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政治に動く若者たち

2008年2月23日

    写真首都ワシントンの大学で1月28日、オバマ氏(右手前)に殺到する若者たち写真ニューヨーク大学で12日、パソコンを広げてテレビの開票速報を見る学生グラフ

    オバマ氏連勝の原動力

     米大統領選の指名獲得レースで、民主党のオバマ上院議員をトップランナーに押し上げた原動力が、波のように広がる若年層の政治参加だ。ネットを駆使した草の根の活動が全米を覆い、20代前半の投票率は各地で急上昇。この8年間の米国の姿に不満を抱え込んだ若者たちが、1票を手にして、高らかに世代の声を上げ始めた。若いうねりは、この国の政治を変えるのか。

    大学拠点、ネットで連携

     零下20度近い冷え込みのなか、ウィスコンシン大学マディソン校のエイミー・エルシェリフさん(20)は19日、15時間も外出していた。

     午前6時に仲間約50人と集まり、学生らの下宿をノックして回った。この日のウィスコンシン州予備選で、オバマ氏に投票してもらうために。

     「どの州でも同じような活動をしているはず。自分も何かの大きな動きの一部だと感じる」

     発火点は、アイオワ州だった。

     全米に先駆けて党員集会が行われた1月3日、同州のドレイク大学でジョーダン・オスターさん(19)は驚いた。「冬休みなのに、みなオバマ氏に投票するために大学に戻ってきたんだ。この勝利は全米に広がるよ」

     予感は当たった。同州にボランティアで集まっていた全米の学生たちが熱気を持ち帰った。ウィスコンシン州のエルシェリフさんもその一人だ。

     ニューヨーク大学(NYU)のミカ・ロスマンさん(19)も、大学に戻って仲間を集め、全米で最も活動的とされるオバマ応援団を結成。各州出身の学生が友人などの人脈を使い、予備選や党員集会が行われる州を狙い撃ちして支持を広げる。

     バージニア州や首都ワシントンで予備選が行われた12日は、校内の大きな壁掛けテレビを前に開票結果を見守った。

     メンバーの半分はひざの上でパソコンを開く。「インターネットで組織されてるようなもの」とロスマンさん。仲間との情報交換から勧誘まで、彼らが縦横に駆使する最大の武器が、ネット上に自分の情報を載せて他の会員とメッセージを交換し、交友を広げるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。

     ネットが時間と距離を飛び越え、全米各地との連携が短時間で進んだ。大学を「人の拠点」、ネットを「情報共有のツール」にして、網の目のように運動が広がる。

    カギは「参加意識」

     若者の活動が全米に波のように伝わった背景には、オバマ陣営の計算された戦略もあった。

     コネティカット州トリニティ大学の民主党員クラブ代表、ケイト・コッペルマンさん(22)は、ヒラリー・クリントン上院議員とオバマ氏の両陣営から勧誘された。

     クリントン陣営はチラシを見せ、誰を支持するのか質問しただけ。オバマ陣営のスタッフは事務所に招き入れ、彼女自身の考えについて聞いてきた。「一緒にピザの残りを食べ、私も一緒にできるって気がした」

     オバマ陣営が若者を巻き込むカギは「参加意識」だ。投票を呼びかけるだけでなく、参加するよう誘い、一体感を与える。大規模な州より、人口が少ない党員集会スタイルの州を得意とする理由は、ここにある。

     「ヒラリーは『私に投票すればすべて面倒を見ます』。オバマの演説は『私に投票して一緒にやろう』と聞こえる」とNYUのステファニー・ベイカーさん(19)。政策の「中身」より、政策実現への「参加」こそ若者たちが求めるものだと、オバマ陣営は熟知する。

     「政策はよく知らないが、変化を望む若者がオバマ氏に、政策自体に興味を持つ若者はクリントン氏に投票している」と、若者の投票率向上を目指す団体SAVEのマシュー・シーガルさん。

     オバマ氏はニューハンプシャー州やニューヨーク州で敗れたが、18〜24歳に限ればクリントン氏を上回った。

     その後の連敗に焦りを強めるクリントン陣営は娘のチェルシーさんを駆り出して若者の共感を得ようと努めるが、大きな成果は得られていない。

    「変化・反戦」に共鳴

     若者たちが政治に目覚めた理由は、彼らが生きてきた時代と密接にかかわっている。

     ペンシルベニア州ハバフォード大学に通うデビッド・バーンステインさん(19)は、政治に無関心な同世代に、歯がゆさを感じてきた。

     ベビーブーマーの親たちはベトナム反戦で政治を動かしたのに、僕らの世代はなぜ……。その理由を探るため、政治家、学者、学生100人以上にインタビューし、「08年の18歳」というドキュメント映画を作った。

     「僕らの世代が政治に期待しない理由は理解できる。イライラするし、エキサイティングでもなかったから」

     今の20代前半の世代が社会に関心を持ち始めたころ、すでにブッシュ政権だった。多感な10代にイラク戦争など米国の単独行動主義を経験し、多くの幻滅を味わった。

     「若者たちが米国のイメージを回復したいと強く願っている」とハーバード大のトーマス・パターソン教授(政治学)は指摘する。「理想を語り、変化を求め、人々を巻き込むオバマ氏のメッセージは、彼らの思いと共鳴する」。若者たちがため込んだうっ屈を推進力に変えたのが、オバマ氏の「チェンジ」というかけ声であり、首尾一貫したイラク反戦の立場だといえる。

     映画を製作したバーンステインさんは、親の世代と自分たちは何かが決定的に違う、と考えるようになった。「ベビーブーマーも今は、社会保障や税制のように自分に影響する政策にしか興味がない。でも僕らは、世界に影響を与える政策こそ大切と考えている」

     ミシガン大学のアーサー・ルピア教授(政治学)は「年配の民主党支持者は同党伝統の『大きな政府』を信奉し、その観点から国民全員加入の医療保険制度を主張するクリントン氏に親近感をおぼえる。オバマ氏はそんな民主党色が薄い分、党派意識を持たない若者から支持を得ている」と世代間ギャップについて説明する。

     18〜24歳の約3000万人が、大統領選の行方を決めかねない力を持ち始めた。

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