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経済覇権はアメリカから中国へ ―― 21世紀に再現されるスエズ危機

2011年10月10日発売号

    アルビンド・サブラマニアン/ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

    ■「衰退国家のあえぎ」

     債務国にとって、債権国は独裁者並の力を持つこともある。金融問題を抱え込んだ政府は、しばしば国際通貨基金(IMF)に助けを求め、主要な債権国に言われる通りに行動し、IMFは緊急融資を提供する代わりに、厳格な改革の条件(コンディショナリティ)を債務国に強要する。

     1990年代末のアジア金融危機後、クリントン政権のミッキー・カンター通商代表は、IMFの役割を「破壊槌=カナテコ」と呼んで賞賛した。IMFが課したコンディショナリティによって、アジア市場がついに開放され、アメリカの製品を輸出できるようになったからだ。

     1956年のスエズ危機の際には、アメリカはイギリスに対して「スエズ運河から撤退しない限り、金融支援を停止する」と迫った。当時のイギリス首相で、スエズからの撤退という、危機における「最後の、屈辱的な局面」の指揮をとったハロルド・マクミランは後に、あの瞬間が「衰退する国家の最後のあえぎだった」と当時を振り返り、「200年もすれば、あの時、われわれがどう感じたかをアメリカも思い知ることになるだろう」と語っている。

     そして、中国はアメリカに追いつき、追い越さんばかりの勢いを持っている。アメリカにとっての「その時」が速いペースで近づいているのか。これは重要で本質的な問いだが、依然として自負心やうぬぼれを捨てきれずにいるため、アメリカでは真剣に考えられていない。

     「アメリカが(中国に)敗れて、経済的な影響力が大きく脅かされることなどあり得ない。この国は早晩、敗北しないように、一連の課題に果敢に取り組み始める。中国は経済超大国への道を歩みつつあるかもしれないし、アメリカが、いずれ、世界における(超大国としての)地位を中国と分かちあうような事態になるかもしれない。しかし、中国の脅威が差し迫っているわけでも、それが非常に大きなわけでも、多面的なわけでもなく、アメリカを世界経済の運転席から追い出せるような力は中国にはない」

     エコノミストのバリー・エイケングリーンも、さまざま準備通貨の足跡をテーマにした著作『途方もない特権』で、「グッドニュースはドルを管理しているのはアメリカであって、中国ではないことだ」と指摘している。

     2010年12月、ラリー・サマーズも、オバマ政権の国家経済会議議長を辞任するにあたって次のように述べている。「アメリカが衰退してしまうとみなす悲観的な予測は建国期以来の伝統のようなものだ。だが、この悲観的な予測を旨に、アメリカは、時代の必要性を満たそうと常に経済を刷新してきた。われわれが将来について心配する限り、将来はより明るいものになる。たしかにわれわれは課題に直面している。だが、アメリカは、歴史的にみても、もっとも柔軟でダイナミック、そして起業家精神豊かな社会を持っている。別の言い方をすれば、国内財政をきれいにすれば、中国の(経済的)脅威を押し返すことができるだろう」

     これらの見方は、中国が今後20年間で世界経済における支配的な優位を確立する可能性を過小評価しているし、世界の支配的優位を左右するのは、アメリカの行動であって、中国のそれではないと考えるアメリカ中心の世界ビジョンを反映している。だがレースの結果は、アメリカではなく、中国の行動によって左右される可能性が大きい。

        ◇

    Arvind Subramanian ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー。この論文は、近く出版されるEclipse: Living in the Shadow of China’s Economic Dominance Copyright Peterson Institute for International Economicsからの抜粋。

     <フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年10月号掲載>

    (C) Copyright 2011 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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