際会議では毎年のようにオイルマネーが減った場合の補償を要求してきた。

昨年ごろから、かたくなな姿勢に変化が起きた。途上国で減らしたCO2を先進国が買い取り自国の削減分として計上できるクリーン開発メカニズム(CDM)の仕組みに、油田に注入するCO2も含めようという考え方が国際的に浮上したからだ。

地中などへのCO2封じ込め(CCS)は、1カ所で最低数十万トンの削減効果があるものの、コストが割高なため、ほとんど例がない。CDMなら一つの油田に億単位の金が入り、コストを差し引いても余りある。石油の増産も見込める。

さっそくサウジアラビアは昨秋、欧米の石油関係者らを集めてCCSとCDMに関するセミナーを同国で初めて開いた。ヌアイミ石油相はこう述べたという。「風力などのクリーンなエネルギーに頼るだけではCO2削減は難しい」

UAEも負けじと動き出す。アブダビ環境庁は国営石油会社にCDM関連の報告書を送付し、検討し始めているという。

          *             *

「ようやくここまでたどり着いたか」

北九州市に住む元九州工業大助教授の突田芳宏さん(59)は、感慨深げに話した。仲間の技術者らと調査や交渉を重ねてきたCCS技術が日の目を見つつあるからだ。

97年12月、京都議定書が採択された国際会議のさなか、突田さんは日本の官僚や政治家に書簡を送って訴えた。「油田への封じ込めがCO2削減に非常に有効です」。打ち返しはなかった。

石油会社に勤務した80〜90年代、アブダビで石油開発にたずさわり、どうすれば油田から一滴でも多く石油をしぼり出せるかに腐心した。水やガスの注入が一般的だったなかで、着目したのがCO2。この分野で日本企業が優れた技術を持っていることも分かった。

当時はコストが高かったが、現実的なレベルにまで来た。技術もさらに進歩している。

昨年11月、ケニアであった温暖化防止の国際会議の焦点の一つは、CCSをCDMとして認めるかどうかだった。だが、地中から漏れる恐れや100年以上に及ぶ長期間の管理のあり方などをめぐって意見が割れ、結論は先送りになった。

でも突田さんは悲観していない。「温暖化防止が急がれる今、CCSは特効薬なんだから」。日本企業と中東の橋渡し役として、砂漠の地への再訪を待ちわびている。

◆キーワード
<CCS>
「炭素回収・貯留」の英語表記の頭文字を並べたもの。火力発電所などから出るCO2を他のガスと分離し、圧縮してパイプラインなどで輸送する。封じ込め場所としては油田のほか炭鉱跡なども想定されている。日本でも新潟県や長崎県などで実験が進められ、CCSの可能性を探っているが、国内の陸上には大量のCO2を注入する場所がないため、水面下1000メートルほどの海の下の帯水層を対象に検討されている。

 

2007年 2月 6日


▼ バックナンバーへ

∧このページのトップに戻る
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。 Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.