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予言タコも顔負け 南アフリカ式W杯の占い方

2010年7月21日

  • 虹の国からブブゼラへ 南アフリカ、いま(6) 長田雅子

写真店の内部写真こんな薬の材料も写真ムーティ材料の問屋さん

 W杯でドイツの試合結果と決勝戦の勝敗を当てて、一躍セレブになったドイツの予言タコ、パウル君。負けたチームのファンから「食べてやる」という脅迫があったものの、予言する際は好物のムール貝を堪能する楽しみがあるし、厳重な警護も受けている。

 ところが、南アフリカのハゲタカにとって「予言」は命がけである。なにしろ、ハゲタカの脳みそを乾燥させ、それを燃やした煙に当たれば、当たり宝くじの番号やサッカーの試合結果が前もってわかるというのだから。それでなくても絶滅の危機にさらされているケープハゲタカ。W杯によって、数の減少に拍車がかかることが心配されている。

 アフリカでは、動物を「予言」に使うだけではない。動物の力で試合展開が左右できると信じる人が数多くいる。その立役者は、伝統的祈祷師。南アフリカの場合、サンゴマとイニャンガの2種類がある。イニャンガはアフリカ版漢方医。植物や動物を使った薬(ムーティ)で、人間の体や心の病を治す。サンゴマもムーティを使うが、祖先の魂と通じ、呪術師的要素が強い。

 例えば、ヨハネスブルクのイニャンガ、タバン・クベカ氏。失業や失恋の「治療」まで請け負う。サッカー選手へのおススメは、足に塗るムーティ。原料はリスの脂肪。相手チームのディフェンスを、リスのようにすばしっこく抜けることができるという。このムーティは、訴訟を抱えている人にも効くとのこと。「治療費」は600ランド(約7000円)。

 ケープタウンの動物愛護協会(SPCA)が保護したニシキヘビ「2010」の飼い主は、サンゴマのシヤボンガ・ムテトワ氏。サッカーファンから料金を取り、ヘビを媒体にして先祖の魂とコンタクトし、特定のチームが勝つようお願いしていたという。サッカーのルールに詳しい先祖なのだろうか。

 2010のすべてを知っているというムテトワ氏、自分なしにこのヘビは生きられないと訴えるが、ヘビを取り上げたSPCAへの報復策として「2010の姿を消すか殺すかしてやる」と脅しているから、あまり2010のことを可愛がっているとも思えない。実際、SPCAが保護した時は、水も食べ物も与えられておらず、やせこけて、脱水状態、口に感染症が出ていた上、肺炎にまでかかっていた。現在、手厚い治療を受けているという。2010が保護されたのは、6月30日。それまでどの試合の勝敗が、2010と先祖の魂に操られていたのか興味のあるところ。

 一方、タコのパウル君。ギリシャの経済危機からイラクの次期首相までコメントを求められ、ドイツのTV局から巨額の契約金のオファーもあったというが、W杯を最後に予言業から引退して、静かな余生を過ごすとのことである。動物界の次のスーパースターは、アフリカに期待したい。

プロフィール

長田雅子

長田 雅子(おさだ・まさこ)

 ビジュアルアーチスト、フリーランスライター。1987年よりアメリカ合衆国、92年より南アフリカ共和国在住。ボルネオのジャングルから南大西洋の孤島、果ては南極まで世界各地を旅している、好奇心のかたまり。次の個展は8月27日―9月7日、世界のパフォーミングアート、ビジュアルアートの祭典「キャピタルアーツフェスティバル」(Capital Arts Festival)で。会場は、南アフリカの首都プレトリアの国立劇場。HP「ペンと絵筆inアフリカ」(http://pen.osada.co.za/)。

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