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 一線から
AANの研究チームが、取材・調査の過程で直面したこと、考えたことなどを、随時リポートします
エネルギー考現学fromアジア(8)

「なぜ?」が多い、「新・国家エネルギー戦略」

小森 敦司
(AAN主査)

読めば読むほど、「なぜ?」と疑問が沸いてきてしまうのです。経済産業省が昨年5月にまとめた「新・国家エネルギー戦略」のことです。私も日本のエネルギーをどうすべきか、は真剣に議論すべきだと考えます。ただ、この「戦略」の 「なぜ?」の多さに、同省の別の思惑が隠されているような感じがしてくるのです。

例えば、油価高騰の原因の「なぜ」。「戦略」は、石油輸出国機構(OPEC)の供給余力=グラフ(1)参照=を挿入し、高騰はOPECの供給余力の減少も一因であるかのように示しました。

 

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グラフ(1)「新・国家エネルギー戦略」から

 

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グラフ(2)国際通貨基金の資料から

でも、このグラフに入ってこない90年代にも、供給余力が小さく=グラフ(2)参照=、それでもなお油価が低迷した時期がありました。90年代がないのは「なぜ」でしょう。とにかく切迫感を強調したかったのでしょうか。

今後の資源開発についても「なぜ」と思ってしまう点があります。例えば「戦略」には、自主開発原油、いわゆる「日の丸原油」を「40%程度」に引き上げる数値目標=グラフ(3)参照=が入りましたが、「なぜ」、70%や50%、30%ではないのでしょうか。根拠は書かれていません。

実は、日本はかつて「約3割」の目標を持っていました。でも、98年、堀内光雄通産相(当時)が資源開発を担った石油公団の経営を「野放図」などと批判、公団廃止にまで持ち込みました。その過程で、この目標値も廃止になった経緯があります。

それが、いきなりの上乗せ復活です。これらの新しい数値目標には、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の委員からも「説得性ある説明をうかがえない」といった不満の声が出たこともありました。

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グラフ(3)「新・国家エネルギー戦略」から

逆に、中東地域への依存度の軽減についての数値目標はなし。米英のイラク攻撃の後遺症が癒えないまま、イランの核問題を受けてペルシャ湾でのタンカーの安全航行が懸念され始めています(イランは原油が最大の輸出品目である一方、ガソリンを大量に輸入しているので、自ら海峡封鎖に出る可能性は小さいと私は考えますが)。「なぜ」、こちらの数値目標はないのでしょうか。

昨年来、この「戦略」と相まって、日本は自主開発原油の開発を急ぐべきだ、との意見が論壇やメディアで強まりました。ただ、こうした「なぜ」を集めると、「戦略」の内容は、資源開発関連の予算確保のため、都合よく練られたとの疑念さえ頭をもたげてしまいます。

経産省の07年度予算案の概要には、こんな記述がありました。「『戦略』の実現に向け必要な予算への重点化を図りつつ、歳出全体を整理合理化。総額で7621億円(対前年比455億円減)を確保」。「戦略」は実際の資源確保というより、予算縮小の歯止めに役立ったのでは、とは言い過ぎでしょうか。


(2007年2月22日)
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