2008年2月7日
ハッカビー氏=AP
ロムニー氏=AP
米大統領選の候補者指名レースで最大のヤマ場とされた5日のスーパーチューズデーは、20を超える州で予備選・党員集会が一斉に行われるという、かつてないほど大規模になった。見どころを紹介した「観戦ガイド」が新聞に載るなど米社会の関心も最高潮に。レースの行方を決するかと見られていたが、ふたを開ければ「敗北」を認めた陣営はゼロ。両党の主要5陣営はそれぞれ「強さ」をアピールし、戦いの続行を宣言。チャンピオンは、決まらなかった。
■民主 粘り腰・勢い 両者「勝利」
5日夜、クリントン上院議員が地元ニューヨークの集会で、支持者の前に姿を見せたのは、米東部時間午後10時50分。3時間の時差がある最大州カリフォルニア州で投票が終わる10分前だった。
「今夜、私たちは全米各地の人々の声を耳にした」。まだ全米レベルでの得票の行方は見えていなかったが、あえて余裕の姿勢を演出した。
オバマ氏に逆転を許す可能性が取りざたされていたマサチューセッツ州などを、粘り腰で制したことは分かっていた。先手を打って主導権を握ったことを印象づけたい、という思惑がにじんだ。
CNNの出口調査では、クリントン氏に投票した人のうち、最も多い45%が「経験」を第1の選択要因に挙げた。会場を訪れた支持者の医師シンシア・ウィットマンさん(52)は「間違いなく最高の候補者。前大統領の夫とのコンビで外交も問題ない」。
強さの一つが女性票だった。弁護士レベッカ・シーライトさん(45)は「彼女は何百万人もの女性の手本。女性大統領の誕生が楽しみ」。ニューヨーク州では全体の58%を占める女性票のうち62%を獲得した。
その約50分後、地元イリノイ州シカゴの集会会場に現れたオバマ上院議員もまた、やはり誇らしげに振る舞った。
1年前の出馬表明を振り返りつつ、「ささやき声で始まったものが、今や変革を求める数百万人の合唱まで盛り上がった」と鼓舞した。出口調査ではオバマ氏支持層の74%が「変革」を選択の第1要因に挙げた。「経験」を挙げたのは3%にすぎなかった。
自らを「挑戦者」と位置づけたオバマ陣営は開票後、「相手が大幅にリードしていた州でも肉薄した」と、「勢い」をアピールした。
実は、党指名争いのカギを握る州ごとの代議員争いでは、クリントン氏とオバマ氏の差はそれほど大きくはない。民主党は、代議員数は得票に応じた比例代表式で配分され、共和党が多くの州で採用する「勝者総取り」方式ではないからだ。
クリントン氏は演説で「討論を続けるのを楽しみにしている」と長期戦への覚悟を表明。オバマ氏も「この秋、米国は選択を迫られる」と、あきらめない姿勢を明確にした。
確実なのは、歴史的な大接戦がしばらく続くことだ。それでも、クリントン氏の集会に来た女性(27)は「どっちが指名されてもうれしい」と話した。接戦を繰り広げるほど注目が高まることを支持者は期待している。CNN調査では、2人のどちらが指名候補になっても「満足」と答えた人が、70%を超えた。
■共和 「我こそ保守」訴え競う
共和党のマケイン上院議員はニューヨーク、カリフォルニア両州を始めとする大規模州で次々に1位を獲得。代議員数では相当な優位に立った。
地元アリゾナ州フェニックスで5日夜に開かれた集会では、映画「ロッキー」の勇壮なテーマが流れる中、登場。だが会場には、指名獲得レースを大差でリードしたのに、ゴールにいま一歩手が届かなかったもどかしさも漂った。
得票率で半数を超えたのはニューヨーク州とその隣接州にとどまりそう。撤退後に支持を表明したジュリアーニ前ニューヨーク市長の存在が大きかった地域だ。マケイン氏は「先頭走者にも慣れないといけない」と少し自虐気味の勝利演説。その最後で、「私は共和党員です」という言葉を6回繰り返した。「皆さんと同じく、税金の無駄遣いはやめさせたいし、政府には国防の義務があると信じる」
党籍を今さら強調するのには理由がある。上院議員として、移民問題で民主党議員と議員立法を出すなどの「中道」ぶりが問題視される構図がぬぐえないからだ。
伝統的保守派には根深い不信感を抱かれており、最近も、著名な保守派ラジオ司会者に「彼が指名候補になったら、ヒラリーに投票する」とまで言われた。主要州を押さえて指名に向けて大きく前進した半面、党内保守層をまとめきれない「弱み」も同時に浮き彫りになった。
それでも集会に参加した元アリゾナ州共和党委員長のマイク・ヘロンさんは「過去の行動は、予備選では確かに不利に働く。だが本選挙では、無党派層の支持を得て強みになるはず」と話した。
一方、ボストン市内で支持者を前にしたロムニー前マサチューセッツ州知事は「今晩ですべて終わると考えた人もいたが、終わっていない。我々は党大会まで戦い続け、ホワイトハウスを手にする」と、戦線継続の構えを崩さなかった。
陣営幹部も「本当の保守代表は我々だという認識を共和党の隅々に行き渡らせたい。戦略にも変更はない」と、強気の一点張りだった。
ただし、州単位でみると伸び悩んだ。逆に、保守層への浸透を争うハッカビー前アーカンソー州知事に南部での健闘を許し、「ロムニー氏はこのレースは2人の争いだと言ったが、その通り。我が陣営がその片方だ」と皮肉られてしまった。
マケイン氏にとってはハッカビー氏が隠れた「援軍」でもある。「ハッカビー氏は卓越した選挙戦の能力をまた示した」とエールを送った。