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小森 敦司 (AAN主査)
 | 出版が相次ぐ、「地政学」や「エネルギー情勢」の本 |
「地政学」を使って、世界の動きやエネルギー情勢を読み解こうとする本がここ数年、ブームになっています。ざっと見繕っただけでも、「石油地政学」(畑中美樹著・中公新書クラレ)、「地政学 アメリカの世界戦略地図」(奥山真司著・五月書房)、「ユーラシアの地政学」(石郷岡建著・岩波書店)・・・十冊を超えそうです。
「地政学」は、地理的な関係が国際関係を大きく動かす要因とみる「学問」などとされます。超大国・米国がこの地政学で動いているのも事実かもしれません。「地政学で世界を読む」(日経ビジネス人文庫)を書いたZ・ブレジンスキー氏はカーター政権の大統領補佐官でした。さらに、9・11同時多発テロ以降の米国は、「地政学+エネルギー資源」で動いているかのように見えます。米国のイラク攻撃は石油が狙いだ、との指摘もありました。
「地政学」関連本のブームで、この日本にも「地政学+エネルギー資源」的な見方が、浸透しつつあると言えるかもしれません。ただ、「地政学」は、日本では大東亜共栄圏の理論的な裏づけとなったとして、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)により禁止され、タブー視されてきたものです。日本はいま、この「地政学」を使って外交戦略を立てるべきなのでしょうか。
エネルギーの教科書では、石油は「市況商品」と「戦略物資」の両面があると書かれます。市場で値段が決まる、つまり、お金さえ出せば買えるモノである一方、第1次世界大戦でクレマンソー仏首相が「石油の一滴は血の一滴」と語ったように、国家を守るため、さらに言うと戦争遂行に必要不可欠な物資という二つの側面です。
しかし、現在、日本の石油輸入の中東依存度は約90%。こんなに他国に石油を頼っているのに経済的繁栄を謳歌(おうか)できているのは、金さえ出せば買えるという「市況商品」面の環境があるため、と言えないでしょうか。米国も国際石油市場の力が、石油輸出国機構(OPEC)の支配力をそいだことを知っているはずです。
エネルギー資源をめぐる「地政学」的な緊張が高まっているなら、「武力」を持たない日本こそ、石油が「市況商品」であり続けるのを後押しすることが大切だ、と私は考えます。投機資金に翻弄(ほんろう)されないよう市場を頑丈なものにする、エネルギー資源の取引や開発を活発化するためのルールづくりなどに力を貸す、地域紛争などによる供給停止のショックを緩和するために消費国連携や備蓄体制を充実させる・・・
「日本もエネルギー資源確保のために地政学的に動かねば」という論には、くれぐれも慎重でありたいと思います。(次回に続く)
(2006年10月5日)
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