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21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか――世界をリードするのはアメリカか、それとも中ロか

07年08月号、08年11月号

    アザル・ガット/テルアビブ大学教授

    ■「歴史の終わり」の終わり

     現在の「リベラルで民主的なグローバル秩序」は二つの脅威に直面している。一つは、イスラム過激派の脅威だ。過激派を支持する勢力はリベラルな民主的秩序を不快に感じているし、昨今では、イスラム過激派運動を(20世紀における)ファシズムと同様の脅威とみなす人も多い。だが、イスラム過激派の脅威とは、貧しく停滞している社会がつくりだす脅威であることを認識すべきだろう。イスラム過激派が、近代化の推進をめぐって民主主義に対抗できるような代替策を持っているわけでも、先進諸国に深刻な軍事的脅威を与えているわけでもない。彼らがつくりだす脅威とは、非国家アクターであるイスラム過激派が大量破壊兵器(WMD)を入手して現実に使用する可能性、つまり、潜在的な核使用のリスクをつくりだしていることにほかならない。

     もう一つは、非民主的な大国の台頭がつくりだす脅威で、このほうがイスラム過激派の脅威よりもはるかに深刻だ。非民主的な大国の脅威とは、共産主義体制を経て、(政治的権威主義と経済的資本主義を組み合わせた)権威主義的資本主義体制をとる、冷戦期における西側のライバル、中国とロシアが突きつける脅威にほかならない。1945年までは、(日独などの)権威主義的資本主義体制をとる大国が国際システムにおける重要なプレーヤーの役割を担っていたが、その後、国際舞台から姿を消した。しかしいまや、権威主義的資本主義の大国がまさに復活しようとしている。

     資本主義は着実に世界に受け入れられ、広がりをみせている。だが、世界における民主主義の基盤はそう強くはない。資本主義は近代に入って以降、多くの諸国に受け入れられるようになった。低価格の商品と大きなパワーをもたらしてくれる資本主義は、その他の社会・経済体制を揺るがし、変貌させてきた。このプロセスは、カール・マルクスの共産党宣言でうまく描写されている。だが、マルクスの予測とは逆に、資本主義は共産主義にも影響を与え、「万国のプロレタリアートは団結」することなく、共産主義は葬り去られた。

     産業技術革命によって後押しされ、支えられた市場経済体制の勝利によって、中産階級の拡大と都市化が促され、教育制度が普及しただけでなく、大衆社会が誕生し、より大きな繁栄がもたらされた。ポスト冷戦時代には(19世紀、そして1950〜60年代同様に)、リベラルな民主主義が大きな広がりをみせていくと考えられてきたし、こうした認識を大いに広めたことで有名なのが、フランシス・フクヤマの「歴史の終焉」論だった。

     たしかに、現時点で世界の半数を超える国の統治を、選挙を経て誕生した正統政府が担っているし、ほぼ世界の半分の国で自由が保障され、自由主義的な一連の権利が確立されている。だが、民主主義が勝利した理由を考えてみる必要があるのではないか。特に、二度の世界大戦におけるドイツ、そして日本という非民主的な資本主義国家になぜ民主国家連合が勝利できたかについては、一般に考えられている以上に偶然に左右されている部分が大きい。そうだとすれば、中国とロシアに代表される、現在の権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないではないか。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもない。

    フォーリン・アフェアーズ日本語版

    〈フォーリン・アフェアーズ日本語版2007年8月号、2008年11月号〉

    (C) Copyright 2007 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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