中国で最も広く使われている人民教育出版社の「中国歴史」では、改革・開放は「中国の特色ある社会主義の建設」と題する単元で18ページをあてて、詳しく説明している。
政治路線の大胆な転換をはかった1978年12月の中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(略して「11期3中全会」と呼ばれる)から、1997年にトウ小平(トン・シアオピン)理論が中国共産党規約で指導的地位を確立するに至るまで、これが中学生が読む教科書だろうかと驚くほど、硬い表現でつづられているのが特徴だ。
例えば11期3中全会については次のような記述だ。
《この会議は「二つのすべて」の方針を徹底的に否定し、新たに思想の解放と実事求是の思想路線を確立し、「階級闘争を要とする」というスローガンの使用を止め、党と国の任務の重心を経済建設に移し、改革・開放を実行するという偉大な決定を行い、会議では実質的にトウ小平を核心とする党中央の指導体制が形成された。》
「二つのすべて」とは毛沢東の後継者となった華国鋒がとった方針で、毛沢東の決定と指示を「すべて守らなくてはならない」というものだ。
学習指導要領にあたる中国の「歴史課程標準」では、「11期3中全会はわが国の社会主義現代化建設の歴史における偉大な転換点であることを認識する」「トウ小平理論が改革・開放と社会主義現代化建設の指導的思想であることを認識する」などの目標を定めており、教科書はこれを忠実に反映している。
とりわけ印象的なのは、「改革・開放の総設計師、トウ小平」といった見出しを掲げ、その理論と業績を繰り返し紹介している点だ。写真も4枚も掲載されている。
一方、89年の天安門事件など国内の民主化運動についてや、韓国、台湾の民主化についての記述は見あたらない。
(佐藤和雄)