アサヒ・コム
検索使い方
キーワード入力

メインメニューをとばして、本文エリアへ 朝日新聞社からアスパラクラブクラブA&A携帯サービスWeb朝日新聞サイトマップ文字拡大・音声

天気住まい就職・転職BOOK健康愛車教育サイエンスデジタルトラベル囲碁将棋社説コラムショッピングbe



The Asahi Shimbun Asia Network
 ホーム | 一線から | コラム | アジア人記者の目 | AAN発 | 書評 | リンク | English
 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします

演劇で近づく日韓 青年劇場「銃口」の試み

桜井 泉
朝日新聞外報部員(AAN研究員)

「銃口」の韓国公演から (フリーカメラマン申昌容氏撮影)

小泉首相の靖国神社参拝で日本と韓国、中国との外交関係は最悪となり、首脳同士の会談も行われない状況になってしまいました。でも、民間を主体とした文化交流は活発になっています。文化の役割に過剰に期待するのは戒めなければいけませんが、政治にできないことで文化にできることもあります。そんな文化の力が発揮された好例を紹介します。

日本の劇団「青年劇場」は、05年10月から11月にかけてソウル、釜山、光州など韓国内14カ所で三浦綾子原作「銃口」の公演をしました。北海道を舞台に第2次大戦前、戦中の言論弾圧の中で苦悩する青年教師を描いた作品です。韓国公演では、5700人が見ました。

青年劇場は、02年にソウルで開かれた演劇の国際大会に参加したことがありますが、韓国での42日間にわたっての長期公演は初めてです。公演は、日本の外務省の日韓友情年の記念事業で日本の劇団が公演したことのない地方まで回りました。

05年2月、島根県議会で「竹島の日条例」が提案されると、韓国の対日世論は硬化、青年劇場の公演準備も滞りました。韓国側の受け入れ団体や地方自治体は、「秋の公演はどうなるかわからない。ちょっと待ってほしい」といった態度に変わり、一部では「日本の演劇は、もうやめた」といった雰囲気もあったそうです。

「銃口」の内容は、第2次大戦の日本軍国主義を批判するものですが、日本の劇団の公演というだけで韓国側は警戒感を示しました。準備が遅れつつも、韓国人スタッフの力も借りて、韓国側の理解を得てなんとか10月半ばから公演が始まりました。

ところがソウル公演の2日前、17日に小泉首相が靖国神社を参拝しました。「靖国神社をどう思うか」「日本は戦前に回帰しているのではないか」「あなたたちは、いったい何をねらって韓国で公演しようとするのか」。劇団員たちは、韓国の記者や演劇関係者から何度も尋ねられたそうです。

韓国公演団長で俳優の島田静仁さん(58)は、「韓国の人に芝居をみてもらって初めて私たちの意図することを分かってもらえた」と語ります。しだいに口コミや新聞の紹介などで、「日本の良心をみた」などと、公演は好意的に紹介されました。ある韓国の女子高生は、「日本は戦争を起こした元凶としか思っていなかった。戦争で傷を負ったのは韓国人だけではなかったことを知った」と感想を書きました。

通訳として同行した東京在住の韓国人、黄慈恵さん(37)は、「多くの韓国人は、日本のことを戦争が大好きな国だと思っている。日本にも過去の歴史を反省する人がいるんだということが、公演を通じて初めて分かった。まだまだお互い知らないことが多すぎるのです」といいます。「多くの人が友情の種をまきました。演劇を見た韓国の人たちが流した涙が、栄養分になって立派な花が咲くでしょう」

舞台以外でも劇団員と韓国の人たちとの交流がありました。

言葉が通じず、身ぶり手ぶりで山で会った韓国のおじさんから果物やコーヒーを分けてもらった女優さん。食堂で偶然、韓国の劇団の人たちと居合わせ、公演に来てくれるよう頼み、仲良くなったこと。40日余り行動をともにした韓国人の運転手さんは、日本語を習い、片言を話すようになりました。日本のスタッフも必要な韓国語を一生懸命、覚えました。

韓日文化交流会議の座長を務める金容雲・漢陽大名誉教授(78)は「政治が難しいなか、05年に日韓友情年をやって本当によかった。民間交流が一挙に進みました。これを将来につなげたい」と語っています。 (2006年3月29日)


asahi.comトップ社会スポーツビジネス暮らし政治国際文化・芸能ENGLISHマイタウン

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission