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(アフリカはいま)奪って精製、過激原油盗 ナイジェリア

写真:海賊が関係しているとみられるタンカーと小型船。洋上で原油を積み替えている。小型船はニジェール川を上って内陸の違法な製油所に向かうとみられる。水面には油が浮いている=ナイジェリア南部ナイジャーデルタ、ロイヤル・ダッチ・シェル社提供拡大海賊が関係しているとみられるタンカーと小型船。洋上で原油を積み替えている。小型船はニジェール川を上って内陸の違法な製油所に向かうとみられる。水面には油が浮いている=ナイジェリア南部ナイジャーデルタ、ロイヤル・ダッチ・シェル社提供

写真:ナイジャーデルタの違法製油所=ロイヤル・ダッチ・シェル社提供拡大ナイジャーデルタの違法製油所=ロイヤル・ダッチ・シェル社提供

 アフリカ最大の産油国ナイジェリアで、海賊が横行している。狙うのは原油を満載したタンカー。奪った原油を独自に精製する工場があると聞き、現地に向かった。

 南部の街ウォリから海に向かって数十キロ進むと、ジャングル地帯が広がる。

 しばらく行くと、小さな村が現れ、若者がドラム缶を転がしていた。近くに違法な製油所があり、そこで軽油に精製しているのだという。子供が道で遊んでいる。一見平和な村だ。だが製油所は海賊や外国人の誘拐を繰り返す武装組織と密接につながっているとされる。カメラを取り出そうとすると、運転手に制止された。「外国人と分かれば、襲撃される」

■海賊と一体、パイプライン破壊も

 ナイジェリア南部に幅400キロにもわたって広がる大湿地帯「ナイジャーデルタ」。ニジェール川の支流が入り組んだ地域は「クリーク」と呼ばれる。川沿いの道路も複雑に交錯しており、舟でしか移動できない場所も多い。

 クリークの「地の利」によって、違法な製油所はここで5年ほど前から増えたという。違法製油所で油を精製することを地元では「クッキング」と隠語で呼ぶ。この地域ではパーム油が生産されており、その技術が応用されているという。

 地元住民によると、原油から精製された軽油は市場の半値以下。200リットルで9千ナイラ(約5600円)ほどの値段で闇市場に流れるのだという。

 海賊はタンカーを奪った後、原油を別の船に移し替え、ニジェール川の支流をさかのぼり、違法製油所に運ぶ。海賊と製油組織はほぼ一体とみられ、クリークはその聖域と化している。

 海賊は自動小銃やロケット砲で武装している。日本を含め国際社会が取り締まりに躍起になっている東アフリカのソマリア沖で暗躍する海賊は、主に身代金が目的だが、ナイジェリア沖の海賊は積載している油を狙うため、より攻撃的でタンカー乗組員を殺害するケースも少なくない。

 産油国が並ぶギニア湾では2012年に少なくとも58件の海賊事件があり、その半数近い27件がナイジェリア沖だった。前年から3倍近く増加した。海賊行為に加え、パイプラインの破壊も相次いでおり、失われる原油は日に15万バレル以上で、年間約61億ドルの国家歳入が消えているとされる。

 ナイジェリア政府は、空爆なども実施し、摘発を強化しているという。しかし、その徹底には疑問符が付く。記者が訪れた製油所からわずか1キロほどの所に警察の検問があった。自動小銃を持った警官は「油は積んでないのか。警察車両の給油のために買ってきてくれよ」と笑いながら声をかけてきた。地元記者によると、賄賂をもらったり、油を積んだ車からは通行料を取ったりすることもあるという。

 石油メジャーの現地職員は「海賊と治安当局がどこまでつながっているかも分からない。『海賊を摘発した』と政府から聞いたが、確保したはずの原油を積んだ船が行方不明になったこともあった」と語った。

 ■「我々の資源、取り戻すのは自然」

 デルタ州の拠点都市ウォリ一帯のイジョー族の首長ヨコレ・ママムさん(74)は「『違法製油』と言って欲しくない。『地元製油』だ」と言った。ママムさんの名刺には「産油地域オーナーズ代表」とある。権利はないが、資源は住民のものだと主張する。製油には関与していないという。

 「欧米企業は強欲で我々から資源を奪い、空気や土壌、川を汚した。腐敗した政府の一部が潤ったが、神から与えられた資源の使い方を間違えている。地元では農業や漁業ができなくなった者がやむなく地元製油をやっている」と話した。

 この地域では、欧米企業や政府への反発が強い。2006年1月ごろから「ナイジャーデルタ解放運動(MEND)」などによって武装闘争が激化した。MENDはナイジェリア政府と和解したが、今も多くの武装組織が存在する。

 MENDの元メンバーで、昨年末まで別の組織で戦った男性(34)も欧米企業を痛烈に批判する。「先祖代々、漁師だったが、川の汚染で魚はほとんど取れなくなった。欧米企業は地元住民に職も与えず、何の利益ももたらさない。正義のために戦ったのだ」と訴えた。

 自身は海賊にも違法製油にも関わっていないとした上で、「村のそばにパイプラインが走る。タンカーで自分たちの土地の資源が外国に行く。それを見たら取り戻すのが自然だろう」と言った。

 一方、中学校教師のアクポビゼさん(45)は「石油開発による大気や水質汚染は深刻だ。だが、違法製油の方が環境を破壊していると思う」と指摘した。

 ナイジェリア・シェル石油開発会社の担当者は「パイプラインの老朽化などによる原油流出はごくわずか。漏れ出ている95%は、違法行為によるものだ。原油の盗難に伴う環境汚染は甚大だ」と話した。

 アフリカでは、豊富な地下資源を狙って先進国がしのぎを削る。だが、富の分配をめぐる対立が絶えず、「資源の呪い」とさえ言われる。アフリカきっての資源大国ナイジェリアゆえ、その争いは深刻だ。(ウォリ〈ナイジェリア南部〉=杉山正)

 ◆キーワード

 <ナイジェリア> アフリカ大陸西部に位置し、面積は92万3773平方キロと、日本の約2・5倍。人口は1億6250万人(2011年)で250以上の民族で構成される多民族国家。公用語は英語で、主な宗教はイスラム教とキリスト教。アフリカ一の産油国で、国際エネルギー機関(IEA)によると、2011年の原油生産(天然ガス液など含む)は1億3900万トン(世界10位)。

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