「戦後レジームからの脱却」を掲げ、占領下で出来た憲法は変えるのだという安倍晋三首相のもと、日本はいま分かれ目にある。自民党改憲草案の前文からは戦争の反省が消えた。9条を変えて軍隊保持を明記し、戦後の歩みに一線を画そうというのだから、歴史問題はもはや終わったと宣言するに等しい。
世代交代が進み、戦争の記憶は薄れていく。小泉純一郎前首相の靖国神社参拝は中韓の猛反発を招いたが、国内では一定の支持さえ集めるようになった。民主党内にも後押しする勢力がある。
こうしたなかで今月、首相を支持する自民党議員43人が「価値観外交を推進する議員の会」をつくった。「自由・民主・人権・法の支配」を掲げ、その価値観に沿わない国として中国を名指しする。一方で、「基本理念や政治哲学」から譲れない問題として靖国参拝も挙げ、同志で結束を固めるのだという。メンバーには歴史教科書問題などで安倍氏と足並みをそろえた議員も目立つ。
だが、現政権の姿勢の危うさは慰安婦問題での摩擦にも見て取れる。強制性を「広義か狭義か」で分けた当初の首相の語り口には、欧米でもメディアを中心に強い批判が起きた。その多くがユダヤ人虐殺を例に引いた通り、真に問われたのは「時の政治指導者が負の歴史にどう向き合おうとするのか」という世界共通の課題に他ならない。
歴史問題は、一国が一方的に終わらせようとしても、そう簡単には運ばない。
(福田宏樹)