歴史問題を克服しようという動きも、政府、民間のそれぞれのレベルですでに始まっている。
政府主導の努力としては、昨年10月の日中首脳会談で合意された日中歴史共同研究が挙げられる。2回の会合を開き、研究テーマを決めた。近現代は九つの章で、日清戦争や満州事変などに関する歴史事象を取り上げて論文を執筆する。来年夏には共同報告書を公表する段取りだ。
小泉政権時代に始まった日韓の共同研究はすでに第1期(02年〜05年)が終了。第2期の研究委員会も先月発足し、歴史教科書についても研究することで合意した。
ただ、学術研究に政府が絡むことには困難がつきまとう。日韓の第1期研究に参加した日本側の研究者は「互いに国の立場を背負い、かみしもを着ているような雰囲気だった」。韓国側研究者も「自分の語ったことがどんな波紋を呼ぶかという心配が委員を圧迫していた」と語る。第2期のメンバー選定では日本側の選出が政府の思惑も絡んで難航したという。
一方、民間レベルでの研究交流は時を追って盛んになっており、子どもたちに向けた教材や読本として実を結び始めた。
日韓の教師らが共同で企画した「向かいあう日本と韓国・朝鮮の歴史」(青木書店)は、前近代編の上下2冊が昨年、両国で出版された。今年3月には、共通の教材にしてもらおうと歴史学者らが共同執筆した「日韓交流の歴史」(明石書店)も出た。
日中韓3国の研究者や教師らが近現代史の共通教材として編集した「未来をひらく歴史」(高文研)は05年の出版以来、日本で8万部、中国で11万部、韓国でも5万部が売れたという。一部の学校では実際に授業で活用されている。
政府の共同研究と民間交流の両方に加わっているソウル市立大の鄭在貞(チョン・ジェジョン)教授は「民間の交流は、最初から共通の問題意識を持った人たちが集まるので信頼関係が築きやすい。民間交流、政府レベルでの対話を同時に続けることが大切だ」と話す。
(吉沢龍彦)