大手3社の教科書の一つ、南一書局の「国民中学・社会」ではアヘン戦争については、1ページしかあてていない。単元のタイトルは「紫禁城の黄昏(たそがれ)」。紫禁城とは清朝の王宮(現在の故宮)で、「黄昏」とは清朝の衰退を意味する。タイトルからして中国とは取り上げ方が異なっており、どこか冷ややかだ。
この教科書の編集指導委員の周恵民・政治大学歴史学部教授は、アヘン戦争を含む教科書全体の作成方針について「台湾は10年ほど前までは国民党の史観がはっきりしていた。我々は国民党史観を改めようといろいろ考えた」と説明する。国民党史観とは、「国民党政権が中国の正統な政権である」という考え方が反映された見方だ。
国民党政権下の1983年制定の「歴史課程標準」によって編集された教科書では4ページ余りを割いて詳しく説明。不平等条約によって「列強の侵略の対象になった」と、侵略の側面を強調していた。現在は、アヘン戦争の結果について次のように淡々と記す。
近代中国が不平等条約を結ぶ幕開けとなった。この後、その他の列強が同じような特権を獲得した。
明治維新には、中学3年の社会の世界史部分で1ページ半が割かれている。
古い教科書では「維新に成功した日本はアジアで初の工業化した国になり、対外侵略を始めて、我が国に深刻な害をもたらした」として、明治維新のマイナス面を指摘している。だが、現在はこう結んでいる。
(日本は)
甲午戦争と日露戦争で中国とロシアを相次いで破り、世界の強国に肩を並べた。
(田村宏嗣)