現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 国際
  4. フォーリン・アフェアーズ リポート
  5. 記事

なぜ国際社会は海賊を退治できないのか―ウィリアム・キッドからソマリアの海賊まで

2009年8月10日発売号

    マックス・ブート 米外交問題評議会国家安全保障担当シニア・フェロー

    ■ビジネスとしての海賊活動

     2009年4月、アフリカへの救援物資を運んでいた米貨物船マースク・アラバマ号をソマリアの海賊が乗っ取って占拠する事件がおきると、世界の人々はこの事件の展開に大きな関心を寄せた。乗組員は最終的に海賊を追い払うことに成功した。しかし、この貨物船の船長リチャード・フィリップが人質にとられ、米海軍シール号の狙撃手が海賊3人を射殺するまで、彼はアデン湾近くを漂流する小型船舶に5日間にわたって人質として拘束された。事件が決着したことにアメリカ人は胸をなで下ろしたが、海賊の脅威がなくなったわけではない。事実、フィリップが救出された後の2日間で、海賊はさらに4隻の船を襲い、より多くの人々を人質にしている。

     東アフリカの沿岸海域での海賊事件の発生件数は驚くべきペースで増大している。2007年には41隻の船が襲撃されたが、2008年にその件数は122へと増え、2009年にはすでに5月の段階で102件の襲撃が報告されている。

     有名なのは、石油を満載したサウジアラビアのスーパータンカー、そして、戦車と兵器を積んだウクライナの貨物船が乗っ取られたケースだろう。現在でも19の貨物船が奪われ、300人を超える乗組員が人質とされており、海賊は貨物船のオーナーや保険会社に対して身代金を要求している。

     こうした活動によって海賊がこの数年間で手に入れた資金は1億ドルを超えると考えられており、いまや海賊行為は1人あたりGDP(国内総生産)が600ドルしかないソマリアにおけるもっともうまみの多い産業とさえ言える。驚くべきことに、いまやこの国でもっとも多くの人々を雇い入れているのがこの海賊産業だ。ソマリア国内では、略奪行為を繰り返す海賊に対するイスラム系住民の反発が高まっているとはいえ、アルカイダと関係しているタリバーン流のイスラム過激派組織シャバブ(若者)と海賊とのつながりも取りざたされており、状況はますます深刻になっている。

     中国、フランス、インド、ロシア、イギリス、アメリカを含む20を超える国々が、東アフリカの沖合に海軍を派遣することで対策を試みている。しかし、この海域で海賊対策を目的にパトロールにあたっている船艦は平均するとわずか14隻。現在の戦力では、3万3000の貨物船が毎年行き来する100万平方マイルの海域でうまく監視活動を行うのは難しい状況にある。

     今後の対策を考えていく上で、過去における海賊の被害がどのようなものだったか、世界が海賊をいかに打倒してきたかを振り返り、なぜ対策がうまくいかなかったか、どのようなタイプの戦術の効果があったのかを理解できれは、今日においても有益な洞察を得られるだろう。

    フォーリン・アフェアーズ日本語版

    <フォーリン・アフェアーズ・リポート2009年8月10日発売号>

    (C) Copyright 2009 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

    PR情報
    検索フォーム
    キーワード:


    朝日新聞購読のご案内
    • 中国特集