現在位置:asahi.com>国際>魅惑大陸アフリカ>モザイクアフリカ> 記事 ジンバブエのサザ2008年01月11日 DADA代表・尾関葉子 熱い。暑いのではない。指先が熱くなる。アフリカの気温ではなくて食事の話。アフリカでは、手で食べることが多いが、いわゆる主食がものすごく熱い。エチオピアのインジェラは別として、セネガルのチュブゼンも、ガーナのフーフーも、そしてジンバブエのサザも、食べようと出した手を思わず引っ込めてしまうほどだ。これだけは、いつまでたっても、慣れない。皿を膝の上にのせてじっとしている私を横目に、他の皆は、平気で食べている。熱くないの?と聞けば、熱いよ、と言う。でも、熱くなかったらおいしくない。そりゃ、そうだ。熱いのをがまんして食べ始める。
◇ アフリカの南部にあるジンバブエ。その東南部、世界遺産にもなっているグレートジンバブエ遺跡のあるマシンゴから65キロほど西に行ったシャシェという地域では、サザが一番のご飯である。「そばがき」のようなものを想像してもらえればかなり近い。この「そばがき」は、アフリカの各地で見られるが、材料は様々な穀類やイモ類が使われる。ジンバブエの場合、人気があるのは、メイズ。白くて堅い品種のトウモロコシだ。 作り方は、いたってシンプル。沸騰したお湯にメイズの粉をいれて、ぼってりしてくるまでかき混ぜるだけ。おいしく作るコツは、火加減とひたすら練り上げる根性のみ。 ◇ このメイズ、雨が降る11月ごろに植え、翌年の4〜5月に収穫となる。ジンバブエでは、日本と反対に8月後半にはいると、気温が上がってくる。この頃、農村では、メイズの種まき準備が始まり、誰もがメイズの種の値段を気にし始める。 ジンバブエで市場に出回るメイズの大半を占めるのは、F1(一代雑種)という改良品種だ。在来種は見栄えがよくなく、市場で買いたたかれるが、F1は、白くて大粒で、しかも粒がそろっている。 しかし、メイズの場合、コメと違って、F1になると実=種を蒔いても実があまりつかない。種をとれないということは、農家は蒔く種をまた買わなくてはならない。ものすごい出費である。 ◇ そもそも、ジンバブエは、一部の穀倉地帯を除き、年間降雨量が450mm〜650mmの地域が大半である。メイズを作るのは「ばくち」だという人もいるほどだ。灌漑や水道がある大農場のような場所は別として、小農は、天雨にまかせるしかない。雨次第では収穫がゼロに近くなる年もあるが、メイズのほうが高く売れる。誰もが、メイズを作り続けてきた。 ◇ それが、ここ5〜6年で、状況が変わり始めている。まず、干ばつ。毎年まいとし緊急救援がどこかの地域で必要になる。食べ物はなんとかなった農家も、翌年の種を買う余裕はない。さらに世界の時流がこの国を襲った。緊急救援に欧米から拠出される黄色いトウモロコシは、「非遺伝子組換え品種だけを拠出するという確約はできない」と言われたのだ。ジンバブエ政府は、背に腹は代えられず、粉に挽いたものだけを受け入れた。 そして、追い討ちをかけるかのようなインフレ。ただでさえ干ばつで現金収入がない農家に種を手に入れる術はない。2004年にはいってようやく量産の目処がたったのか、農業省直轄の研究機関が生産した在来種のメイズ種が市場に出回った。在来種であれば、収穫の実を種にまわすことができる。同時に、農業省が「農家はもっと雑穀を植えよう」とアピールした。都市の大手スーパーにも、雑穀の粉が出回り始めた。 ◇ 農家だって、ただ手をこまねいているわけではない。 シャシェから東に30キロほど行ったマヨに住むエリザベス・ムポフさんは、毎年、コメとヒエとメイズを畑に雑多に植え、雨の様子を見ると言う。一見無謀に思えるが、このやり方でこれまで通してきた。最初の雨が多ければ、メイズは根腐れを起すが、コメが伸びる。逆ならメイズがよく成長する。その年の雨量によって、2月ごろ植えてもヒエが成長することもある。 昨年、メイズはほとんどとれなかったシャシェのコネック・ムジングワさんも、ヒエを栽培していたおかげで、なんとか来年まで持ちこたえることができそうだ。「もともとこの地ではヒエを食べていたんだ。来年は、もっと植えようと思っている。」 干ばつとインフレのダブルパンチが、小農とよばれる小規模の農家を変えていく。なんとも皮肉な話ではあるが、どっこい、彼らは、まだまだがんばっている。
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