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歴史は生きている

モダンガールの出現 社会史的に重要 アンドルー・ゴードン(米ハーバード大教授)

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1952年生まれ。95年から現職。著書に「日本の200年」など。新著に「日本人が知らない松坂メジャー革命」。

 やや変則的な形で10の出来事を挙げたのは、幾つかをワンセットにすることで、より深く歴史をとらえられるからです。それぞれの出来事は、単独で起きた場合もありますが、地域的・世界的文脈の中で相互に関連している。戦争や政治的事件ばかりでなく、社会構造の変化を示す事象にも目配りしました。

 まずアヘン戦争と黒船来航は、西欧列強による世界システムに東アジアが経済的、政治的に組み込まれていく出来事として非常に重要です。そこに日本が早くも1875年の江華島事件で参画した事実も切り離すことはできない。

 中国の太平天国の乱、日本の世直し運動、朝鮮の東学党の乱の三つは、規模も異なり同列に扱いがたいものではあります。しかし、どれも新しい世界秩序の模索が各国の地方にまで浸透し、その影響が市井の人々に及んだことを示している。伝統的な異議申し立ての手法と、西欧起源の新しい思想・信条がミックスされている点でも共通します。

 日清、日露の二つの戦争は、日本の帝国主義で東アジアに新たな地政学的・経済的秩序が形成されていった10年間として、一括してとらえるべきでしょう。朝鮮の3・1運動と中国の5・4運動は、日本の覇権に対して民族自決を目指す動きが顕在化した新しい状況を示すもので、まさにセットで考えるべきです。

 ちなみに、この二つの運動に私が大学のゼミで触れた際、こんなことがあった。韓国系アメリカ人の学生が「先生、5・4運動って何ですか」と聞く。驚きましたが、今度は中国系アメリカ人の学生が「でも先生、3・1運動って何ですか」。私が挙げたリストのような歴史のとらえ方は重要と痛感しました。

 モダンガールの出現はささいなことに思えるかもしれませんね。でも社会史的にはそうではない。実はその前に良妻賢母の思想、後ろには女性解放運動がある。いずれも各国で共通性を持ち、相互に影響し合っています。モダンガールは世界各地でほぼ時を同じくして現れ、新たな都市生活者としての彼女たちは商品購入にいそしみ、ファッションを変え、文化的にも政治的にも主張し始めて男たちを困惑させた。パラサイトシングルなどをめぐる昨今の議論に通じるところがあります。

 満州事変と満州国建設は極めて重要な事件で、中国やロシアとの新たな緊張関係を生み、全面戦争に道を開いて20世紀のアジア最大の悲劇を生むことになった。アジア太平洋戦争は人類の悲劇であるとともに、アジアにおける帝国主義の時代の「終わりの始まり」を示すものとして、最も重要な出来事の一つです。

 その戦争から間もない時期の出来事として、米国の日本占領、中華人民共和国成立、朝鮮戦争は関連している。それぞれの国を激変させ、すでに水面下で進行していた変化を加速させて冷戦の新たな緊張と対立をもたらすことになった。その冷戦下で進んだ日中韓相互の関係正常化の過程は、アジアに新たな経済的・政治的融合のデリケートな枠組みを生んだが、以後の推移を見れば過去をめぐる諸問題は未解決のまま残され、今も基本的には変わりません。

 日本で50年代、韓国で60年代、中国では80年代に現れた経済的台頭は20世紀の経済史で最重要の出来事でしょう。最近ではさらに地域的、世界的に融合が進んでいます。

(聞き手・福田宏樹)
  • (1)アヘン戦争(1840〜42)、黒船来航(1853〜54)、江華島事件(1875)
  • (2)太平天国の乱(1851〜64)、世直し運動(1850年代〜1880年代)、東学党の乱(1894)
  • (3)日清戦争と日露戦争(1894〜1905)
  • (4)朝鮮の3・1運動と中国の5・4運動(1919)
  • (5)「モダンガール」の出現(1925)
  • (6)満州事変と満州国建設(1931〜32)
  • (7)アジア太平洋戦争(1937〜1945)
  • (8)アメリカの日本占領(1945〜52)、中華人民共和国の成立(1949)、朝鮮戦争(1950〜53)
  • (9)日韓国交正常化(1965)、日中国交正常化(1972)、中韓国交正常化(1992)
  • (10)日本、韓国、中国の急速な経済成長


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