最近、韓国・日本・中国の北東アジア3国で東アジア共同体構築に関する論議と研究が活発に展開されている。21世紀の世界史の流れをグローバリズム、経済的な効果を重視する機能主義、情報化の格差が国家関係を支配するサイバー封建主義、そしてリージョナリズム(地域主義)の登場に特徴づけるとするならば(注1)、東アジア地域から、共同体構築の必要性に対する共感が速いスピードで広がっていくように思える。
・共同体の定義と研究の現状
地域共同体は通常、特定の地理的空間に基盤を置いた地域間協力秩序として定義される(注2)。地域共同体は安保、経済、そして文化の3つの面から、同時に、もしくは段階的過程を通じて築かれ、地域安保機構や自由貿易地帯(FTA)のような超国家制度として定着する時、その目標に達したと解釈される。
地域共同体の形成に成功すれば、個々の国家の国力よりも多国家間協力による安全保障機構が作られ、域内国家間の経済協力が緊密になる。各国の国家統制力は弱まり、産業部門と民間部門の影響力が大きく増加する。また、地域内に集団アイデンティティーのような文化的共感が生まれて結びつきが強くなる。
したがって東アジア共同体は、安保の面では国家間の葛藤を解消して平和を増進し、経済の面では交易、金融、経済発展を通じて域内協力を強化し、文化的には相互の交流と協力を通じて東アジアの結びつきとアイデンティティーを確立させることを目的とする。
東アジア共同体構想の大部分の論議と研究は、欧米が経験した経済統合モデルを適用して行われている。東アジア各国は経済の相互依存度が高く、経済力も集中しているという面で統合に有利な条件を備え、安保や文化的レベルにまで統合を発展できるという機能主義的アプローチが論議の中心となっている。
東アジア共同体の論議は、共同体構築の主体をめぐって2つの方向から行われてきた。90年代中盤までは政府間協力(トラック1)が主体として論議されたが、最近では民間機関と個人のチャンネルを通じた非公式協力(トラック2)がふえてきている。
しかし、東アジアに地域協力と安保共同体を構築する問題に関しては、まだはっきりと目に見える成果が表れていないというのが大方の見方だ。最近では、経済共同体は可能だという強い確信が広がってはいるが、いまだ論議のレベルに留まり、実際のプロセスに移行したとは考えにくい。
・この地域を「共同体」としてとらえる歴史的意義
東アジア地域はかつて、地域共同体の性格を持った秩序を経験したことがある。
東アジア地域が初めて運命共同体を経験したのは、西洋勢力が東漸する前の17〜18世紀だった。19世紀後半まで続いたこの共同体には、中国を中心に韓国、日本と琉球、インド、アラブ圏、そして欧州出身の商人まで加わった。韓国と日本の7年戦争(壬辰・丁酉倭乱=文禄・慶長の役)以後、250年もの間、東アジア地域には戦争がなく、対馬を中継地に商業圏が形成された時もある。
このような歴史的事実は、東アジアにも共同体をベースに平和秩序の形成が可能であるとの教訓を与えている。
しかし、この平和共同体の結束力は、内部的には中華主義の限界を超えられなかったため、西洋の近代勢力に対しては脆弱で結果的に瓦解した。
20世紀初頭には日本帝国主義勢力が朝鮮半島と満州に対する支配を通じて、異なる性格の共同体を築いた。日本主導の共同体は東アジア諸国間で物的な土台やアイデンティティーを共有できず、軍事力という強制的手段と軍国主義思想という強要された理念によって維持された。その結果、東アジア地域は平和と共存の代わりに、戦争と対決という望まざる歴史的試練をも経験した。
最近の東アジア共同体構想は、同地域の歴史的な共同体経験の復活の動きとしてとらえることができる(注3)。18世紀の中国を中心とした共同体が中華主義という前近代性を前提としていたならば、20世紀の日本主導の共同体は軍事主義と商業主義という近代性を中心に試みられた。
これに対して、最近の共同体構想は、グローバリズムとリージョナリズムという脱近代性をモチーフにしており、特定国家よりは域内のすべての国家の自発的参加をめざしている。過去の二つの共同体が域内国家間の相互作用の結果だったとすれば、最近の東アジア共同体の必要性は域外からの刺激によって生み出された。価値の共有と、軍事的対立でなくグローバル化という経済的性格の強い外圧により始まった。従って、欧米の地域共同体とは競争関係にあるのが特徴だ。
・論議が広がる中で韓日中の立場は?
東南アジアを中心に模索された地域協力の努力に、最近になって北東アジア3国が積極的に加わり、東アジア共同体構想の論議が広がったのは90年代末の通貨危機が直接的な契機となっている。しかし、その内実は国際的環境が変化し、北東アジア3国が共同体の必要性を切実に感じたからだった。
東アジア共同体がなぜ必要なのかは、グローバル化が進み、東アジアの地域構造が急激に再編されつつあるという状況にその要因がある。欧米は世界経済の変化を世界易機関(WTO)により主導しているが、一方で欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)という地域機構を通して域内国家の共同利益を追求している。東アジアもこれらに対抗し、地域協力体を通じて共同利益を保護することが切実な状況にある。
その結果、東アジア共同体の将来像は、欧米の共同体との比較の観点から示されている。例えば、新しい世界貿易の秩序で東アジア国家の交渉力を高め、増大する国際金融不安に対処するためには、東アジア国家間の経済、金融面の地域共同体構築が求められる。
東アジア地域構造の急激な変化はまた、東アジア地域での米国の役割に深い関わりがある。韓日中はそろって第2次大戦後、米国の軍事戦略と市場戦略により大きな影響を受けた。韓国と日本の場合は米国の政治・経済的影響力から抜け出し、市場の多元化と国家の自立性の確保が必要な時にきている。中国は経済発展の持続的推進のためには米国の市場を是非必要としている。
北東アジア3国は、それぞれ動機は違うが、米国との安保及び交易関係を設定し直さねばならない立場にある。また3国には、米国の影響力の変化に伴って生じるかも知れない、軍事的覇権主義の登場を阻む課題がある。東アジア共同体を構築する作業には、国家間の協力を引き出す前に、各国の安全保障を確保するという戦略的問題がある。
このような面から北東アジア3国は米国のアジア戦略の変化に対応する方策として東アジア共同体に共感を示している。
一方、地域構造の変化に伴う共同体構想に対し北東アジア3国は個別の事情により、共同体構築の必要性に立場の違いを見せている。
韓国はグローバル化に対して効率的に備え、先進経済圏に参入するため地域共同体を通じた貿易規模の拡大や戦略的提携の強化が必要だ。
韓国は世界の各地域から各種の規制と差別待遇を受けているので、(それらの改善のため)域内国家と足並みをそろえる必要がある。また、東アジアの安保共同体と経済共同体構築を通じて、南北関係の改善と統一の契機を模索している。
金大中大統領が昨年10月にブルネイでの東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(韓日中)首脳会議で「東アジア共同体」建設を目標とする東アジアビジョングループ(EAVG)報告書の採択を提案したのは、経済発展と平和定着が切実に必要だという背景からだった。
日本は長期間の経済沈滞を通じ、米国に全面的に依存していた国家運営のあり方がいかに脆弱だったかということに気づいた。日本では、昨年の米国での同時多発テロで見たように、米国の指導力が危ぶまれる状況で、これ以上米国の意思に国家の将来をまるごと託すことはできないという共感が広がっている。米国主導の軍事・経済秩序に単純に順応する戦略への代案として、東アジア共同体は日本が追求しうる、とても魅力的な針路に違いない。
これには日本国内で漸増している「普通の国家」志向、あるいは日本の実力強化に対する要求も込められている。
中国は伝統的に米国の覇権主義に強い拒否感を抱いてきた。中国にとって東アジア共同体の建設は、米国の影響力を減少させ、社会主義革命以降なおざりにしてきた東アジア諸国との友好関係を回復するうえで緊要な手段だ。東アジア共同体の基盤になる多国間主義の原則は、中国にとって日米安保体制や韓米安保体制を牽制できる集団安保の可能性に道を開くものだ。
中国はまた、東アジア共同体の建設を通して華僑資本の多いマレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン等を含めた巨大な中華経済圏を生む有利な環境を作り出せることを期待している。中国のWTO加盟に符節をあわせ、日本に先立ち、ブルネイでの会期中に中国―ASEANの間で完全自由貿易協定を10年以内に達成すると明確に表明したのはその例証だ。
・共同体を具体化するための課題と展望
地域安保の観点から、東アジア地域に利害関係のある国の自国の利益と、東アジアの共同利益とをどのように調和させるかという問題がある。東アジア地域には米国の影響力が存在し、共同体構築を進める速度が制限をうけている。東アジア共同体は多国間主義の原則に従って維持されるため、現実的に米国主導のユニラテラリズム(単独行動主義)やバイラテラリズム(二国間主義)の安保原則とは相反する。
韓国と日本は国家安保の維持手段を米国との同盟に依存してきた。東アジア安保共同体のあり方は、同盟関係の設定を今後どう定義するかが重要な課題となる。
また、米国が潜在的脅威とみなす中国の安保のあり方も再設定する必要がある。中国はWTOに加盟し世界規模の貿易と取引の秩序に参加したが、依然として地域強大国としての国家目標を修正しない限り、東アジア共同体構想はつまずくだろう。
このような現実条件を考えると、東アジア共同体はEUのように超国家的法律と行政権限を持つよりは、域内国家間の安保協議を可能にする協議体の設立が重要だ。
経済協力の観点から共同体構築の原動力を国家間協力のレベルにまで引き上げることが必要だ。東アジア地域は経済的相互依存度に比べ、各国の地域統合に対するニーズが相対的に低かった。拘束力ある制度の必要性を強く感じることができなかった。現在まで東アジア地域協力の原動力は、国家間協力よりは市場自体の推進力に依存していた。
このように見ると、域内で高い経済力を維持している韓国と日本、そして中国の北東アジア3国が東アジア地域統合を主導することが望ましい。しかし、東アジア共同体の論議が特定国家に独占されてはならない。経済共同体の論議と進行が特定国家の主導で行われる場合、域内の強い反対にあう可能性が高い。
域内諸国は日本と中国の潜在的経済力を恐れる面がある。日本が主導する円経済圏構想は、中国が関心をもつ華人経済圏と間違いなくぶつかり合うだろう。97年の東アジアの通貨危機後、日本が東アジア通貨基金(EMF)創設を提案した際、米国はもちろん、域内諸国の一部も反対の意思を明らかにしたのは良い例だ。
文化的に東アジア地域ではこの地域を単純に地理的概念でとらえる傾向が残っている。東南アジアと北東アジアの区別が良い例だ。だから地域共同体のアイデンティティーも文化的観点でなく、単純な地理的意味から脱皮できていない。
東アジア共同体の母体になるASEAN諸国は、そのアイデンティティー問題によって、韓国、日本、そして中国主導の共同体の論議に対して消極的な立場を守っている。その結果、地域的特徴を表すオリエンタリズムや民族主義の理念が領土主義、抵抗主義、あるいは国家主義の性格を強く持つようになり、域内諸国の結びつきを弱めている。このような側面から、東アジア地域では民間レベルで対話の場を設け、相互の信頼性を積み上げていく作業が必要だ。
このため、民間レベルの連帯の必要性が切実な状況だ。域内の国策研究所や民間の研究所が経済協力の方策を共同研究し、具体的な実践事項を作る努力をしなければならない。域内諸国の専門家グループが定期的に各分野の協力案を論議し、政府当局者と学者、企業家をメンバーとする地域経済協力委員会の設立が必要だ。域内の非政府組織(NGO)の連帯も同様に必要だ。
・北朝鮮の共同体参加の必要性と可能性
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)はまだ東アジア共同体の論議に積極的に参加できずにいるが、共同体構築を成功させるためには、北朝鮮を参加させることが不可欠だ。北朝鮮は核と大量破壊兵器を手段に、共同体構築の潜在的な脅威となっている。
安保の次元から北朝鮮を共同体に参加させるためには、まず多国間主義の原則を適用する必要がある。北の要求する体制維持に保証を与えるため、域内国家が連帯し協力的な安保協議体を構築することが必要だ。
そのためには中国の役割を強調する必要がある。北朝鮮は伝統的に対中国関係を最も重要と考え、最大の交易関係を維持している。また、中国式の開放モデルを導入している以上、中国が共同体構築に積極的に参加するようになれば、北朝鮮が加わる可能性も高いといえる。
経済的には、各国の共同歩調で、北朝鮮に対する経済支援と開放支持を積極的に押し進めなければならない。このためには韓国と日本の経済協力の深まりはよい先行事例になる。韓日間の協力は、北朝鮮に対する経済支援を効率的に増やし、北朝鮮に共同体参加の必要性を認識させる。例えば、自由貿易地帯問題だけを見れば、韓日間の自由貿易地帯の設立は北朝鮮の輸出市場拡大の触媒になりうる。
韓日間の経済協力の深まりと同時に、南北朝鮮間の経済協力の促進も必要だ。南北間の正常な協力体系ができる場合、産業構造や天然資源の面で相互補完性が増し、南北双方に経済的実益は無論、紛争要因も減らすことができる。南北間の経済協定締結を推進したあと、現在の間接交易形態を直接交易形態に発展させ、第三国への共同進出、段階別の直接、間接投資といった順で進めていくことが必要だ。
共同体構築に必要な地域のアイデンティティーが確保されるためには、北朝鮮と域内諸国間の信頼回復が優先課題となる。北朝鮮は観光客誘致や国際的な文化・スポーツ行事に参加することで国際社会の信頼回復に積極的に乗り出している。
域内各国も北朝鮮を脅威の対象と認識するだけではなく、共同体への参加国と認識する努力が必要だ。広範囲な知識人の連帯や知識共同体といった文化的連帯に積極的に乗り出す時である。