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クルド人の夢と挫折

2012年12月10日発売号

    ジュースト・ヒルターマン/国際危機グループ(ICG) 中東・北アフリカ研究副部長

    ■イラク・クルド人の夢と現実

     イラクのクルド人自治区を構成するエルビル、スレイマニア、ドホークの3州には、最近、明るいムードが漂っている。実際、クルド自治政府(KRG)が統治するこの地域の住民には祝うべきことが数多くある。イラク国内の他の地域よりも平和で安定しているし、社会もそれなりに開放的だ。この1年ほどの間に自治政府がエクソンモービル、シェブロン、トタル、ガスプロムといった世界有数の石油資本と相次いで資源の探索・開発契約を結んだことで、大きな経済的支えも提供された。かつてない建設ブームが起き、クルド人は「イラクから自由になる日は近い」と、これまでは考えられなかった夢を語り始めている。

     一方、クルド自治政府とイラクのヌーリ・マリキ首相の距離は広がる一方だ。マリキとマスード・バルザニ自治政府議長との関係もこれまでになく悪化し、政治的権限、地理的境界、資源収入をめぐる対立は依然として解決していない。バルザニを含む反マリキ派は2012年6月には内閣不信任案を提出し、マリキの追い落としを試みた。この試みは失敗に終わったが、彼らは依然としてマリキ政権の打倒を諦めていない。

     クルド人は歴史と地理、そしてときには自らの野心の犠牲になってきた。約1世紀にわたって、イラク政府の支配からの自由を模索し、内陸という地理上のハンディキャップを克服しようともがいてきた。

     そして今、これまでとは異なる相手(トルコ)と手を組むチャンスが生まれつつある。しかし、クルド人が独立国家を持つ夢はまたしても先送りを余儀なくされそうだ。現状で可能なのは、バグダッドの息の詰まるような支配から、より穏やかなトルコへの依存へと移行することくらいなのかもしれない。

        ◇

     Joost R. Hiltermann 国際危機グループ(ICG)中東・北アフリカ研究副部長。マサチューセッツ工科大学(MIT)研究員。

    〈続きはフォーリン・アフェアーズ・リポート12月号〉

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