2008年9月26日
給食用の器を持って配膳を待つ児童たち
給食を食べる児童たち
校舎裏のわずかな場所を使って作られた学校菜園
「学校は好き、だってごはんが食べられるから」
南アフリカのケンサニ小学校を訪問した際、自宅から持参した給食用の器を持って配膳を待つ列に並ぶ2〜3年生くらいの男の子が言った。給食は、南アフリカの小学校に通う多くの子どもたちの学校が好きな理由となっています。
南アフリカでは、子どもたちの健康を守るため、政府がすべての公立学校へ無料給食の導入を奨励しています。その予算は9つの州ごとに異なり、栄養のある給食提供に必ずしも十分でないことから、時には、マーガリンをぬった薄切り食パン2枚だけ、またはオートミールのお粥1杯といった給食にお目にかかることもあります。南アフリカは、一国でサブサハラ・アフリカ全体の4割を担うほどの経済大国ですが、特に黒人層での失業率が高く、貧富の差を示すGINI指数は世界で8位。豊かさを目の前にして貧しさから抜け出せない人々が多く暮らす国なのです。
ヨハネスブルク、プレトリア、といった大都市のあるハウテン州は、他と比較して裕福な州ですが、黒人層は依然として貧しく、小学校に通う子どもたちに栄養失調が多いことが深刻な保健問題の1つとして取り上げられています。02年の保健省による全国調査の結果では白人児童の低体重児が1.9%であることに対して黒人児童では17.0%となっています。
95年、ハウテン州保健省は、州教育省と共同で、こうした学校保健問題を緩和していくためのプロジェクトの立ち上げに着手しました。プロジェクトの準備調査のため州内の小学校を訪問して給食調理施設や給食の内容などを見せてもらっていた時、1人の先生が話してくれたことにショックを受けました。「給食でバナナを出したんです。貧しい家の子で、とってもやせてお腹も空いているだろうに、食べないので理由を聞いてみました。『弟や妹たちも食べていないので、私だけ食べられない。持って帰って分けるの』と言うので涙が出そうになりました」というのです。
ハウテン州のプロジェクトは学校だけを対象にするのではなく、学校を取り巻くコミュニティの健康問題を、学校という場所を基点として緩和させていこうとするものとなりました。栄養改善だけではなく、エイズ対策、環境改善、安全管理対策なども含めた包括的なプロジェクトですが、学校菜園活動を含めた子どもたちの栄養改善を目指した活動が多く含まれています。調理場の改善、ほこりだらけのグランドの隅々で給食を食べている現在の食事摂取環境の改善、衛生面や体によい食品のチョイスを含んだ栄養教育の改善など、活動は多々ありますが、食事が単に命をつなぐためのものである生活環境では立派な栄養教育も意味がありません。
子どもたちの家庭での食事状況化改善に少しでも役立つようにと、学校菜園活動ではコミュニティの人々も巻き込んで野菜の作り方指導を行います。どのような活動も、その成果が確認できるまでには長い時間を要しますが、何年か後に、子どもたちの栄養失調が少しでも減っていることを願うばかりです。
管理栄養士。国内の病院で6年の勤務後、92年に青年海外協力隊栄養士隊員としてソロモン諸島で2年間の栄養改善活動を行う。海外活動では、ミクロネシア連邦(00−02年)、ボツワナ(04年)で協力隊調整員、南アフリカでJICA企画調査員(05−08年)などの業務に携わる。03年にタイ、マヒドン大学でプライマリー・ヘルス・ケア管理修士号を取得、現在は大阪大学人間科学研究科で博士研究を進めながら、シェア=国際保健協力市民の会の栄養アドバイザーとしてケア・インターナショナル・ジャパンとの共同プロジェクトで活動中。