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瀬戸際クリントン氏 オバマ氏に9連敗

2008年03月02日12時18分

 ヒラリー・クリントン米上院議員が、米大統領選の民主党指名レースで一歩も引けない窮地に陥っている。予備選9連勝というオバマ上院議員の快進撃を前に、反撃の糸口がつかめない。4日のテキサス、オハイオ両州での予備選で事実上、命運が決まると見られている。米メディアでは、敗北は不可避とみて「名誉ある撤退」を求める論調も出始めた。しかし、クリントン陣営はまだまだあきらめていない。逆転を狙って粘りに粘る構えだ。

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◆4日、4州で米大統領選予備選 「脅し作戦」札を切る

 ベッドで寝ている子供の顔が大映しになると、ナレーションが流れる。「午前3時、ホワイトハウスで電話が鳴る。世界で何か起きた。あなたの1票は、誰がその電話に出るかを決める。誰に出てほしいですか」

 クリントン陣営が2月29日、テキサス州で流し始めたテレビ広告だ。核戦争の危機をにおわせながら、オバマ氏より経験豊富なクリントン氏の方が「最高司令官」にふさわしいと訴える。

 「脅し作戦」といわれ、過去の選挙にも使われた。しかし、恐怖心をあおり立てるとあって反発を招く危険をはらむ。イチかバチかの勝負ともいえるもので、クリントン陣営が追いつめられた証左と見られている。

 クリントン氏は2月5日のスーパーチューズデー以降、予備選・党員集会で負け続けている。指名獲得に必要な代議員数で引き離されるだけでなく勢いも失うため、支持の広がりや献金の集まり具合にも影響が出る。流れを変えたいところだが、オバマ氏の勢いは逆に強まっている。

 午後11時13分、同10時42分、同10時46分。29日まで3日間、クリントン氏が最後の集会を終えて会場を後にした時刻だ。

 多いときには1日に6カ所もこなす。オバマ氏よりはるかに過酷な運動を展開している。最後の集会に到着するのは午後10時ごろ。疲れを見せず支持を訴える姿からは、何としても勝ちたいという執念に似た思いが伝わってくる。

 それにもかかわらず、事態は厳しさを増す一方だ。党内有力者の間でオバマ氏への支持表明が相次ぐ。ニューズウィーク誌最新号には「ヒラリーよ、撤退せよ」というコラムも載った。

 選挙戦もオバマ氏の指名獲得が前提になっている。共和党で指名をほぼ確実にしたマケイン上院議員は、オバマ氏を標的にして批判を展開。オバマ氏の集会でも「マケイン氏とどう戦うか」という質問が出て、オバマ氏が「まだ決まっていない。クリントン氏は侮れない」などと戒める場面も見られる。

◆「政策で差」攻め空回り

 クリントン氏がなぜ苦戦しているかは、出口調査や世論調査の結果を見れば明らかだ。

 2月26日に発表されたニューヨーク・タイムズ紙の世論調査は衝撃的だった。昨年12月と比べると、クリントン氏への支持は「白人女性」を除くすべての有権者層で横ばいか落ち込んでいるのに対し、オバマ氏は軒並み20〜30ポイントという大幅な伸びを示している。

 とりわけ、これまでクリントン氏の「金城湯池」と言われてきた白人女性や低所得者層などの間でオバマ氏への支持が大きく広がっていることは、クリントン陣営にとって深刻だ。

 さらに、メディアも有権者も両者の政策に大した違いはないと見ていることも、経験に裏付けられた政策能力で差をつけたいクリントン氏には痛い。

 同紙コラムニスト、クルーグマン氏は、クリントン氏が「違い」にこだわる医療保険改革について「技術的でよく分からない」と書いた。オバマ氏が「(2人の案は)95%似通っている」と繰り返し語っていることもあって、クリントン氏の「攻め」は空回り気味だ。

 政策の中身ではなく、「ワシントンの政治のやり方を根本的に変える」などと過程や手法の転換を主張するオバマ氏に軍配が上がっている。

 クリントン陣営の作戦の誤りも指摘される。スーパーチューズデー以降、敗北が続くなか「勝負は(代議員数の多い)テキサス、オハイオ」として有効な手を打たなかったというものだ。フロリダ州の勝利にすべてを賭けて敗退したジュリアーニ前ニューヨーク市長(共和党)に似た状況に立ち至ってしまった。

 最近の全米世論調査では、オバマ氏に逆転された傾向がはっきり見える。クリントン氏支持者の間では「結局、米国民は黒人大統領は受け入れても、女性大統領を受け入れる準備はできていない」など、あきらめに似た発言も聞かれる。

◆基準緩めて戦いを継続?

 指名の行方を最終的に決めるのは、2人のうちどちらが代議員の過半数を獲得するかだ。しかし接戦の結果、現時点での開きはわずか。いずれが残りの予備選・党員集会で全勝しても、過半数を取るのは無理だと見られている。そのため、クリントン陣営が今後敗北を重ねた場合、いつ指名レースから撤退するかが注目の的となっている。

 ビル・クリントン前大統領は遊説で「テキサスとオハイオで勝てばヒラリーは指名候補になるが、勝てなければそうならない」と語り、両州での勝利は必須との見方を示した。

 しかしテキサスは支持率で全くの互角となり、負ける可能性も出てきた。クリントン陣営は29日、支持者らに電子メールを送り「テキサス、オハイオなど4日に予備選が予定されている4州すべてでオバマ氏が勝てなければ、民主党員は同氏を党の指導者とみなすことに疑問を感じるだろう」と主張した。

 オバマ陣営がクリントン陣営の2倍以上の運動費をつぎ込んでいるからという理由だが、要するにテキサス、オハイオのどちらかを落としても撤退はしないという意思表示と受け止められている。苦しくなって戦い継続の基準を緩めたようだ。

 さまざまな逆風にもかかわらず、2月の献金額は3500万ドル(約36億円)と過去最高になる見込みとなった。1月の2倍以上だ。4日に負けても戦いは続けられるという強気の背景には、この「復調」がある。

 陣営の参謀、ペン氏は26日の政策討論会後、「(8月の)党全国大会まで行く」と公言した。

 ただし、ワシントンの専門家の見方は厳しい。

 「たとえ2州で勝ってもぎりぎりなら、戦いの継続は難しくなる」(ナショナル・ジャーナル誌のブラウンスティン氏)。「2州とも大差で勝たなければ、党内から『クリントン降ろし』の声があがる」(政治評論家のクック氏)。そんな空気が支配的だ。

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