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中国―共産党政権の存立基盤

 戦争をめぐる歴史認識は日本と中国の大きな火種だ。一方で、中国の経済や社会が大きく変化するなか、国内で共産党の歴史観への反論も出ている。歴史をめぐる内外からの風圧に、共産党政権は対決と妥協をおりまぜて対応している。

 「民族が団結した(日本軍への)抗戦で、共産党が大黒柱の役割を果たしたことを力を入れて宣伝せよ」

 共産党が一昨年、戦後60周年の記念活動に際して出した通知だ。共産党は折々にこうした宣伝活動をする。「侵略や封建主義と闘い、人民の国家をつくった」という近現代史こそが政権の存立基盤だからだ。

 その功績を土台に、社会主義の国づくりを指導するというのが共産党の立場だ。左のページで紹介しているように、近現代の歴史過程を国民に教え込むことが、政権を守る重要な仕事となる。

 だが、市場経済の進展や世代交代などで人々の意識は多様化した。思想や報道の統制下でも、学者や記者らが様々な問題への独自意見を発信している。その中で昨年、主要紙に掲載された歴史教科書をめぐる学者の論文が大きな問題に発展した。

 論文は、近代の第2次アヘン戦争や義和団事件では、中国側にも行き過ぎや国際法違反があったのに、教科書はそれらを全く正当化している、と指摘した。そして、「理性に基づくことが現代化の基本精神だ」として、教科書も冷静で客観的に記述すべきだと訴えた。

 当局側は「列強の侵略の罪を覆し、歴史事実に背き、報道宣伝規律に背いた」と非難し、論文が載った特集コーナーを閉じさせた。編集者らは更迭された。

 学術論文であれ、新聞に載れば、政治宣伝とみなす、との姿勢だ。党は、歴史教育への批判を看過しないことを見せつけた。

 だが、その共産党が自ら歴史認識を調整することもある。最近、抗日戦争での国民党軍の役割を見直したのも一例だ。

 国民党は長く、日本に「不抵抗」と強調されてきたが、功績についても光を当て、評価を引き上げた。台湾との統一をめざし、今は台湾の野党である国民党を取り込むためと見られている。

 また、中国の首脳や主要メディアが最近、平和に発展した日本の戦後史を評価している。日本側からの要求も踏まえ、対日関係の安定を求めてとった措置のようだ。

 近現代史における共産党の評価に大きく影響しない範囲においては、政治的戦略から、歴史認識をさらに調整することもあるだろう。

(五十川倫義)

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