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 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします
「近さ」の落とし穴
中央大学教授 園田 茂人
(前AAN客員研究員)

園田茂人
園田茂人

8月11日から14日にかけて上海を訪問してきました。今年の3月末、『論座』に寄稿するための取材をしたのが最後ですから、4カ月半ぶりの上海ということになります。その間、中国全土が新型肺炎SARSの嵐に見舞われ、上海も観光客が激減したといいますが、私が訪問した際には、その後遺症を感じ取ることはできませんでした。

もっとも、上海社会科学院社会学研究所の知り合いと夕食をともにし、「今回のSARSのおかげでコミュニティの団結が強まり、住民から『誰が誰に会いに来た』など細かな情報が自発的に寄せられるようになった」と嬉しそうに話をするのを聞いて、SARSの威力を妙に感得したのだから皮肉なものです。

上海では久しぶりに、上海大学の知人と会う機会がありました。今年の12月に、中央大学の学生を連れて「上海ゼミ」を実施する計画をしているのですが、そのパートナーとなるのが上海大学。私が最初に中国を訪問した1984年以来の付き合いがあり、一緒に上海の階層調査をした経験をもつ知人が同大学にいることが、最大の理由です。

一昔前であれば、学生、それも学部生を連れて海外へ行くことなど、考えられもしませんでした。それだけの旅費を捻出するのは大変でしたし、何より「外国は遠きに在りて想うもの」でした。「学生を海外に連れてゆくなんて面倒だ」と思う大学の教員も多かったでしょう。

しかし上海であれば、6万円も出せば4泊5日程度のツアーを組むことができます。今まで以上に学生のアジアに対する関心も強く、第二外国語でアジアの言語を選択する学生も増えています。アジアのポピュラーカルチャーもずいぶんと浸透し、学生たちにとってアジアは身近な存在となっています。

もっとも、その「近さ」が時に落とし穴となります。

今回の上海ゼミの目玉は、同じ質問票を使って事前に日本の学生と中国の学生の意識を比較し、その結果をもとに討論を行うところにあります。質問票もほぼ完成し、あとは調査を実施する段階なのですが、私は知人に協力を求めるべく、今回の調査の意義を次のように述べました。

「日本の学生たちは、今の中国の発展を感じ取りたいようだ。『今の中国を理解することが、高度経済成長を生き抜いた自分たちの親を理解することにつながる』とも言っていた。発展する中国でたくましく生きる中国人学生の姿をみずからの目で見、質問票調査で意識の比較を試みることで、みずからの足元を見直したいと考えているようだ」。

ところが、知人の反応は意外なものでした。

「なるほど、そうかもしれない。しかし、教室に行ってみるとわかると思うが、上海の学生たちにも茶髪にするなど、ずいぶんと意識の変化が激しい。若い世代は『新々人類』と呼ばれ、世代間ギャップも大きい。その意味では、彼らの意識は、日本の若者のそれと大差ないのではないか」。

興味深いことに、調査協力を惜しまないと言ってくれた知人は、こうした若者の意識の変化を「日本の影響を受けた結果」と説明していましたが、もしそうだとすると、「自分たちの親を理解するため」中国の学生を対象に調査するという学生たちの目的は達成されないことになります。そればかりか、わざわざ上海まで出かけてゆく意味も薄れてしまいかねません。

相手の国に対して都合のよいイメージを抱くというのは、いつの時代もあることです。情報化が進み、相手国に関する知識を多く得られる現代だからこそ、そのイメージが自分たちに都合がよいものであることを知らずにいる、ということもあるでしょう。その意味でも、「なぜ自分たちが、こうしたイメージを抱いているのか」を冷静に判断する必要性は高まっています。

幸運なことにも、今回の上海ゼミでは事前に質問票調査を行いますから、学生たちは、自分たちが抱いていたイメージが正しかったかどうかを考えることができます。そればかりか、知人の「日本の若者のそれと大差ないのではないか」という発言の妥当性も確認できます。

今度、上海を訪れる時までに、調査の結果は出ているはずです。さて、上海ゼミの成果はいかに。次回のお楽しみ、といたしましょう。

 

2003年9月1日
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