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アフガンの安定を左右する部族文化の本質

2010年7月10日発売号

    セス・ジョーンズ/ランド・コーポレーション 上席政治学者

    ■中央からのアフガン再建策は間違っている

     アフガンにおける国家建設や対テロ戦略を研究する専門家の立場は二つに分かれている。第1の集団は、「アフガン国土全域に社会サービスを提供できる力強い中央政府を誕生させない限り、アフガンの治安が確立され、安定化することはない」と考えている。もう一つの集団は、「アフガンはこれまでも、現在も分散した社会であり、治安と安定を確立するには地方での制度構築を試みる必要がある」と考えている。

     暫定政府と新憲法起草委員会を立ち上げた2001年12月のボン合意以降、アフガンにおける国際的試みは、不幸にも、中央政府が治安と安定を確立するために必要と考えられる措置ばかりを重視してきた。政治領域でも、ハミド・カルザイ政権を支え、カブールの政治制度を構築することに重点がおかれた。治安面では、治安・警察部隊と国軍を、タリバーンその他の反政府ゲリラ集団に対する防波堤として立ち上げた。しかし、これらの試みはうまくいっていない。

     民衆を守るには治安・警察部隊の規模があまりに小さすぎる。しかも、この組織は腐敗しているし、無力だ。そうでなくても、地方のコミュニティの多くは、中央に大きな権限を持つ政府が誕生することなど望んではいない。開発面でも、地方再生・開発省(MRRD)など、中央政府が人々に社会サービスを提供することが見当違いにも重視されている。こうしたトップダウン戦略は、多くの政策決定者や研究者たちのアフガンに関する一般認識を前提としているが、この認識そのものが間違っている。

     「中央からアフガンの治安と安定を確立していく」という、現在国際社会が試みているやり方は、アフガンの文化、社会構造に関する根本的な誤解に根ざしている。こうした誤解が生じているのは、結局のところ、アフガン東部、南部、西部の危険地帯に足を踏み入れ、現地に滞在したことのある外国の文民、民間人がほとんどいないからだ。治安上の問題ゆえに、米政府やNATOの官僚たちは、基地や都市部の外には出て行こうとしない。研究者も、武装抵抗運動の中枢である地方にはほとんど入れない。西洋人にとって、これらの地域に足を踏み入れるのは危険が大きすぎるためだ。

     バグラム、カブール、カンダハルその他の地域に国際チームが集まっているのは、こうした治安上のリスクを回避しているためだ。だがその結果、外国人はアフガンの地方のこと、地方で生活する人々の考えを理解できずにいる。国家建設戦略や対ゲリラ戦争が、歴史、文化、社会構造に左右される以上、これは大きな問題だ。

     ジュストージは、アフガン国家建設に関するトップダウンモデルがあまりに長期にわたって成果を上げることなく、運用されていると批判する。このモデルを主張する人々は、ジョン・ロックやイマヌエル・カントの思想に影響された理想主義者たちだ。ジュストージは『泥沼の帝国』を執筆した目的は、アフガンへの政策を支える思想に「ホッブズ、マキアベリ、イビン・カルダンの思想を適切に注入することにあった」と書いている(イブン・カルダンは、部族主義と社会紛争の理論を作り上げた14世紀アフリカの歴史家、社会批評家)。

     アフガンを安定化したいと考えるのなら、欧米の政策決定者はジュストージのアドバイスを受け入れた方がいいだろう。最善の政府制度のモデルなど存在しないし、行政上の問題を解決するための「最善の手法」もないのだから。

     中央銀行の改革のような一部の領域については、外部の専門家がテクノクラート的にあれこれといじればどうにかなるかもしれないが、法改革のような領域になると簡単にはいかない。そうだとすれば、ワシントンにとっての課題は、現地情勢に関する理解を深めた上で、自らの行政経験のノウハウを現地に適用することではないか。

        ◇

    Seth G. Jones ランド・コーポレーションの上席政治学者で、『帝国の墓場で――アフガンにおけるアメリカの戦争』の著者。2009年に、アフガンの米特殊作戦部隊総司令官の参謀、顧問を務めた。国家建設、アフガン問題の専門家で、ジョージタウン大学の非常勤教授も兼務。

     <フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年7月号掲載>

    (C) Copyright 2010 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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