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朝日新聞アジアネットワーク
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第4回朝日アジアフェロー・フォーラム

「アジア新政治地図と日本――ポピュリズムからバランスの時代へ」全体討論


2008年03月17日

 【司会(国分良成)】 それでは、まず、それぞれ地域のテーマから15分かそこら、20分以内、議論をして、その後、全体にいきたいと思います。もちろん全体を意識して発言していただけると、もっとありがたいと思います。

 それでは、1人3分以内ということにしてください。李さんからいきましょう。韓国、朝鮮半島についてまずいきたいと思います。

李明博大統領は全方位外交を個別課題で貫けるか?

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 【李鍾元・立教大学教授】 ありがとうございます。きょうのタイトル、ポピュリズムからバランス、この2つのキーワード、非常に的確だと思いました。それで、それぞれについて少し韓国だけではなくてアジア全般、つまり、きょうの話題の台湾、あるいは日本を含めて、共通現象としてとらえられるようなところがあるので、それについて一般的な意見も少しありますが、それは後半にまた全体の議論というのがあるということですので、まず韓国について、きょうのパク・チョルヒーさんの報告というものを土台にしながら、2点、あるいは3点。冒頭になるかと思うのですが、まず非常に大雑把な印象として、盧武鉉大統領も今やめた後に少し人気がまた出ているんですね。故郷に戻ってから、何か観光客が押し寄せて、コンビニがないとか、駐車場が足りないとか、田舎なので、そういうことですが、おそらくカーターと似ているのかもしれませんが、やめた後、時期がたてば、もう少し評価が変わるだろうというのがあります。これは大統領個人に対しても、あるいは政権に対しても。

 今はある種の選挙戦の過程で、盧武鉉政権のやったことについて、ある種、レトリックとか、政治的な言葉による評価というものが乱舞しているので、なかなか難しいのですが、おそらくもう少し時期がたって、距離を置いてパースペクティブで見ればちょっと違う評価ができるかもしれないということがあります。これはパク・チョルヒーさんも、あるいは小此木先生もおっしゃいましたけれども、盧武鉉大統領が言った言葉をすべて無視して、行った政策と行動と実際のファクトだけを見るとまた違う姿が見えるだろうということがあります。おそらくこれは韓国だけの現象なのか、あるいはポピュリズムとか、これはポピュリズムという言葉が適切かどうかというのも問題提起があるのですが、つまり、言葉と実態が乖離しているというところが、いろいろなところの政治にあらわれていることがありますので、それがまず第1点の印象であります。

 それから、細かいことをまず1つ申し上げると、グローバル・コリア、やっと韓国にも出たのだということですけれども、おそらくこれは歴史的な事実のために申し上げると、韓昇洲外相が93年に金泳三政権のときの最初の外務長官として打ち出したのが新外交だったんですね。そのときにまた多国間とか、グローバルとか、国際貢献しようといった途端に核危機が勃発したので、その後、韓昇洲さん自身も悔しさとともに回顧していますけれども、いろいろビジョンがあったけれども、彼は美しい作文を書いて、外交白書の表面に何ページか書いてあるのですが、あとは北朝鮮問題に忙殺されて何もできなかった。ですから、これは韓国の念願どおりにそうなっていくのかどうかというのが、いまだに問題としてあるかと思います。

 それから、きょうの発表でも、あるいは小此木先生のコメントでもおそらくポイントは、あるいは日本で理解がまだ少し足りないのは、私もほんとうにどこかにも書かせていただきましたが、李明博さんはある種の全方位外交ということなんです。よく見てみたり、あるいは話を聞いてみたりすると、意外と全方位外交である。今のところは言葉でバランスをとっているんですね。中国も大事、アメリカも大事だけれども、これは小此木先生もおっしゃいましたけれども、問題なのは、今、レトリックとか、経済の面ではそういうことが何となく両立可能なように見えるのだけれども、ミサイル防衛をどうするのかとか、あるいはPSI、もっと踏み込むのかどうかという判断を迫られたときには、日本はそれをしながらも、MDをしながらも日中関係を経済で関与しようとしていますけれども、韓国はまだそれほどの体力もないということなので、そのような問題がこれから増幅してくるのではないかということがあります。

歴史問題での日本のイニシアチブに賛成

 【小倉紀蔵・京都大学大学院准教授】 短くお話しさせていただきます。実利という言葉が問題であるということ、小此木先生と私、同じ考えをしております。実利という言葉が何を指しているのかというのは非常に難しい。議会との関係も、藤原先生がお話しなさいましたけれども、重要だと思います。

 それから、ある雑誌で国分先生がおっしゃっていましたけれども、中国と韓国の関係がかなり問題になってくるのではないかということに関して、私も危惧する点がちょっとあります。それから、先ほど藤原先生がおっしゃったような、今こそ日本がイニシアチブをとって、歴史問題について考えるべきだ、あるいは提言していくべきだということに非常に賛成しております。

 それに関してひと言だけ申し上げますと、先日ですか、少し前ですけれども、大佛次郎論壇賞をとりました朴裕河(パク・ユハ)さんという方が韓国にいらっしゃるのですけれども、その方とお話ししたのですけれども、かなり参っていらっしゃると。この賞をとる前も参っていたけれども、とった後も参っている。つまり、韓国の中で私の立場というのが非常に苦しいとおっしゃっていました。

 どういう本かといいますと、非常にバランスをとった形で、日本人には非常に心地よいような言葉も書いてあるわけですけれども、つまり、日本も悪いけれども、韓国も悪いというような、非常に単純化するとそういうような話なのですけれども、そういうことがまだ韓国の中で、こういうことを言って日本の賞をとって、ある程度認められ、韓国の国内でも認められるという、そういう形にならないと少し難しいのではないかなと思っております。

 以上です。

 【司会】 木宮さん、何かありますか。

韓米同盟の復元 その具体的なイメージは?

 【木宮正史・東京大学大学院准教授】 2点だけあります。1つは、失われた10年とか、要するに金大中政権と盧武鉉政権を、ハンナラ党、要するに保守の側から見ると、それを一からげにして評価をするわけですが、私はやはり日本から見た場合、もしくは外から見た場合は少し違うのではないか。金大中政権の特に外交という側面から見た場合に。その点について若干、私は韓国の議論を聞くたびに、かなり政治的な議論なので、そうなるのだろうと思いますけれども、私は非常に違和感を感じています。

 それから、第2点は、まさに米韓同盟の再定義ということを言われたのですが、日米同盟の再定義というのは、ある意味ではアジア太平洋安保として日米同盟を再定義するということなわけですけれども、韓国にとっての米韓同盟の再定義というのも、それと同じレベルで考えていいのか。一体、韓国のそういう、まさに今、李明博政権のもとで米韓同盟関係の復元ということを至上テーマにしている人たち、もしくは政権の中枢の人たちは、それをどう具体的なイメージで考えているのかということに関心を持ちました。

 以上です。

 【司会】 では、伊豆見さん。

米国と日本の必要性がかつてほどではなくなってきた

 【伊豆見元・静岡県立大学教授】 失われた10年という言葉があったからあれなのですけれども、それだけでおそらく李明博政権というのはなくて、逆にこの10年間に積み上げたものを前提にする外交になるのだろうという印象がすごくあるのですが、要するに10年間で何が変わったかと言えば、それは経済的にかなりのV字の回復を金融危機から経て大きくなった。先進国に近づいて自信ができたというのが1つありますし、中国との関係が大きく変わって、中国の位置づけが変わった。そして、北朝鮮との関係がこれだけ変わると、北朝鮮の脅威というものを相当感じなくなってきているということですね。

 だから、失われた10年と我々は言いたいのですけれども、実は相当果実に満ちた10年でもおそらくあるので、それを前提にすると、日本とアメリカの重要性、必要性が相当減っているはずです。そういう言い方をする人が結構いるけれども、だから、単にアメリカとの復元強化とか言いますけれども、よく考えてみれば米韓同盟の最も大事なところは、北朝鮮の脅威に対する防衛であり、抑止であるとすれば、北朝鮮の脅威そのものが減っているのですから、その辺での必要性が相当減っている。

 日本というのが経済的に非常に重要だったとしても、これはかなりの部分、中国に代替されている部分があるから日本も必要ない。すなわち、今の、これからの韓国、とりわけ李明博政権が実用主義であるならば、明確なのはアメリカと日本の必要性がかつてほどない、減っている。そういうことだろうと思いますので、日本を意識して何かしゃべれということならば、日本は私は寂しいなと思うという、そういうことであります。

 【司会】 そうですか。ありがとうございました。

 それから、今回、このために牧野さんがソウルから来られていますので、少し時間をとっていただきたい。

経済にしか興味を示さない李明博大統領

【牧野愛博・朝日新聞ソウル支局員】 では、簡単に申し上げます。諸先生方がおっしゃったことを前提にしてお話をしようと思うのですが、最初に李明博さんに対する評価なのですけれども、最近、南大門の焼け跡に行って少し驚いたことがあったのですが、そこにはいろいろな人が寄せ書きをしているのですけれども、そこに「2MB」という字が書いてあって、最初、意味がわからなかったので、韓国の人に聞いてみたら、これは要するに李明博さんへの批判である。2は、韓国語で「イー」と読みます。李明博さんの李の読みも同じ「イー」です。MBは明博で、李明博さんのイニシャルなんですね。要するに李明博の頭の容量は2メガバイトしかないと、そういう意味で批判を。要するに大きなメディアはまだハネムーンなので、批判をかなり避けていますけれども、ネティズンとか、底辺ではかなり批判が出るんですね。

 どこにあるのかということをいろいろ飲み屋とか、いろいろな人に聞くと、要するにあの人はやっぱり僕らと違う世界の人だと。結局、金持ちを優遇しているじゃないか。それは人事で金持ちの人たちをいっぱい優遇したから、そういう批判が出るのですけれども、そういうことから振り返って、今の李明博政権の政策がどうなっていくかということを考えると、やっていることは小泉さんとわりと似ているわけですよね。規制緩和だとか、外資の呼び込みをやってパイを増やしましょうと。なかなか底辺までお金が行き渡らないのですけれども、全体のパイを増やせば、下が受け取るお金もたくさん増えるでしょう。それが7%成長だということになるのですけれども、それを考えると、一時的に富みの偏在はさらにひどくなると思いますから、また批判が出ると思うんですね。

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 これは、次に4月9日に総選挙があって、今、ハンナラ党が大体改選299で、目標は180と言っています。統合民主党はちょっと元気になってきて、昔は80と言っていたのが、最近、100といって数字を挙げているのですけれども、このあたりで李明博さんの上がり目なのか、下がり目なのかということが出てくるのではないかなと思います。

 それから、先ほどから皆さんよく均等外交ということをおっしゃっているのですが、私も李明博さんの外交というのはどういうことなんですかとよくいろいろな人に聞くのですけれども、李明博さんのブレーンの人に言わせると、完全オフレコで聞いている話なのであまり記事にはできていないのですけれども、要するにこの人は経済しか興味がない。例えばエピソードがあって、李相得(イ・サンドク)さんというお兄さんが1月14日から特使団で日本にいらっしゃったのですけれども、その報告を李明博さんにしているときに、李明博さんはほとんど関心を示さなかったと。唯一、急に身を乗り出して聞いたところがあって、それは何かというと、対日貿易の赤字の解消について話したところだったと。彼の頭の中には経済が非常にあるので、経済面が非常にうまくいっているときはいいのですけれども、ただし、FTAにしても、対日貿易の赤字の縮小についても明確な特効薬がないので、大丈夫なのかなという気がします。

 それから、李明博さんは候補者の時代にどこかの講演でおっしゃったそうなのですけれども、自分としては外交は、アメリカと中国、ロシア、日本というのがあるわけですけれども、4強外交というのですが、自分はアメリカが5で、中国と日本が2で、ロシアが1ぐらいがちょうどいいのではないかと思っていると。講演の後の記者団とのやりとりの中でオフレコで言った話だと思うのですけれども、そういうふうに考えていたそうなんですね。

 ただし、中国はすごく今プレッシャーをかけていて、例えば大統領就任演説のときに李明博さんは等しく、日本、中国、ロシアとの関係も強化すると言ったのですけれども、これに中国がクレームをつけていて、何で日本の後なんだと。李明博さんは「等しく」って、入っているではないですかと言うんですけれども、納得しないわけですよね。それとか、大統領になってからの会う順番、大使と会う順番が後だとか、順番が中国のほうが後だとか、そういうことに一々文句をつけている。それはやっぱり盧武鉉政権になって非常に大陸性国家だということを言っていたのが、またもとに戻りそうになっているので非常に危機感を覚えていると思うんですね。

 そこのポイントがあるので、先ほどパク先生がおっしゃったように、中国に対して経済的なメリットを非常に感じているので、李明博さんはそこで腰がぶれるんですね。アメリカとはうまくやっていきたい。それは自分たちを支えているブレーンが非常に米国を重視する人々ばかりですから、10年間、仕事がなかった人たちがはりきっているので、アメリカと一緒にやりたいのですけれども、よく考えると中国も怖いので、ここはやっぱりぶれるんだと思うんですね。

 それからあと、すみません、長くなって。肝心の安全保障がどうなるのかということなのですけれども、基本的にはアメリカと一緒にやっていきますということしかないんですね。「非核・3000」も、結局、3,000ドルにしますよということはいいのですけれども、非核化と社会の開放が前提ですから、その前はどうなるんですかということを盛んに僕らは取材するのですけれども、韓国にいる外交団も同じ取材をかけていて、その外交団の人から教えてもらったのですけれども、その人が韓国政府に聞いたところでは、いや、あれは大統領就任演説しかない。今のところ、それ以外はないとはっきり言われて、非核化に持っていくまでは何も決まっていないんですね。

 北朝鮮が李明博さんを名指しで批判しないのも、盧武鉉さんのときは請求すれば必ずもらえるという自信があったから、彼らは平気でやっていたわけですね。李明博さんがどう出るかわからないので、ああいうプライドの高い国は、断られるかもしれない。でも、もらえるかもしれないという悩みがあって、それではっきり言わないのではないかということを言う人が何人かいました。

 じゃあ、肝心のアメリカ、6者が動けば、李明博さんの対北朝鮮政策だとか、いろいろな外交に視野が大きく広がってくるのだと思うんですけれども、先週、ジュネーブに行って金桂寛さんにぶら下がりをしたときに思ったのですけれども、北朝鮮の態度というのは非常にかたいわけですね。核問題の申告という問題が非常に今ポイントになっていて、ウラニウムと核拡散活動を認めるかどうかということだったのですが、北朝鮮のこれまでのビヘイヴィアからして、降りるときはだんだん言葉をあいまいにしたり、言わなくなったりするんですけれども、金桂寛さん、今回は逆に強く言っているんですね。ウラニウムは過去にもなくて、今もなくて、未来もないんだと。過去もないというふうに踏み込んで言ったので、これは容易に降りられないのではないかなと思います。

 ですから、非常に厳しい状況に今ある。今後、中国のプレッシャーもあるし、北朝鮮でもうまくいかないし、しかも、もう一つ言わせていただくと、今度の総選挙で韓日議連のメンバーも相当変わります。権哲賢(コン・チョルヒョン)さんだとか、李成權(イ・ソンゴン)さんとか、日本語ができる人もかなりかわりましたから、そういう議員外交のパイプも細るでしょうし、日韓もそういう意味で、なかなか読めない展開が続いていくのではないかなと思います。

 【司会】 あとお1人ぐらいで、若宮さん、何かありますか。いいですか。

「福田政権」を前提にして落ち着いている日中、日韓だが…

 【若宮啓文・朝日新聞論説主幹】 ありがとうございます。少し突飛なことかもしれませんけれども、日韓にせよ、日中にせよ、福田政権という前提で何となく落ち着いているというのが皆さんの評価だと思うのだけれども、一体福田さんがいつまで続くのだろうという不安がものすごくあると思うんですね。中国から見ても、韓国から見てもね。これはわからないけれども、総選挙をやればかなりの確率で危ないかもしれないし、今の状況だと、これだと総選挙ができないから、その前に取っかえてしまえという話が出てきているわけですよね。日銀総裁ですら決められないというような。

 仮にこれが麻生さんになったりすると、いろいろ前科もあるし、韓国の空気も、あの特異なキャラでいったときにどうなのかなという不安が若干あるのと、それともう一つだけ、日韓で言うと、きょうたまたま読売新聞を読んでいたら、韓流ブームというのは、日本ではドラマの輸入などはうんと落ちちゃって、実は今、日流ブームで、韓国にアニメ、漫画のたぐいがものすごく日本から行っていて席巻している。実は麻生太郎というのは、そのことを売りにしている人で、この人が出てきたときに余計、日本の文化侵略というような話が出ないのかというような不安をふとそれを読みながら思ったものですから、全くつまらない話でしたが。

対北朝鮮は日米韓で結束して頑張るしかない

 【小此木政夫・慶応義塾大学教授】 忘れたことを一言だけ申し上げますが、結局、北朝鮮政策ですが、アメリカ訪問、日本訪問の後まで動かないし、それから、金桂寛の話が出ましたが、北がそういうかたい態度であるということであれば、余計そうなってくるわけですから、そうすると、日本外交、あるいは韓国外交という観点からすると、結局、日米韓でしばらく結束して、厳しい姿勢で、要するに頑張っていくしかない。北の態度変化を促していこうという方向に行くのではないかと思うんですね。そのあたり、それでほんとうに北朝鮮を動かせるかどうかというのが次の見どころということなのではないかと思います。

【司会】 これからお話しする台湾でも、同じようにアメリカとの関係がかなり崩れたわけでありまして、自分の主体性を強調することで、民主主義でいいではないかということでやってきたわけですけれども、それが今やっぱり、アメリカとの関係をもう一度、大事だという話に、まあ、同じような形になってきたのだけれども、台湾のことをこれから少しやりたいと思うのですけれども、15分ぐらいでも。

 まず、論座の薬師寺さん。この間、論座で台湾の大特集をやっておりますので、ずいぶんインタビューされてきていますので、少しその辺から。

台湾要人のインタビュー特集をして感じたことは

 【薬師寺克行・論座編集長】 いきなり、にわか台湾通に発言しろと言われても困るのですけれども、宣伝も兼ねてお話をいたしますと、台湾、朝日新聞、どうも冷たいのではないかということで特集をしたわけではございません。趣旨は、台湾を利用して反日キャンペーンをやる論座のライバル誌をギャフンと言わせようというのが底にあったわけですが、やってみると、極めて生産性の高い、まずインタビューを申し込むと90%オーケーしてくれました。もちろん総統候補とか、現職の総統は特派員の人が一生懸命やっていますから、それはやらないで、副首相以下、閣僚級七、八人、それから、2つの政党の幹部、すべて引き受けてくれたほかに、NSCの幹部もオフレコで中国との情報合戦など克明に話をしてくれまして、通訳の人が終わった後で、あの人はここまで国家機密をしゃべっていいのかというぐらい、私もおもしろかったです。

 先ほど谷野さんにご紹介いただいたような、両党の空気、世論の空気、まさにそのとおりだと思いまして、国民党が政権をとれば中国と統一する、だから、国民党はけしからん。民進党に中国はめちゃくちゃな圧力をかけて、こんな中国はけしからんという「諸君!」、「正論」、「産経」のような論調というのは非常に表面的で一面的だということは実証できたのでないか。まさに向こうの人もそれが言いたくて、私がどうして多様な日本のメディアと接触をして、多様な発信を日本であなたたちはしないんですかと聞くと、「諸君!」や「正論」しか来ないんですよと言うから、そういう意味では、いいことができたかなと思います。これが1つ。

 もう一つは、そうは言っても、私は別に日中関係が大事でないとはこれっぽっちも思っていないのですが、やはり中国というのはすごい国だなと。日中関係を取材したり、中国の大使館の関係者の人とお会いする、あるいは中国の政府の人とお会いして感じたのですが、台湾という人たちの目を通して聞くと、台湾の学者には国際会議を北京で開くときもビザを出さないとか、あるいは中国に進出した大企業の幹部に中国政府が圧力をかけて、台湾の大きな新聞に、1ページ広告で民進党支持を大広告をさせるとか、そのほか数千人の――これはあまり言ってはいけないんでしょうけれども、数千人の諜報機関の人間が台北以下いっぱいいるとか、やっていることはほかにもいっぱいありました。特に谷野さんがおっしゃった外交空間を狭めるということについては、ものすごいことをやっているというのは、外交部のいろいろな人にお会いしたら、切実な問題として話されていました。

 これは日本外務省も含めて対応は難しいと思いますが、聞くと、閣僚クラスが結構頻繁に日本に来ているんですね。この前もインタビューしたある人がこっそり日本に来ていたとかというのを後で聞いたのですけれども、もちろん公に外務省や経産省を訪問して何か話をすることはできませんので、どこで何をしているか全然わからないのですけれども、特に安全保障の問題では、わりと高官が頻繁に往来しているようですから、外交空間というものが表向きでは圧力をかけられて小さくなっているけれども、あの台湾という国はそれなりにいろいろな努力をしているというのが多少目に見えておもしろかったなということであります。にわか勉強で失礼いたしました。

【司会】 それでは、いかがですか。國廣さん、何かございますか。よろしいですか。

日本の政治にも早くバランスを取り戻さないと…

 【國廣道彦・元駐中国大使】 私はバランスという問題、つくづく、今、若宮さんが私より先におっしゃったんですけれども、バランスがないのは日本だなと。ほんとうにねじれだけあって、いかにもバランスが期待できない国になっているということをつくづくきょうのお話を聞いていて心配ですね。ここにずっと朝日新聞の方がこんなにたくさんおられますから、こんなことではいけないというのをもっとたくさん書いてください。何とか早く日本の政治にもバランスを取り戻したいものだと。

【司会】 ありがとうございます。

 それでは、佐藤さん、五十川さんもあれですか。どうぞ。

馬英九が勝っても中台関係はそれほど進まない

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 【五十川倫義・朝日新聞論説委員】 では、少しだけ、さっきの谷野さんのお話に同調いたしました。馬英九が勝ってもそんなに中台は進まないのかなという気はしているんですね。それはやはり馬英九のスタンス、天安門事件も批判しておりますし、そういう民主という立場からもできないし、やっぱり台湾人意識がここまで高まっているからには、そう動けないと思うのであります。

 それと、中国の方と何人か話したときに、少しおもしろいなと思ったのですが、多くの方はよかった、よかったと。馬英九、国民党になってよかったと。これまでみたいにヒヤヒヤすることはなくなるということで、独立のいろいろな問題を突きつけられることはないので、よかったというのがあるんだけれども、軍の関係の人が言っていておもしろいなと思ったのは、謝さんのほうがよかったと。馬英九よりも謝長廷のほうがいいのではないかと言うんですね。なぜかというと、中国からすると、要するに民進党のパイプができるということなんですよ。

 つまり、これまで民進党とは話ができなかったのだけれども、謝長廷というのはわりと実務的であり、ある程度は協調ができる。それがトップに出てきた場合、初めて民進党と話ができるチャンスができるということで、こっちが出てきたほうが馬英九よりもいいのではないかというのがあっておもしろいなと思ったんですね。そういう意味からすると、民進党が野に下ってしまうということは、彼はまた今度、国民党に対していろいろ揺さぶってくると思いますし、中国としては民進党と話すパイプはまたできないということで、しばらくそういう状況が続いてしまうわけですね。そうなってしまうと、ある意味では中国もいいチャンスをなくしたのかなという気もするわけですね。

 そういうことも考えてみると、馬英九が勝ったとしても、中台の関係というのはそんなには、経済はいろいろ進むと思いますけれども、中台関係という意味では政治のほうではそんな進まないかなという気もします。

 以上です。

【司会】 全体のバランスという点では、むしろ謝長廷が勝ったほうが現状維持が進むというね。

【五十川】 そうですね。どうしても民進党というのは、これだけ台湾人意識が強い中で、民進党という力はやっぱり、これはどうしても台湾の中に存在していくわけですね。大きな力を持っているわけですよ。だから、中国が台湾とうまくやろうと思うと、国民党だけでは絶対無理です。国民党だけうまくやっていって、台湾をコントロールというのは多分無理だと思うんですね。だから、どこかで民進党とのパイプをつくらなければいけない。それが謝長廷が出てきた場合、実はいいチャンスだったかもわからないですね。それを逃してしまう。いい面も、中国からすればいいチャンスはあるのだけれども、そういうこともある。

【司会】 では、佐藤さん。

馬英九氏のパーソナリティーの弱さに懸念が

【佐藤幸人・アジア経済研究所主任研究員】 私は政治外交が専門ではないので、何を発言していいかというのはなかなか悩ましいのですけれども、でも、一方で台湾専門家なので、きょうぐらい発言しておかないと、発言する機会もなかなかないので。すみません、そういうわけで、2つか3つ、感想的な話ですけれども。 1つ、盧武鉉政権の評価というのは、今後、しばらく時間が過ぎると定まっていくだろうというお話があったと思うんですけれども、陳水扁政権についてもおそらくそうだろうと思います。今はほんとうに陳水扁に対する評価は底みたいな状態だと思いますけれども、決して陳水扁って、初めからそんなガチガチの独立派として総統になったわけではなくて、初めは中間路線とかいって、一応、柔軟な姿勢も出していたのですけれども、それが行き詰まったのはむしろ中国側のあれで、先ほどの発言はちょっと、中国側が陳水扁を追い詰めたところがあるのに何を言っているのかなというところも感じなくはないのですけれども。

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 それから、経済的に見ても何にもしなかったわけではないと私は思っております。それからあと、閣内というわけではないのですけれども、馬陣営の選挙後というのは非常に不透明だというところがあるというのは、一応、今のうちに了解していたほうがいいと思うのです。国民党も、今はどちらかというと中間的な、かなり緑っぽいという表現が通じるかどうかわかりませんが、要するに民進党とも比較的近いような考え方の人を前面に出して、馬さんもそういう発言をすることで中間分を取り込んでいることで、馬英九は優勢に立っているわけですけれども、一方で、今、選挙のために一生懸命我慢しているディープブルーの人たちがいるわけで、選挙後、これ、馬英九さんが勝った場合には、この人たちがかなり前面に出てくる可能性は高くて、彼らは非常に強い人たちですから、そこで谷野大使が言われたような馬さんのパーソナリティーの弱さというのが非常に問題になってくるかなと思います。馬さんの弱さというのは、私、2003年のSARSのときに台北にいましたから、馬市長の弱さというのはつくづく目の当たりにしているわけでありまして、大変懸念しているわけです。

 それからあと、これは全体的なところにかかわるかと思うのですけれども、初めのパクさんのお話にあったと思うのですが、経済格差の問題ですね。これはある意味、だれが政権にいても、多分、2000年代は進まざるを得なかった問題ですが、とりあえずそのとき政権にいた人たちが、今、責められているという状況だと思うのです。あと、さらにここへ来てエネルギー問題が出てきて、アメリカの減速というより、かなり減速という表現では済まなくなりつつあると思いますけれども、経済問題が非常に深刻さを増してきている中で、少し色合いの違う政権になるということで、そこの共通する問題に対して違う色合いの政権というところがどういう意味を持ってくるのかなというのが興味深いと思っております。

【司会】 ありがとうございました。 ほかに何かありますか。台湾。じゃあ、簡単にお願いします。これを最後にして全体にいきたいと思います。竹田さん。

治安・国防面で中台の人的交流は密接だ

【竹田いさみ・獨協大学教授】 成田と台北の間にエバーグリーン航空が飛んでいますけれども、あそこのエバーに乗ると、新聞をくださいと言っても産経新聞が来るんですね。次に読売新聞が来まして、日経が来まして、朝日が来ることはないんですね。というのは、朝日新聞を搭載していないんですよ、エバーグリーンは。ですから、これは政治的なチョイスで、ですから、産経新聞が最初に来ます。いつも毎回試しますから。でも、おそらく来月から朝日を搭載するようになるのであろうと。というのは、編集長のお話を伺いながら、楽しみにして、次、エバーグリーンに乗りたいと思います。

 2つ目、私は海の問題、マラッカ海峡の海賊とか、海洋問題をやっているのですが、その意味で日本の海上保安庁ともおつき合いがありますし、台湾の海岸巡防署とも毎年おつき合いがあるんですね。それでつくづく思うのは、実は治安と国防の面で中国と台湾は非常に密接だなというのを私は常々感じています。台湾の海岸巡防署、コーストガードですが、トップまで全部中国側のカウンターパートに会っていますから、もちろん会うときは全部制服を脱いで私服を着て、ほぼ毎年定期会議を開いていますから。日本は非常に生真面目なので、日台関係というのは課長級以上だめなんですね。課長以下の方々が大体出張もできる。お忍びでとかですね。

 実際、私が見る限り、人的交流で見ると、両岸関係の、少なくとも海岸巡防署というコーストガードレベルにおいては、台湾と中国の関係はものすごく密接です。残念ながら、日本と台湾の関係は非常に細いですね。台湾はもっと協力してパイプを太くしたいと思っているのですけれども、日本側がいつも非常に慎重でして、ですから、非常にバランスを欠いているなと。ですから、日本はもっと踏み込んで、平気な顔をして局長クラスの方が、いやあ、たまたま会いましたとか、会議でたまたま会っちゃったみたいな感じで会えばいいわけですよね。中台は全部そうやっていますから。中台の会議というのを2つの会議場で同時並行にやって、レセプションは一緒にやる。ですから、パーテーションを除くと、じゅうたんが一緒になるわけですから、そういうような仕掛けでしょっちゅうやる。

 以上です。

【司会】  ありがとうございました。

 さて、この辺から少し全体に広げてラップアップしていきたいと思うのですけれども、これまでいろいろな議論が出てきて、1つは韓国にしろ、台湾にしろ、一種のプラグマティズムというか、実用主義のような、こういう時代に入りつつあるという1つの傾向があって、それは裏返せば理念の時代は終わったのかどうか。終わったとは言えないと思いますけれども、終わったのかどうかという問題になるでしょうし、あるいはアイデンティティとか、主体性とか、個性とか、いわば国家的――これは主権の問題もかかわるかもしれませんけれども、国家、こういうものの相対化というのが起こっているのかどうかというテーマにもつながってくるわけでありますけれども。

 同時に、強力なリーダーがもう出現する可能性はないのかどうかというような問題とか、あるいは日本はどうなのかという問題提起が必ずここにはあるわけで、國廣さんは非常にペシミスティックにお話がありましたけれども、ほんとうにバランスがないのかどうかということもあるでしょうし、藤原さんの問題提起した、つまり、これは背後に何があってこういうことになってくるのかという原動力、ここのところを分析していかないと、おそらく共通項がこの地域にあるのか、同時代性としてあるのかどうか。その背後にはやっぱり、外交と世論の関係性とか、こういうこともおそらく、同時にやっぱりこのグローバリゼーションとか、デモクラシーとか、そういうものの広がりの中でこういうことが起こっているということが少し考えられるわけですけれども、その辺、少し問題を広げて議論をしていきたいと思います。

 それでは、まず最初に、天児さんがもう待っていますので。 珍しく静かでしたので。でも、3分で。

台湾を経済面で孤立させない方法を日本は考えるべきだ

【天児慧・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科長】 どうもありがとうございました。2つほど話をしたいのですが、1つは、東アジア共同体絡みで台湾の問題と韓国の問題に少し触れたいのです。台湾について谷野さんが、(中国は)東アジア共同体から台湾を徹底的に排除する、つまり、空間を狭めるという、その話をされたのですが、私は逆に東アジア共同体を経済のレベルに明確に限定して、そして台湾をどうやって取り込むかというほうが戦略的に意味があると思います。もちろん、中国はそれに対して非常に警戒をしているのですが、台湾をあまりアジアの中で孤立させるということは非常に問題があると思うんですね。

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私はこの間、もう5年ぐらい前ですか、NIRAでプロジェクトがありまして、そこで東アジア経済共同体構想というテーマで、それで中国と韓国と香港と日本と台湾が、台湾で会議をやったんです。私、そこでかなりその話をしました。中国側には少し嫌がられたのですけれども、経済ということに限定して、少なくとも台湾をどういうふうに孤立化させないかということを日本としては考えるべきではないかと思います。

 それから、パクさんの話と関連させると、韓国は今まで共同体の議論をするときは日中韓しか見ていないですよね。ごく最近というか、先々週だったと思いますが、ベトナムに行きまして、ベトナムでいろいろ活動していて、韓国のプレゼンスの大きさといいますか、それをすごく感じたんですね。これは実際にハノイに駐在している韓国人の数と日本人は、もう韓国人が超えているし、サムソンのいろいろな宣伝がバンバン出ているし、60階の建物を韓国資本で建てるとか、そういうような現実を見ていると、韓国自身の東アジア共同体の議論も、もうおそらく日中韓というレベルを超えていかなければいけないし、いきつつあるのではないか。だから、多分、東アジア共同体の議論は、今は少ししぼんでいますが、いろいろな大事な含みがこの中にあるので、もう1回議論したいなと思っています。

 それから、外交と世論の話、私もこの話を出そうかと思っていたら、藤原さんがいいタイミングでこれを出されたので、それに関連して話をさせてもらいますと、パクさんが先ほど李明博政権に対して過剰な期待は困るという話で、それで、特に歴史の問題で、韓国は歴史の問題に触れない。しかし、日本から投げられたボールとか、あるいは火の粉に対してはどうするかという話がありましたよね。そのときに、私はやっぱり、今のアジアを取り巻く議論の中で、政府レベルで非常に冷静にバランスをとって云々という議論は、確かに流れとしてはあるんだけれども、同時にその世論自体がひとり歩きする、あるいは世論を支えるいろいろな国民の感情というのがひとり歩きしてしまっているという状況があるわけですよね。

 これは今後おそらく常態として考えるべきだと。抑えたらどうにかなるというようなものではなくて、間違いなく何かが起こる。今度の食品問題だって、多分、そういう側面がかなり強いわけで、それは間違いなく起こる。そういう操作できない世論というものにどう対応するのかという議論を、これからもう少しやっていかなければいけないなと思うんですね。

 もうこれで終わりますけれども、それとの関連で、藤原さんが最後に歴史問題にあえて触れて、今だからこそ歴史を語れと。これは発想としては非常にいいんですよ。賛成なんですよ。ところが、今、日本が歴史を語ると、また日本の国内で歴史論争になってしまうんです。歴史論争になって、ぐちゃぐちゃになって、そしてぐちゃぐちゃの中のある一面だけが中国に伝わり、韓国に伝わり、日本はまたどうだこうだという議論になっていく可能性があるんですね。だから、そこを予測して、それを超える何か日本の中で、そこまで読み込んだ上での何か提起ができるかどうか。それを出さないと非常に危険な問題提起なんですね。

【司会】 おっしゃるとおりです。

APECの活性化をどうするのか

【國廣】 天児先生の歴史問題についての考え方、私もそのとおりだと。ちょっと発言したかったのは、東アジア共同体、何か日本人はすぐ昔のことを忘れて初物食いをしたがるのだと思うんですね。私が現役だったころは、一生懸命APECの話をしたわけですよ。いつの間にかAPECは忘れてしまって、東アジア共同体と言っているわけ。APECなら対応ができるわけです。経済問題、アメリカとの心配もないわけ。もっと日本政府というのはAPECの活性化というのをどうするかというのをまず考えて、東アジア共同体がはやらないなら、もうはやらないでいいんですよ。APECは自分で旗を担いで回ったんですよ。オーストラリアと日本がつくったんですよ。それをもうあれは昔のこととしているのが私は大変気に食わないですね。それをちょっと一言。

【司会】 そうすると、まず、この議論だったら山澤さんが先ですね。ちょうどぴったり来ますね。

台湾の孤立化は「東アジア共同体」の勢いを削ぐことに

【山澤逸平・前国際大学学長】 東アジア共同体とAPECと台湾ということについて発言したいと思います。中国は東アジア共同体というと――ASEAN+3が今のところまだ構想ですが――それがちゃんと合意に達したら、おそらくその段階で香港ももちろん入れるということを言うだろうと思います。しかし、私ども、初めは谷野さんが言われたように、台湾を入れるということは、おそらく中国のほうから言わないだろう。今までの台湾の封じ込めの政策としてですね。そういうふうに考えていたんです。実は先週、台湾に参りまして、台湾の大学でAPECと東アジア共同体ということについて話をして、その後で台湾経済研究所で、私は昔からの仲間がいるものですから、そこでエキスパートだけのインフォーマルな話し合いをもったんです。

 と申しますのは、台湾の企業自体は、もう東アジアの中でのグローバル化の中にも参加しているし、中国にも投資しているし、これがまたASEANに行ってという形で、もう中に入っているわけですね。今までのところはあまり台湾の企業が、台湾の国籍ということで差別されることはないようですが、もし東アジア共同体ということが制度化されていくと、そういう問題が出てくるかもしれない。そういうことになった場合には、せっかく東アジア共同体というのを、私は経済的な必然だと思っているものですから、それが大変勢いをそがれることになる。これは台湾の企業だけの問題ではなくて、アジアにとっても、日本にとっても影響が出てくると思う。

 それを何とか避ける必要があるだろうということを提案しまして、中国がそういうのに対してどうなるかということを言いましたら、台湾経済研究所の連中は、いや、それは中国はむしろ、それを言うだろう。台湾も一緒に入れるだろう。しかし、その場合には一国二制度という形でもって入れてくるだろうから、それは台湾としては受けられないんだ。何かほかのやり方で、例えば日本が積極的に推して台湾を入れてくれるというふうな形になれば大変いいわけだけれどもという言葉が返ってきました。私もまだ十分に詰まってはいないのですが、その意味では、天児さんの言うのに若干近いかなと思います。

【司会】 それでは、添谷さん、お願いします。

韓国が重要であるというコンセンサスができれば

【添谷芳秀・慶應義塾大学東アジア研究所長】 ありがとうございます。先ほど国分学部長から目配せをちょうだいしまして、ミドルパワーを言えというような視線を感じたのですが、それはともかく、藤原さんにはおしかりを受けそうですが、夢を語ってみたいと思います。いかに問題があって難しいかという話、例えば日韓関係、それから、台湾問題もそうですが、さまざまなご意見を私も興味深く勉強させていただいたわけですが、夢を語らせていただくと、私はこれは理論的には可能な夢だと思っていまして、ただ、現実が難しいことはもちろん皆さんおっしゃるとおり。ただ、理論的に可能であれば、これは学者もそこで貢献をできるのだろうと思いますし、あるいはマスメディアの役割というものも重要だろうと思うし、それが政治的リーダーシップにつながっていけば、動き出す可能性はあるわけですね。

 そんなことを申し上げたいのですが、まず、日韓関係で申しますと、韓国の今の李明博政権の新しいアジェンダというものがかなりの程度、他力本願的な側面を持っているということは、ご指摘いただいたとおりなのだろうと私も思います。おそらく韓国の方もさまざまにそれは認識なさっているのだろうと思うんですね。そういった韓国に何か救いの手を伸べると言うと若干語弊もあるし、正しい言い方ではないけれども、協力の手を差し伸べられる国があるとしたら、私はそれは何をおいても日本なのだろうと思うんですね。別の言い方をすれば、李明博政権がやろうとしていることとの外交目的での親和性を最も有している国は、私は実は日本なのではないかと思うんです。

 そこで、ですから、韓国との協力を同じ目線で、あるいは同じコンセプトでさまざまにプログラム化していくというような働きかけを、例えば日本側からできれば、これは韓国の利益でもあるし、また、日本の利益でもあるという、そういう領域が私は明らかにあると思うんですね。その場合に、まあ、私、パクさんと二、三年、日韓ビジョングループという勝手なグループをつくって、先日も慶應でそのシンポジウムをさせていただきましたけれども、やはりそういった場で、少なくとも我々知識人の間で確認をできることというのは、そういうベースが日韓には明らかにあって、それは潜在力として備わっているものを顕在化できていないというところで、日本と韓国は大いに損をしているという、そういう認識共同体の合意は明らかに、一部ですけれども、でき上がっている。

 そこで申し上げる最大のネックは、先ほどから何度も問題になっている歴史問題であって、パクさんがサラッときょうのレジュメに書いていましたけれども、歴史問題をいかに、解決という言葉を使わずに管理するのかという、そういう発想が韓国の側から出てきているというのは、日本側も留意すべきことなのだろうと思います。

 ただ、ここで難しいのは、そういった土台を引っくり返すことも極めて簡単だということであって、それを引っくり返さないための原点はどこにあるかというと、私は、日本から見て、韓国がどういうふうに重要なのかというところの認識をまず日本側が持つということが大事なのだろうと思っていて、韓国が重要であるというコンセンサスができれば、おのずと歴史問題に対する対応もそれなりのものにおさまっていくはずなわけですね。ただ、韓国を全く眼中に入れないような発想でいると、当然、いわゆる難しい問題をわざと持ち上げて土台を崩すというようなことも、いとも簡単に起きてしまうという状況が日韓にはあるのだろうと思います。

 台湾に関して1つだけ、1分で夢を語らせていただくと、これは機会があるたびに、私、最近、中国の方に申し上げるようにしていて、特に若い学生の方などがいると積極的に言うのですが、現在の中国の台湾政策の原点に、いわゆる独立に台湾が動いた場合に武力行使を辞さないということがあるのは、もちろんご承知のとおりで、私が問題提起として若干刺激的に申し上げているのは、それを前提にしているがゆえに、今現在の、例えば台湾の人たちのいつも、のど元を締められているような感覚とか、あるいは問題の難しさというか、圧迫感というようなものがあるのではないか。それで、例えば今回のチベット問題でも、図らずも示されたわけですが、例えば台湾問題が中国の国内問題であるというように、中国の立場に立ったとしても、その国内問題の解決に武力を使うというのはどう考えてもアナクロニズムなわけですね。

 実際にそういう行動に中国が出た場合に、多分、相当激しい国際的な、もちろん批判も招くし、事実上、孤立する。天安門事件の比ではない状況になるのだろうと。もし現実に起きればですね。と思うんですね。これを言うと、中国の人にいつもおしかりを受けて、あるところでは、おまえはクレイジーだと言われたし、昨年、中国のあるシンポジウムで言ったときには、軍関係の人にとことんやっつけられましたけれども、中国はそれはもうギブンにしているわけで、まあ、中国だけではなくて、国際社会がもうギブンにしているようなところがあって、その武力行使をするというところが少しほどけてきた場合に、台湾問題の展開というのはどういうものがあるのだろうかというのが、私は十分に、少なくとも知的エクササイズはする価値があるのだろうと思っているんです。

 そうすると、台湾は独立してしまうというのが中国の方の、まあまあ、信じて疑わない立論なわけですが、私はそうでもないのではないかというような感じがして、例えばそういったところでの台湾の、まあ、世論調査でやるのか何かわかりませんが、要するに武力行使が当たり前だという前提を崩すようなアプローチというものを、最低限知的には考えてみるところから何か台湾問題の新しい展望みたいなものが開けるのではないか。これは私は理論的にそうだろうなと思うのですが、そんなところを夢として問題提起させていただければと思いました。

【司会】 いかがでしょうか。最後に一言、やはり報告者に。パクさん、それから、谷野さん。

うるさい3人組―政治家、メディア、学者―をどう抑えるか

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【パク】 どうもありがとうございます。幾つかの点について簡単に申し上げます。小此木先生がおっしゃった韓国の主体性の問題、対北の問題に関する、これは非常に大きな問題になると思います。というのは、李明博さんの外交安保のブレーンを見ると、もう完全に(前政権から)180度変わったという感じですね。前は国内PHDで、北朝鮮専門家で、民族主義的な学生運動の主流が入り、今回はアメリカ留学組で、グローバルで、非常に国際主義畑(の人たち)が入った。それはそれなりにいいところもあるのですが、ただ、北朝鮮とのパイプをつくったり、その問題をやりとりするぐらいの能力とネットワークがない人が入っているので、そこで韓国が北朝鮮とのやりとり、非常に狭いところを歩かなければならないので、独自の交渉チャネルとか、それがなかったときにどうするのという、その主体性と独自性の問題は、後でガタガタするかもしれません。それは全く私も同感でございます。

 それで、藤原先生がおっしゃった、日本がこの時期を活用してイニシアチブをとって、過去問題を解決すべきだというのは全く同じ意見です。李明博さんが過去のことをそんなに問わないという前提は――彼の言ったことの後半は――日本が成熟した姿勢をとって対応するだろうという前提があったのです。そこを大事にしなければ。後ろのところを読まなくて、前のところだけを言って、いや、そうだという感じで乗っていっているので、そこは注意しなければならないし、その面では私はうるさい3人組を管理しなければならないと。政治家、メディア、学者、これをどのように抑えるか。抑えるというか、交流して意識共有、戦略共有をするのかということ。そうすれば、日韓関係も違う道が開ける可能性があると思います。

 木宮先生がおっしゃった日米同盟のような再定義が韓国に当てはまるかということなのですけれども、おっしゃっているところは、よくわかります。しかし、いわゆる韓国がアメリカだけに依存しているのではなくて、コリアナイゼーショナル・コリアン・ディフェンス、韓国の防衛は韓国が担うということは今からもどんどん進むと思います。ただ、日本がやったように地域に合体とか、アジア・太平洋に広げるのはちょっと気を使うかもしれません。逆にそれを飛び越して、グローバルに飛んでいく可能性は非常に高いのではないかと私は個人的に思っております。

 それで、若宮主幹がおっしゃった、明日になるとどうするのという、私も非常に懸念をしているところです。それで韓国の外交通商部に冗談として、麻生太郎の漫画を1つつくったほうがいいんじゃないのという話もしたことがあるのですが、少なくとも外相になってからは、失言はそんなになかったと。しかし、ある人によれば、彼は3メートル範囲に入ったら非常にいい人で、3メートルから離れると大変な人なので、彼をいかにして3メートルの中に入れるかということを今いろいろ模索中でございます。

 最後に、天児先生がおっしゃった共同体で、韓国は日中韓にあまりにも集中しているのではないか。私もそう思っているんです。実際には、五十川先生もおっしゃったのですけれども、金泳三時代、もっとグローバルなことを考えて、しかし、こういう北の問題とかあると、その後、金大中大統領が「東アジア」という言葉でまとめて、盧武鉉さんに来ると東北アジアで日中韓だけ、最後には結局、南北だけやったので、どんどん縮んでいるという感じがしていて、これがどのように拡大するかということが今の政権の大きな課題です。だから、グローバル・コリアという言葉を使っているのは、そんなに縮んだらどうしようもない。やっぱり広げて見るべきだという、そのような発想の転換が非常にあったのではと思います。

 最後に、天児先生のことなんですけれども、世論、非常に大事で、これはやっぱり日本と韓国とともに努力しなければならないところなのですけれども、私はこの被害者意識とか、自信のなさというのは韓国だけのものかと思ったら、このごろの議論を見るとそうでもない。日本も被害者意識とか、自信のなさがかなりあるのではないか。この前のある大きな国際会議で、日本の専門家がみんなに言われたのは、「日本はちゃんと自信を持つべきだ。失われた10年と言っても、世界第2位の経済大国が何でそんなに自信がないのか」と。やっぱり、自信を持って、被害者意識を超えながらつき合わなければならないと思います。

 以上です。

【司会】 谷野さん、最後に何か一言。短めにお願いします。

中国の関心は「歴史」から「台湾」「日台関係」に移ってきている

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【谷野】 一言ではなくて二言、三言、時計を見ながらやりますから。東アジア共同体、もちろん私は経済を中核に念頭に置いて申し上げています。もちろんAPECの活性化というのも並行して結構だと思います。申し上げたいのは、その場合に、台湾を横に置いて東アジアの将来の経済面での共存共栄、それは語れないということです。ですから、ぜひ台湾を視野に置いて、学会でもそういうご議論をぜひお願いしたい。

 この間、早稲田の浦田先生の、高かったけれども、清水の舞台から飛び下りるつもりで買ったんですよね。『日中韓FTA』という本。あの中にどれぐらい台湾のことが触れてあるのかまだ読んでいないんですけれども、「日中韓FTA」についての議論の場合でもぜひこの点も併せてご議論いただきたい。経済界は全く腰が引けています。これは中国に脅かされた。「あなた方、それで大陸との商売できると思っているのか」と。ほんとう、そうなんですよ。せっかく検討が進んでいたのに、それでワッと引いちゃったんですね。

 それから、シンガポール。聞くところによると署名直前まで行っていた。それがやっぱり中国側に強くけん制されて引いちゃったんですね。あの、したたかなシンガポールでさえ。日中韓FTAがいつそういうことになるか分かりませんが、そのときに目がけて日台のFTAも静かに用意しておいたらいいと思うんです。気がついてみたら台湾だけがカヤの外というのは、日本にとって、東アジアにとって、いけないと思います。日台間ではそんな難しい問題、実はないわけですから、経済面ではですね。

 第2点は、日本と台湾の関係について中国の大国らしからぬ強い猜疑心は、私は時折イライラする局面が現役時代もありました。それは今でも変わっていない。いろいろと事例を申し上げる時間はありませんが、中国は台湾の問題よりもっと、当面、今の政権が抱える目の前の深刻な問題がいっぱいあるわけですから、そちらのほうに注力したらよい。例えば日本が領土的野心を台湾に持っていないということをはっきり首脳レベルで言って欲しいと。これは小渕さんが首相をなさっていたときそうでした。小渕さんは、まあ、しようがないかと言って江沢民さんとの会談の際におっしゃったんですけれども。

 それから、台湾の独立に目がけて密かに日本で台湾兵を訓練しているらしいということを言う人もいるわけですね。この間、北京のあるシンポジウムで、「あなた方は中国の国防費の透明性の低さを云々するけれども、我々に言わしめれば、日本の台湾政策の透明度の低さは何だ。アメリカのほうがよっぽど進んでいる」と。今や中国の方は歴史ではなくて台湾問題、日台関係に非常に強く関心が移ってきている。理解できないわけではないのですけれども、その裏にある根強い猜疑心だけは困ったものだと思うんです。「そういう日本に安保理への常任理事国の資格はないよ」とまで言われたものですから、これはいくらおとなしい私でもガンガン、テーブルをたたいて反論して帰ってきたんです。今度、胡錦濤さんの訪日の時もおそらく中国側のメーンテーマはそこでしょう。

 最後に、先ほど来、パク・チョルヒーさんのおっしゃった日本の自信のなさということ。アメリカで新しい大統領、だれになるかは別として、今、オバマにしたって、ヒラリーにしたって、マケインにしたって、日本のことはほとんど何も出てこない。そうすると、ヒラリーの演説で中国には言及されたけれども、日本は全然話題に上らないといって、またそこで自信をなくすわけね。そんなに受身にかまえるだけなくて、政権の行方は秋にはっきりしてくる。その時に、これは政府の仕事だと私は外務省の人に言っているのですが、台湾政策も含めて、我々の、日本の東アジアの政策、我々、こちら側の政策のポイントはここだということをしっかり、むしろ政権がスタートする前に先方に注入していったらいいと思うんです。

 その場合に、台湾政策というのは1つのポイントで、日米間にあって、台湾政策で大きな齟齬があってはいけないと私は思うんです。ですから、受け身に構えないで、こちらからメーンポインツは用意して、できればペーパーにして次の政権の中枢の周辺の人にきちっと注入していく努力を、これは外務省、政府のお仕事だと思いますけれども、そうして欲しいと強く思います。

 これで終わりますけれども、中国の外交は常に「したたか」なんだそうです。これは私が言うのではなくて、日本のメディアの全く判で押したような言い方です。「したたかな中国外交」「弱腰の日本」。しかし、私は現場に身を置いてみて、中国外交も慌てふためく場合はあるわけですよ。しかし、朝日新聞を含めて、判で押したように中国外交はしたたかだと。これはやっぱり日本の側の自信のなさなんです。終わります。

若い民主主義がだんだん成熟してきているという感覚

【司会(国分)】 ありがとうございます。

 きょうのテーマが成功だったか、失敗だったか、またゆだねたいと思いますけれども、もともとの背景にあったのは、やはり東アジアに共通の傾向が出てきているのではないかということがあるわけでありまして、韓国で、先ほど小此木先生が実用主義があり得るのかという話でしたけれども、実は出たわけですよね。つまり、反盧武鉉というか、この時代はもういいよという、そこから来ている一種のバランス感覚みたいなものが、ある意味で初めて起こっているのかなという感じ、スリー金(キム)時代があって、そして、その後、いろいろ経てこういう時代が来ているという、ある種のイデオロギーとか、リーダーとか、そういう時代ではない部分みたいなものが出てきているという、私の外から見た感覚ですけれども。

 台湾も同じように、立法院選挙で私はショックを受けたんですね。それはこれまでの台湾の選挙って、すべて独立傾向側にぶれたわけですよね。台湾のアイデンティティとか、主体性とか、そちらのほうに全部選挙がぶれていった。そちらのほうをやれば少しずつ伸びるという形だったのが、初めて逆にぶれたんですよね。逆にぶれて、しかし、その人たちはみんな統一を望んでいるわけではないわけですね。それは簡単に言うと、やめてくれよ、もうそんな変なことばっかりやっているの。つまり、バランスをとってくれよという意味のぶれだったわけですよね。つまり、陳水扁さんがやり過ぎることに対して戻そうとするという、こういう感覚だった。

 つまり、それはある種の、韓国にしても、台湾にしても、こういう言い方をしたらあれかもしれませんけれども、一種の若い民主主義がだんだん成熟してきているという感覚みたいなものを持っていて、私の印象ですけれどもね。そして、同時に日本などでも、確かにそれはいろいろな極端なのはあるけれども、どうもやっぱり、一種のバランスみたいなものが実はあって、我々もマスコミの議論などをするときに、逆にマスコミが何か一生懸命世論を探しているのだけれども、どうも勘違いしてついてくるということがよくあったりして、その辺が逆に我々の感覚から少し違うのではないかという部分があったりすると思うんですね。

 そういうところみたいなのがあって、一種の成熟という言い方は少し強いかもしれませんけれども、中国などもある意味ではそういう時代の潮流の中に入りつつある。胡錦濤政権なんか、まさにそういう傾向があると思いますけれども、そういう意味で、東アジアの中に出てきている共通の一種の傾向性というか、それが短期的なものなのか、あるいは1つのトレンドとして、歴史の経過の中でそういうものが出てきているのか。両面性があるのだろう。また、ある種の、その後またぶり返しがあると思いますけれども、ただ、おそらくこういう状況の中で、藤原さんが問題提起したグローバルな枠組みというか、そういうものがこの地域にでき上がっていくのか、それが日中韓なのかどうかわかりませんけれども、APECなのか、あるいは東アジア共同体なのかわかりませんけれども、どうも何かその方向の中に何となくあるのかどうか。

 それを制度化する必要があるかどうか、これから議論があるわけですが、そのときにやっぱりどうしても大きな2つのファクターがあって、1つはアメリカというファクターと、もう一つは中国だろうと思うんですね。アメリカというのは、どうも我々の感覚では大分相対化されてきているというか、サブプライムローンでこれだけ傷ついて、我々は、いろいろと損している人もたくさんいるかもしれませんけれども、同時にブッシュ政権でガーッとこうなったときに、その後、バーッとイメージが落ちていくという、こういう感覚みたいのを見ていくと、アメリカ自体がこの地域にプレゼンスを持つということは、だれも、今や中国も含めて否定しようとは思わないし、ガーッと反対しようとも思わない。

 しかしながら、同時にアメリカの一種の相対化みたいなものが我々の感覚の中に起こってきていて、存在そのものもある種、相対化されるという部分があるというのと、もう一つ、議論の中で、我々、ずっと中国というのは背後に大きな存在としてありながら、どうもよくわからないという存在として存在する。今のチベット問題とかいろいろありますけれども、そういう中で、我々のこの地域の中で何となく模索が始まっているという感覚はある。だから、それは別にASEANを除いたわけではなくて、それはASEANも含めてだと思いますけれども、その辺を我々はとらまえていかなくてはいけないというような、そこに何か1つの、先ほど申し上げたような、成熟という言葉は少し強いかもしれないけれども、一種の民主主義、開かれた社会とか、あるいはグローバルな世界、この辺のぶり返しは幾らでもあるんでしょうけれども、何となく少しずつ、まだつかみ切れないけれども、あるのではないか、そんな感じがするんですね。

 それを夢と、むしろ私たちは言いたいのですけれども、その方向の中で少し議論をこれからもこの中で煮詰めていければいいなということで、少し、一生懸命まとめようとしているのをおわかりかと思いますが、ということで、そろそろ事務局のほうにお回しして、もう既に20分オーバーしていますので、こんなところでいかがでしょうか。

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