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アフリカ特集

ボノ氏、本社主筆と対談(1)

2008年05月31日

 ボノ氏と本社の船橋洋一主筆は28日、横浜市内のホテルで対談しました。話題は日本の若者からアフリカ支援、そして「アフリカ合衆国」の夢にまで及びました。→原文(英語)はこちら

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アフリカ支援などについて話すボノ氏(右)と船橋主筆

船橋 お会いできて光栄だ。

ボノ (窓から景色を見ながら)、ミュージシャンが開発によって興奮をおぼえるというのは、悲しいことだ。私は橋を見ると、橋そのものでなく、問題への解決が見える。おそらく、アフリカ開発問題を勉強しているからだろう。このあたりを車で通っても、産業施設だけが見える。何が起きているだろうと考えると、雇用が創出されているのが見える。

船橋 ではぜひドバイにも行くべきだ。

ボノ これまで行ったことはない。普通でないところか。

船橋 ほとんど、超現実的だ。でも、あなたは気に入らないかもしれない。

船橋 昨日慶応大学で、「ならずもののロックスター」に法律の学位を授与することで長い伝統と名声を破壊したという話をされた。学生たちが実際に何かを感じたと思ったか。

ボノ わからない。伝わったのであれば、後日わかるだろう。間違いなく学生たちには歓迎されていると感じた。もし居眠りしていたとしても、目を開けながらだろう。ほほえみを浮かべてね。これは悪い居眠りの仕方ではない。でも、みんな大変関心を持ってくれているようだった。日本の若者文化は外の世界に関心がないという、一般に流布している概念に異議を唱えたい。

逆に、彼らから、新たな国際主義が生まれてくると思う。最初は小さなものかもしれないが、慶応大学や、東京大学で始まるかもしれない。間違いなく06年12月のU2公演では始まった。それが私の感じ方だ。

船橋 M世代の突破力への期待を伝えようとしたようだが。

ボノ 「X世代」や「Y世代」はもういい。「M世代」。なぜ彼らがより国際的なのかというと、彼らがオンラインに生きているからだ。オンラインには国境や境界はない。

 「われわれの国は島国だ。まず国内の問題を解決しなければならない」。これは、日本の近年の歴史では非常によく理解できることであり、その特徴でもある。さっき窓から外を眺め、日本の発展に思いをはせていたのだが、恐ろしいくらいだ。決して美しい眺めではないが、ドックや巨大なタグボート、そして働く人々――ここには、あなたがたが戦後と呼ぶ「第一の波」という大変すごいことを成し遂げた国の一種の誇りが見える。

 第二の波は、いっそうめざましいものになるかもしれない。それは、レンガやしっくいや鉄でできた物質的な日本ではない。私が言う新しい日本とは、物理的な場所にあるのではなく、想像上の場所に存在する。これは、世界がある意味だんだん非物理的に、デジタルになっている以上、非常に重要なことだ。

船橋 おっしゃることは、慶応大学だけでなく、日本中の若い男女にとって非常に示唆に富むものだ。例えばアフリカにいるJICAのボランティアたちだ。

ボノ 過去10年で1万1千人近くだと思うが。

船橋 現在900人から千人いると思うが、うち600人が女性で、その多くが20代、30代という。これはかつてなかったことで、何か新しいことが起きていると思う。

ボノ 創造的精神は、女性的なものだ。レンガやしっくいで作る、建築的精神は男性的だ。

 以前、米国で、どのようにして、歴史的なエイズ対策への支援を獲得しようかと考えていたことがある。米国の指導力が必要だと知っていたからだ。保守的な政権なので、難しいことはわかっていた。そこで、有名なテレビ番組に出演した。この番組への参加視聴者には労働者階層が多いのだが、司会の女性は、厳しい質問をしてきた。「私の視聴者は、子供の学校の教科書や医療費も払うことができない。なぜ、ここシカゴから遠く離れたアフリカについて、彼らが気にかけなければならないのか」。これはきつい一言だった。

 私は言った。というより、考える前に私の口から出ていた。「アフリカの子供たちの命の価値を説明する必要はない。それは米国の母親たちにとっての子供の命の価値を説明する必要がないのと同じだ」。こう言ったとき、スタジオにいた参加者はほとんど女性だったのだが、どよめきが上がった。これで、勝負は決まった。このように、女性を通じて物事を進めていく必要がある。

船橋 対アフリカ援助に関して、ハイリゲンダム・サミット以来G8諸国が取ってきた対応をどう評価するか。そして、今度のサミットでは何を期待するか。

ボノ 援助だけでなく、G8などの場で署名された国際的合意に関して、信頼性の危機が来ようとしている。05年のグレンイーグルズ・サミットでは、2010年までにODA倍増が保証されるはずだった。これは対アフリカ援助250億ドルに相当する。だが、実現しなかった。

 これによって、アフリカの家族、町、そして国にとって、生活を支えるシステムが失われているだけではない。G8の声明に署名しながら、それに責任を負わされないということは、民主的制度そのものを非常に不安定化させる影響を及ぼすのではないだろうか。ミレニアム開発目標を達成する資金が物理的に不足しているということは、そこから利益を受けるはずの国々にとって大きな打撃だ。

 これを話していいのかどうかわからないが、話そう。私が警鐘をならせなければ、あなたに鳴らしてほしい。ブルキナファソは、本当に正しいことをしようとしている。現在同国は、ミレニアム・チャレンジ・コーポレーションという団体を通して米国からの資金援助を受けることになっている。だが、この資金が得られないかも知れないと聞いた。われわれが促進しようとしている、新しい種類のリーダーシップにとって、これほどまずいシグナルはない。

船橋 その話を聞いてすぐ、ブッシュ米大統領に直接働きかけたのではないのか。

ボノ その過程を始めた。上院対外活動小委員会の委員長であるレイヒー議員に会った。彼は我々の活動の多くを支持してくれているが、ミレニアム・チャレンジ・コーポレーションについては、共和党系であるため批判的なのだ。だから、この資金を阻止するかもしれないのは民主党だ。結局のところこの資金は承認されるかもしれないが、援助が順調に流れないと聞いたとき、おかしいと思うことの例として使わせてもらった。

 G8は、単なるおしゃべり会ではないはずなのに、いい結果がもたらされることもあれば、いいことが排水溝に流れてしまうこともある。8年前の日本でのG8でもたらされたいいことは、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)だ。200万人の命が救われた。これは素晴らしい。今年のG8でも、いい結果がもたらされるかもしれないが、そうでないかもしれない。今、私たちは少し心配している。

船橋 00年の世界基金のように、今回最も緊急性が高く、重要な課題をひとつ挙げるとすると、何になるだろう。

ボノ おそらく、農業危機に対応する国際的なメカニズムだろう。ルワンダの女性農業相であるカリバタ氏は、「食糧よりも、肥料を得られれば、何とか対処できる」と話した。同国のカガメ大統領は、「湖が多くあり、降雨に頼らなくてもいい。肥料があれば多くの収穫を上げることができる」という。

 食糧価格の高騰を考えれば、何らかの対処メカニズムを作ることは大変いいことだと思う。日本は東南アジアでこのような支援を成功させてきたのだから、G8でメカニズムが生まれれば素晴らしい。

 一方、日本が発表した、世界基金への拠出については失望している。また、対アフリカ援助倍増についても、一種の手品が使われたことに憂慮している。しかし、エイズ患者にとっては、「援助倍増」ではない。世界基金は倍増されていないわけだから。

船橋 「手品」についてもう少し詳しく教えてほしい。どんな「手品」なのか。

ボノ 援助倍増がホンモノなのかは、G8にならないとわからないだろう。たとえば、何か国際的な機構、緊急農業援助のようなものができるなら、すべての項目で援助を倍増する必要はない。通常は倍増といえば、すべての項目を指すのではあるが。もし我々が今知らないような何かが起きるとすれば、世界基金の増資が実現すればありがたい。しかし現時点では、倍増するのは二国間援助だけのように見える。アフリカ人の間では、「これはちょっとした手品だ。援助を倍増すると大々的に発表したら、ほとんどの人はすべての援助のことだと思う」とささやかれている。

船橋 彼らが日本に二国間援助より多国間援助にもっと力を入れてほしいのは、二国間援助を利用してアフリカの国々を支配する帝国主義的な意図が日本にあるから、そういうことか。なぜ日本の二国間援助にそんなに懸念があるのか。

ボノ いや、単純に多国間援助に比べて二国間援助の数字が小さいからだろう。

船橋 バランスの問題ということか。

ボノ そうだ。世界銀行の国際開発協会(IDA)からの借款にせよ、「万人のための教育」にせよ、世界基金にせよ、何にせよ多国間援助は数字が大きい。「手品」で倍増するのは、小さなパイのほうだ。ただ、ここでウソを言っていることにならないよう気をつけなければならない。日本は袖の中に何かを隠しているかもしれない。ウサギがシルクハットから出てくるかもしれない。そうなればすばらしい。ところで、オックスファムの「me too」(署名)キャンペーンの調査では、90%の日本人が援助の増大を望むと答えたんだそうだ。

船橋 アフリカへの?

ボノ そうだ。

船橋 そんなに高いとは。

ボノ 新しい日本だ。

船橋 現れようとしているのか。

ボノ 既にあるのだと思う。その調査はやや若い世代に偏っているが。

船橋 福田首相はこの調査のことを知っているだろうか。首相には話したのか。

ボノ 29日に話すつもりだ。

船橋 福田さん、とても喜ぶんじゃないか。

ボノ 私が思うに、福田首相は正しいことをしようという気持ちはあるが、官邸には他の人々もいて、大きな圧力がかかっているのだろう。アイルランドのロックンローラーにそんな圧力が想像できるだろうか。想像できるなんて言うつもりもない。しかし、私が言いたいのは、05年に彼の前任者が、他のG8の首脳たちとともに約束をした。私は個人的に彼らに署名をするようリクエストして、結局彼らはみな署名した。前例のないことだった。この援助増額の約束は、どう達成するかの道筋がなければ、何の意味もない。日本がすべての援助を倍増するなら、日本がこの約束を達成することに本気だと示せるだろう。

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