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カダフィ後のリビア ―― 選挙を急げば再び内戦になる

2011年10月10日発売号

    ダウン・ブランカティ/ワシントン大学セントルイス校助教授(政治学)

    ジャック・スナイダー/コロンビア大学教授(国際関係論)

    ■なぜ早い段階で選挙を実施するのは危険か

     リビアでは武装した地域勢力、部族勢力が群雄割拠し、各集団が権力を競い合っている。この状態で、リビアが安定した民主主義へとスムーズに移行していくと期待するのは大きな間違いだ。

     だが、国民評議会(NTC)と国連はすでにリビアにおける最初の選挙を計画し始めている。

     NTCがトリポリを制圧すると、NTCのムスタファ・アブドルジャリル議長は、18カ月以内に新憲法を制定し、選挙を実施すべきだと表明した。一方、国連の内部文書はリビアの民主主義確立に向けて2段階の移行プロセスを想定している。期限を明確に区切っていない第1段階は選挙に向けた「政治的地ならし=political precondition」の時期とされ、この間に治安を確立し、警察が公正な組織であることへの民衆の信頼を築いた上で、6―8カ月以内にいわゆる制憲議会を発足させる構想だ。その後の6カ月間で、NTCが国連の助けを借りて、選挙の実施に向けた準備をする。

     国連のメモが「政治的地ならし」を重視しているのは理解できる。1945年以降、内戦後に実施された最初の選挙をテーマとするわれわれの研究結果からみても、選挙の実施を急げば大きな危険に直面する。選挙を実施する時期が早ければ早いほど、再び内戦に陥っていく危険は大きくなる。一方、最初に選挙を実施するまでに5年間という時間をかければ、内戦が再発する危険は3分の1に減少する。

     これには理由がある。内戦後における「法の支配」は脆いし、しかも、権力の座を競い合うのは、最近まで戦闘を指揮してきた集団の指導者たちだ。彼らを支える集団は、部族、民族集団、宗派集団などの伝統的な社会集団であることが多い。

     このような環境では、候補者は排他的な集団アイデンティティを基盤に、非自由主義的なポピュリストのアピールをすることが多い。選挙に敗れた指導者を支えた集団は選挙結果を受け入れるのを拒むことが多いし、特に、各集団がまだ武装解除をしていない場合には、非常に危険な状態に陥る。

     <フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年10月号掲載>

    (C) Copyright 2011 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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