台湾の教科書では、日中戦争は中国史、台湾史、世界史のいずれでも取り上げられている。広く使われている南一書局の「国民中学・社会」の中国史部分では「中日戦争と中共政権の発展」の単元で2ページ余りを割いている。
《民族の活力は、中国共産党の発展と日本の侵略によって最大の試練に遭った。中国人は8年に及ぶ苦難の抗戦を経てもなお、戦争の悪夢から抜け出せなかった》
個別の戦いについては触れていないが、南京事件だけは《日本軍は南京に進入し、罪のない民衆30万人を惨殺するという南京大虐殺の惨事を引き起こした》と述べ、「百人斬(ぎ)り」の模様を伝えた日本の新聞の写真も載せている。
台湾史部分では「植民地統治の強化」の単元で1ページ余りを割き、特に戦時体制のもとでの皇民化運動に焦点を当てている。
《1936年、総督府は「皇民化、工業化、南進基地化」を宣言した。台湾は戦時体制に入り、皇民化運動が強力に展開された》
《台湾籍の軍人・軍夫が大量に徴用され、中には前線に送られて慰安婦にされた女性もいた》
また、世界史部分でも第2次大戦の説明の中で2行ほど触れている。
国民党政権時代の1983年の「歴史課程標準」に基づく教科書では、蒋介石に高い評価を与える一方、抗日統一戦線を組んだ共産党については「抗戦を偽装して、地盤を拡張した」と批判していたが、今の教科書にはこうした記述は見あたらない。
南一書局の教科書の編集指導委員の周恵民(チョウ・ホイミン)・政治大学歴史学部教授は「共産党勢力の拡大につながった36年の西安事件がなければ、中日戦争の発生は先に延びたかもしれない。戦役や蒋介石の紹介よりも、西安事件と中日戦争の密接な関係を説明した」と編集方針を語る。
(田村宏嗣)