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ペンタゴンの新サイバー戦略 ―― なぜアメリカはサイバー軍を立ち上げたか

2010年10月10日発売号

    ウィリアム・J・リン三世/米国防副長官

    ■汚染されたフラッシュ・ドライブ

     2008年、米国防総省は軍事用機密コンピュータ・ネットワークから大量の情報が盗み出されるという事態に直面した。この情報漏洩は、ウィルスに伝染したフラッシュ・ドライブが中東の米軍基地のラップトップ・コンピュータに挿入されたことがきっかけだった。外国の情報機関によってフラッシュ・ドライブに埋め込まれた有害なコンピュータ・コードが、米中央軍のネットワークに入り込み、汚染を拡大していった。コードは気づかれぬまま機密システム、非機密システムの双方へと入り込み、この「デジタル空間の上陸拠点」から外国政府の管理下にあるサーバーへと(米軍の)データを転送した可能性がある。不正プログラムが気づかれないうちに作動し、作戦計画が得体のしれない敵対勢力の手にわたってしまう。これはネットワーク管理者がもっとも恐れていた事態だった。

     これまで秘密にされ、米軍のコンピュータに過去最大級の損害を与えたこの事件は重要な警告となった。「バックショット・ヤンキー作戦」と名付けられた、サイバー攻撃に対抗するペンタゴンの作戦計画は、米軍のサイバー防衛戦略のターニングポイントとなった。

     過去10年間で米軍ネットワークへの侵入の手口が非常に巧妙になり、その頻度も大幅に増加している。米軍と民間のネットワークは1日に何千回も調査され、何百万回もアクセスされている。

     バックショット・ヤンキー作戦で対抗した2008年の事件だけがネットワークに侵入されたケースではない。敵対勢力はアメリカ、同盟国、産業パートナーのネットワークから何千ものファイルを入手している。そのなかには、兵器の設計図、作戦計画、偵察データも含まれている。

     サイバー戦争がアメリカの安全保障と経済に与える脅威の大きさがいまや理解されつつあり、ペンタゴンは軍事用ネットワークのまわりに幾層もの強固な防衛体制を築き、新たに米サイバー軍を創設し、各軍を横断的に網羅するサイバー防衛作戦を立ち上げている。現在ペンタゴンは、国土安全保障省と協同で政府ネットワークと重要インフラの防衛体制を構築し、友好関係にある同盟国とも連携して防衛体制を国際的に広げようとしている。

    やらなければならない非常に多くの基本的仕事が残されているが、アメリカ政府はデジタル時代においてアメリカを守るための様々な構想にすでに着手している。

        ◇

    William J. Lynn III オバマ政権の国防副長官。戦略問題国際研究所、米国防大学、エドワード・ケネディ上院議員の国防問題担当顧問、クリントン政権の国防次官補を経て、現職。

     <フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年10月号掲載>

    (C) Copyright 2010 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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