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マッコリの免許

2010年9月24日

  • 筆者 八田靖史

写真店の裏をマッコリ工場に改装写真原料となる麹を作っているところ写真フライドチキンは店頭で揚げている写真薬味ダレを絡めたヤンニョムチキン(手前)写真ママチキンの外観

 東京、三河島にある「ママチキン」は韓国式フライドチキンの専門店。フライドチキンで「韓国式」とは耳慣れないかもしれないが、韓国ではフライドチキンの人気が高く、韓国的な要素も加えて広く定着している。コチュジャン、ケチャップ、水飴などを混ぜた甘辛いタレを、揚げたてのフライドチキンに絡めたヤンニョムチキン(ヤンニョムは韓国語で合わせ調味料の意)はその典型。付け合わせとして角切り大根の酢漬けを用意するのも、韓国においては重要なポイントとされる。

 そんな韓国式フライドチキンの専門店である「ママチキン」が、このほどまったくジャンルの違う試みに挑戦している。目指したのは、自家製のマッコリ(韓国の濁酒)造り。今年に入ってから、韓国料理業界ではマッコリの注目度が急速に高まっており、ブームの様相を呈している。多様な銘柄を揃えるマッコリバーや、韓国から独自銘柄を輸入する韓国料理店も登場するなど、オリジナリティのあるマッコリは店の大きな売りになる状況だ。

 オーナーの韓貞叔(ハン・ジョンスク)さんは、日本における酒造免許の取得を目指し、韓国から実弟の韓国男(ハン・グンナム)さんを呼び寄せた。国男さんは慶尚北道安東市の老舗醸造場で修業を積んだ経験があり、免許さえ下りれば本場のマッコリをそのまま再現できる。二人三脚で醸造設備を整えるとともに、管轄である東京上野税務署に問い合わせをして必要書類を作成。ただ、準備を始めたのは昨年8月であったが、申請手続きは容易ではなく、苦労の連続であったという。

 「最初はどんな書類が必要かもわからず、たいへん苦労しました。韓国での醸造経験についても細かく報告しなければなりませんし、どんな材料を使って、どんなお酒を作るかも事細かに申請する必要があります。必要な書類がすべて整ったのは今年の1月でした」と韓貞叔さん。そこから担当税務署の調査などを経て、今年9月1日にようやく免許が下りた。準備を始めてから、丸1年以上かかった計算になる。

 現在、店の裏はマッコリ工場として改装され、第1号となるマッコリの仕込みが始まっている。完成品として飲めるようになるのは10月中旬頃とのこと。造り立てのマッコリには「周王山(チュワンサン)」という、故郷の山の名前をつけるつもりだ。その名前を冠した2号店も湯島にオープンしており、両方の店で提供していくという。

 韓国料理店がマッコリの免許を取るという事例は、実はこれが初めてではなく、2007年に東京、新大久保で免許を取得した例もある。韓国での醸造経験や、多岐にわたる書類の作成、法定製造数量(※1)の規定など難関は多いが、今後マッコリブームが本格化していくようであれば、免許取得に動く店はさらに増えるのかもしれない。韓国料理店で手作りのキムチを味わうように、手作りのマッコリを気軽に飲める日は来るのだろうか。

※1、マッコリは酒税法上、リキュールに分類されることが多く、その場合は年間6キロリットル以上の生産が義務付けられる。

●自家製マッコリの魅力

 火入れ(加熱殺菌)をしない生マッコリの場合、ボトリングされた状態でも発酵が進むため、時間が経過すると味が変わってしまう。そのため韓国内で流通する商品は、その多くが賞味期限10日程度と短い。日本ではボトルや輸送方法が見直されたことで、賞味期限を1〜3ヵ月に延ばした生マッコリも出ているが、コストの問題や、品質維持に頭を悩ませるメーカーも多い。国内生産の道は、ひとつの解決策として注目されている。

●店舗データ地図

店名:ママチキン
住所:東京都荒川区西日暮里1−7−6
電話:03−3801−4156

店名:周王山湯島2号店
住所:東京都台東区池之端1−1−2
電話:03−3834−1235
※「ママチキン」の2号店

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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