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朝日新聞アジアネットワーク
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朝日アジアフェローから

ソフトパワー 日中韓は互いを結ぶ努力を

 園田茂人/東京大大学院教授(アジア比較社会学)

2009年07月23日

写真:園田茂人/東京大大学院教授(アジア比較社会学)

 東南アジアが、日中韓ソフトパワーの「草刈り場」になっている。

 タイでは、アニメや音楽などへの関心を背景に、この10年ほどの間に日本語学習者は7万人へと倍増。現地の日系企業などが、日本語学習のための支援を始めている。

 ところが中国政府のテコ入れを受けて、中国語学習を支援する孔子学院も急速に増加。タイの中国語学習者は40万人に達したと言われている。韓流ブームゆえ韓国語学習への関心が高まっているものの、これを支援する態勢が足りないことを、韓国の政府関係者も問題視し始めた。

 先日開かれた朝日アジアフェロー・フォーラム「隣のソフトパワー」では、文化交流の増大が従来の国家間の関係を変えつつあるとはいえ、ソフトパワーという言葉に国家が文化を手段視しようとする「きな臭さ」がある点が話題になった。

 実際、日中韓が自国の言語を学習してもらおうと躍起になっている背後には、そうすることで国のイメージをよくしたい、自国の企業のために優れた人材を確保したいといった意図が見え隠れしている。

 しかし、こうした意図は、単に文化を消費したいだけの人びとによって裏切られる。

 昨年、早稲田大学グローバルCOEプログラム「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」が実施したアジア6カ国のエリート大学生を対象にした調査によれば、タイ人学生で、日本や中国、韓国の大衆文化に「ほぼ毎日接している」と回答した者は、それぞれ17、10、11%。ところが、彼らは他の学生と比べて特に日本や中国、韓国によいイメージを抱いているわけでもなければ、それぞれの言語を流暢に話せるわけでもない。好きだから大衆文化を消費しているだけ、というわけだ。

 しかも、日中韓の努力とは裏腹に、どの国でも英語化とアメリカ志向が急速に進んでいる。アメリカのソフトパワーに比べれば、日中韓、いずれの国も単体で発揮しうる力は微々たるものだ。事実、上述の調査で、大学生の54%が「アジアにとってアメリカのソフトパワーは巨大であらがえない」という文言に賛成している。

 英語の魅力は、何と言っても、これを学ぶことで「世界と結びつく」ことができる点にある。2003年から継続実施してきたアジア・バロメーター調査でも、英語ができる者ほど海外の人とコミュニケーションをしていることが証明されている。

 残念なことに、東南アジアでお互いをライバル視しあっている日中韓には、それぞれを結びつけようとする努力が不足しているように思える。自国の勢力を拡大するというせめぎ合いの視点ではなく、他国とうまく結びつく方法を模索すれば、「アメリカ一人勝ち」にはならないはずだ。

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(そのだ・しげと) 東京大大学院教授(アジア比較社会学)

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