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【素顔のバグダッド】
 
アヤしい「フセイン札」

右が旧250ディナール札、左は10月に発行された新250ディナール札
右が旧250ディナール札、左は10月に発行された新250ディナール札。肖像に代わって、遺跡が印刷されている

2万5000ディナールの料理
レストランで3人で注文した2万5000ディナールの料理

「フセイン札」100枚
会計時に数えた「フセイン札」100枚

赤堀久美子 プロフィール

 昨年12月にイラクから帰国した時、職場の同僚や友人にお土産として持ち帰ってきたものがある。フセイン元大統領の肖像がついたお札だ。10月に新紙幣が発行され、以後使えなくなったこの「フセイン札」は、1991年の湾岸戦争以降、イラクで流通していたものだ。

 イラクの通貨単位はイラクディナールで、新紙幣発行までの間一番流通していたのは、250ディナール札(約14円=私の駐在期間にも大幅に変動した)だった。一番流通していたどころか、それ以外の紙幣を見ることはまれだった。100ディナールや50ディナールは、たまに見かけたが、250ディナールより大きな紙幣は4ヶ月の間に一度も遭遇しなかった。つまり、現金の支払いは、全てこの250ディナール札で行っていたのだ。例えば、八百屋さんでりんごを6個買うと1250ディナール(約90円)で、お札を5枚支払うわけだ。「1250ディナール」ではなく、ただ単に「5枚」と言われることもある。

 ところで、これが仮に1100ディナールだったとして、お札を5枚出しても、150ディナールのおつりは返ってこない。250ディナール以下は無視されるので、多めに払うと損をした気分になる。慣れない間は、いつも言われた金額より多いお札を出していたが、そのうち、1100ディナールの買い物に対しては、1000ディナールしか払わないようになった。郷に入っては郷に従えの精神だ。

 この250ディナール札しかない世界で、大きな買い物をすると困ったことになる。レストランでの食事が、25000ディナール(約1790円)だったとする。当然250ディナール札を100枚数えないと支払いができない。レストランならまだしも、夕食の買い物で混雑するスーパーのレジで、何十枚ものお札を数える居心地の悪さは格別だ。並んでいる客から早くしろ!といわんばかりの痛いような視線を感じながら、間違えてはいけないと数えるのだ。自分のポケットマネーならまだいいけれど、こと事業に関わるお金となると一枚の誤りもあってはならない。ぼろぼろのお札を数える私はいつも必死だった。

 両替だって大仕事だ。通常100ドル単位で、ドルからイラクディナールに換金するのだが、一枚の100ドル札は700枚程のくたびれたディナール札になる。100枚ごとに輪ゴムでまとめてあるのだ。その場でも数えるが、黒いビニール袋に入れてもらって持ち帰り、一束ずつ枚数を確認する。私が見たって「偽モノ」とわかるようなうさんくさい印刷のお札がまぎれていることもよくあった。

 そんな生活から、解放された時は、とても嬉しかった。新しい紙幣は、50、250、1000、5000、10000、25000ディナールの6種類で、大きな紙幣も簡単に手に入るようになった。100枚の紙幣を数えた買い物も、5000ディナール5枚で済むようになったのだ!イラクの人々にとっても、嬉しい生活の改善だったと思う。

 主権移譲が完了し、今後新しい国づくりに向けた動きが加速する。治安回復や選挙に向けて課題は山積みだが、1日も早く一般の人々の生活が少しでも改善されることを期待している。 (04/07/06)


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