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合鴨料理

2011年2月25日

  • 筆者 八田靖史

写真オリペクスク。ごはんを入れてお粥にする写真オリチュムルロク。甘辛く味付けをする写真合鴨の砂肝炒め。ゴマ油につけて賞味写真サムスンネの外観。大久保通り沿いに位置写真張好珍さん、張三順さん夫婦写真合鴨の飼育風景。福島県の飼育場にて

 韓国の肉料理といえば、まず有名なのは牛カルビや、プルコギに代表される牛焼肉であろう。だが最近は、韓国の食文化も幅広く伝わり始めており、サムギョプサル(豚バラ肉)、テジカルビ(味付けをした豚カルビ)といった豚焼肉も知名度をあげてきた。鶏料理にもサムゲタン(ひな鶏のスープ)という有名料理がある。こうした料理は多くの韓国料理店で定番メニューとして親しまれており、店の看板料理として掲げる店も少なくない。

 だがそんな中で、牛でも、豚でも、鶏でもない肉を専門とする韓国料理店が登場したのはかなり珍しいといえよう。扱っているのは合鴨である。韓国語では鴨、アヒル類を総称して「オリ」と呼び、韓国には専門店も数多くある。オリプルコギ(焼肉)、オリペクスク(水炊き)、オリタン(鍋料理)といったメニューが代表的だ。

 東京、新大久保の「サムスンネ」が、合鴨料理を始めたのは2009年1月。それまでは家庭料理を中心に提供していたが、周囲に競合店舗が多いことからオリジナリティの必要性を感じていた。「ほかの店にはない料理。そしてせっかく新しいものを始めるのなら健康によいものを提供したいと考えました」と語るのは店主の張三順(チャン・サムスン)さん。思案の末、韓国でも人気の合鴨はどうかと思い至った。すぐさまソウルの専門店を巡って勉強をし、これなら日本人の舌にも合うはずとの自信を得た。

 ところが、思うほど話は簡単でなかった。韓国で生産されるものは、鳥インフルエンザの影響から日本では輸入が規制されている。国産の合鴨は予算に合わず、また他国からの輸入物も使ってみたがイメージ通りの味にならなかった。

 計画が頓挫しかけたところで、窮地を救ったのがご主人の張好珍(チャン・ホジン)さんであった。「安くて質のいい合鴨が手に入らないのなら、自らの手で育てればいい」と、合鴨に関してはまったくの素人だったが一念発起。あちこちに問い合わせを繰り返し、必要な設備や、飼育に関するノウハウを調べた。同時に認可関係の書類も手配し、2010年2月になって福島県でようやく試験的な飼育にこぎつけた。

 その後も施行錯誤の繰り返しだったが、苦労の甲斐あって、最近はイメージ通りの合鴨を育てられるようになったという。韓国料理では丸鶏の状態で調理、提供することも多いため、意図するサイズで店に卸せるのも大きなメリットであった。現在はご主人の育てた合鴨を、オリペクスク、オリチュムルロク(味付け焼肉)、オリロースグイ(塩焼き)、合鴨の砂肝炒めといった料理に調理し、好評を得ている。

 今後の計画を尋ねてみると、「エサにニンニクを混ぜて飼育をしたり、あるいは薫製なども試してみたい」との答えが返ってきた。夫婦で協力しながら、あれこれ意欲的にチャレンジしていく方針らしい。韓国料理としての知名度は他の肉料理ほどではないが、合鴨料理も韓国の食文化を担う重要な一角。個性的な専門店の奮闘で、日本における韓国料理の裾野もさらに広がっていくことを期待したい。

●オリ料理の魅力

韓国では漢方食材を加えて調理することも多いため、滋養強壮料理としての側面もある。オリペクスクに高麗人参、キバナオウギ、甘草などの漢方薬を加えて煮込んだり、ウルシの木と一緒に煮込む調理法もある。あるいは飼育段階で硫黄をエサに混ぜることもあり、これは「ユファン(硫黄)オリ」と呼ばれて珍重される。ユファンオリは滋養強壮のほか、デトックス効果も期待できるとされており、高級料理として親しまれている。

●店舗データ地図

店名:サムスンネ
住所:東京都新宿区大久保2−18−10新宿スカイプラザ108
電話:03−3207−1768

プロフィール

八田靖史(はった・やすし)

コリアンフードコラムニスト。1976年生まれ。東京学芸大学アジア研究学科卒業。1999年より1年3カ月間韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年に韓国料理をテーマにしたメールマガジン「コリアうめーや!!」を創刊。同名のホームページ(http://www.koparis.com/~hatta/)も開設し、雑誌、新聞などでも執筆活動も開始する。著書に『八田式「イキのいい韓国語あります。」』『3日で終わる文字ドリル 目からウロコのハングル練習帳』『一週間で「読めて!書けて!話せる!」ハングルドリル』(いずれも学研)がある。

日々、食べている韓国料理を日記形式で紹介するブログ「韓食日記」も運営中(http://koriume.blog43.fc2.com/)。 ※執筆者の新著が出ました。「魅力探求!韓国料理」(小学館)。

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