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BRICsの黄昏 ―― なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか

2012年12月10日発売号

    ルチール・シャルマ/モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント 新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

    ■新興国の停滞

     グローバル経済をめぐって、この数年間でもっとも議論されてきたテーマは、いわゆる「その他の台頭」だった。「多くの途上国経済が、先進国のレベルに近づきつつあり」、この現象を支える主要なプレイヤーがBRICsとして知られるブラジル、ロシア、インド、中国という主要新興諸国だと考えられてきた。「途上世界の主要なプレイヤーたちが先進国に追いつき、追い越しかねないという、一生に一度あるかないかの大きな変化を世界は目撃しつつある」と。

     だが、この予測は、90年代半ば以降の新興国の高い成長率をそのまま将来に直線的に当てはめ、これを、アメリカその他の先進国の低成長予測と対比させることで導き出されていた。

     こうした極端なとらえ方ゆえに、例えば、「中国が世界最大の経済国家であるアメリカに迫りつつある」という認識が幅を利かすようになった。

     すでにアメリカ市民はこうした米中逆転の構図を意識している。2012年に実施されたギャラップ社の世論調査によれば、50%以上のアメリカ人がすでに「中国を世界の主要経済国」とみなしている。アメリカ経済の規模が依然として中国経済の2倍以上あり、アメリカの1人あたり所得が、中国の7倍も高いにも関わらず、多くの人が、中国経済はアメリカ経済に迫りつつあると考えている。

     だが、日本が(アメリカを抜いて)世界でナンバーワンの経済国家になるという1980年代の予測からも明らかなように、特定の時期の経済トレンドを直線的に未来に当てはめた予測は、結局、未来を読み違えてしまうことが多い。

     2009年以降、世界経済が停滞するにつれて、中国経済の成長率も2桁台の成長から7%あるいはそれ以下へと急速に鈍化している。その他のBRICs諸国経済も迷走している。2008年以降、ブラジルの年成長率は4・5%から2%へと低下し、ロシア経済も7%から3・5%へ、インド経済も9%から6%へと成長が鈍化している。

     とはいえ、これに驚く必要はない。そもそも10年以上にわたって急速な成長を持続するのは難しいからだ。だが、この10年間における一般には考えられない状況ゆえに、人々は新興国の勢いはとまらないと信じ込んでしまった。

     危機に見舞われた1990年代から脱し、イージーマネーが世界にあふれかえるなか、新興国は、他の諸国を大きく引き離した圧倒的な成長を集団的に示すようになった。

     マイナス成長に苦しんでいるのが世界で3カ国を残すだけとなった2007年までには、リセッションは国際経済からは消えさっていた。だが今では、新興市場に流れ込む資金の量は少なくなっている。グローバル経済はいつも通りの変動期を迎え、多くは取り残され、予期せぬ場所で数少ない勝者が台頭している。このシフトの意味合いは非常に大きい。経済的勢いはパワーであり、台頭する新しいスター国家への資金の流入が、世界のパワーバランスを再度変化させてしまうからだ。

        ◇

     Ruchir Sharma モルガン・スタンレー・インベストメントマネジメント社の新興市場・グローバルマクロ担当マネージングディレクター。著書に『ブレイクアウト国家――新たな経済的奇跡を目指して』がある。

    〈続きはフォーリン・アフェアーズ・リポート12月号〉

    (C) Copyright 2012 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

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