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 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします
社会主義とインターネット
川崎 剛
2001年AAN主査

2001年10月21日の朝、中国・蘇州のホテルの部屋からインターネットにつなぎ、私は英BBC放送のホームページで世界の出来事を調べた。ニフティーサーブのローミングサービスを使うと、蘇州市内のインターネット無料アクセスポイントにつながる。

夜、陸路で上海に到着。蘇州と同じように、ホテルでニフティーサーブにつないで電子メールを読んだ。しかし、BBC放送のホームページは見られなくなっていた。

この日、上海で開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合が終わり、ブッシュ米大統領ら各国首脳が飛び立った後、中国はAPECの期間中に開いていた英BBC放送や米CNNテレビなどのサイトへのアクセスを切ったのである。1000人近くにもなる米政府代表団や同行記者団がいなくなったとたんの敏速な措置であった。他にワシントン・ポスト紙のサイトなどへのアクセスも禁じられたと通信社電で知った。

今年夏、中国がインターネットのサーチエンジンの大手Googleへのアクセスを禁止したことが報道された。それに関連してニューヨーク・タイムズに面白い記事が載っている("Guerrilla Warfare, Waged With Code," The New York Times, 2002/10/10)。中国、サウジアラビア、ビルマ、ラオス、イエメン、アラブ首長国連邦などの政府が禁止しようとするインターネット情報の規制の網をくぐって、禁止サイトにアクセスを可能にするソフトウェアの無料配布などでインターネット情報の自由を進めようという「政治意識の高いハッカー(Hacktivists)」のネットワークが5大陸で活動を強めているという話である。

彼らが最も重視しているのが、4600万のオンライン人口があり、米日に次いで使用者が多い中国で、インターネット使用者が政治的な情報に接することができる環境づくりである。

例えば、カナダ・トロント大の学生ナート・ビレニューブさん(28)は、中国のユーザーがあるサイトにアクセスすると、自動的にGoogleにつながり、当局にはその行動が分からない仕組みのソフトウェアをつくって配布した。また、天安門事件の時の当局の極秘文書といわれる天安門文書をダウンロード出来る「Freenet China」のソフトウェアは1万件のリクエストがあった。フロッピー1枚におさまるので、何倍もの数に複写されて使われていると推測している。

さて、北朝鮮のインターネットは?

北朝鮮はコンピューター技術の受け入れには非常に熱心である。私は平壌市内のルンラ小学校の放送室で、東芝のラップトップ機でプレゼンテーションのソフトウェア「パワーポイント」を使って、いくつもの教室に同時にアニメーション番組を流しているのを見た。万景台革命少年宮殿では、「将軍様(金正日総書記)が贈ってくれた」600台のパソコンに少年たちが向かっていた。ちらっと確認したが、機械は中国製。「AMPTRON」の商標があった。使っているOSは英語版のWindowsである。そして、その部屋に少女はいなかった。

少年たちは、このパソコンを駆使して様々なソフトウェアを開発したらしい。会計ソフトなどは、実際に外貨稼ぎに役立っているとも聞いた。「1分間に○○回、キーをたたけるようになろう」という号令が昨年秋にかかったとも。熱心であることは間違いない。

しかし、それはどうやら単体として見せるためのものであるらしい。私は、この少年たちと話すことはできなかった。しかしある日朝関係者は「こどもたちはパソコンの操作はうまいのだが、インターネットを知らなかった」という。

インターネットなき情報技術革命。コミュニケーションやネットワークの概念なしのコンピューター技術の追及という超現実的な試みをしているとしか考えられない。管理された系の中での情報のやりとりは出来るが、世界とつながることは必死で拒もうとしている。

「朝鮮国家観光総局」「朝鮮中央通信」「朝鮮民主主義人民共和国」など、北朝鮮の公式機関のいくつかのホームページは存在している。しかし、それらは、日本や中国・瀋陽などで委託を受けてつくられているもので、北朝鮮国内からの発信はまだ確認されていない。北朝鮮は「kp」というドメインを獲得しているのだが、そこからの発信はまだ知られていないのである。平壌に光ファイバーを引いた、などの観測はあるのだが、それをどう使っているのか、金正日氏をはじめ、幹部たちが電子メールを使っているのかどうか不明である。

「日本への国際電話でネットに接続できるはず」「北京経由なら可能ではないか」。訪朝時、私はいくつかの方法を検討したうえで平壌に入ったが、五つ星ホテルの私の部屋からついにインターネットに接続することはできなかった。電話は通じる。しかし、日本や北京のアクセスポイントにつながって「ピッ」という電子音が聞こえたとたん、回線は切れてしまった。何度やっても。

注:私が中国にいったのは、水事情の取材で、その報告「成長中国、環境が警告」は2001年12月27日の朝日新聞朝刊に掲載された(www.asahi.com//international/aan/hatsu/hatsu011227)。その前の7月、私は北朝鮮に行った(「北朝鮮のエネルギー・食糧事情 危機脱出へ続く苦難」、朝日新聞朝刊2001年8月9日、www.asahi.com/international/aan/hatsu/hatsu010809)。

2002年11月1日
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