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オバマ氏とマケイン氏、育まれた個性

2008年6月19日

    図   ※写真をクリックすると拡大します

    ■ハワイ 多様性の島、楽観主義生む

     ワイキキビーチを吹き抜けた太平洋の海風は、ホノルルの街から緑の山へと駆け上がる。オバマは71年、インドネシアから米ハワイ州に戻り、オアフ島にあるプナホースクールの門をくぐった。

     私立名門校に、奨学生として入学。母と妹マヤはしばらくインドネシアに残ったため、母方の祖父母のアパートから通った。

     担任だったエリック・クスノキ教諭は、顔を見るまでアフリカ系(黒人)だとは気づかなかった。「ハワイにはオバマ(小浜)もいれば、オハラも、オバナもいる」。そもそも生徒の人種に頓着する空気はここにはない、と言う。

     ハワイは日系や中国系、白人、黒人、先住民が一緒に暮らす多様性の島だ。異なる人種、民族への寛容さを地元の人々は「アロハ・スピリット」と誇らしげに呼ぶ。

     オバマ自身が多様性の「産物」といえた。父は黒人、母は白人。インドネシアとハワイで育った。インドネシアでは義父の姓から「ベリー・スートロ」と名乗ったが、ハワイでは「バリー・オバマ」に変わった。複雑なアイデンティティーを持つ少年を、人々はゆるやかに包み込んだ。

     オバマはケリー・フルシマという同級生の日系女性に惹(ひ)かれた。「僕たちの関係はまだ始まったばかりだけど、来年はもっと分かり合えるといいね。ラブ、バリー」。学校の文集で恋心を吐露した。

     「落ち込む彼を見たことがない」とフルシマは言う。陽気で背が高く、バスケットボール選手として活躍。文芸クラブにも入り、内省的な一面も。校内誌に書いた詩には、こんな一節がある。

     「年老い、忘れられた男を見た。(中略)尊厳を、くたびれたコートから取り出して、ねじれた世界の真っすぐな線を歩く」

     友人にアフロヘアをからかわれても、家には温かく見守る白人の祖父母がいた。米本土の黒人が体験するむき出しの差別と無縁だったことが、絶望に落ち込んだり、怒りにはけ口を求めたりせず、解決策はきっと見つかるという前向きの態度につながった。

     「イエス・ウイ・キャン」(私たちは出来る)。選挙戦のうたい文句が示す彼の楽観性は、ハワイの風土にはぐくまれた強みだろう。半面、全世界と向き合う米大統領としては、危険をはらむ「甘さ」と見られる可能性もある。

     マヤは2月、ホノルルで支持者に語った。「自分の内面にある多様性を世界も受け入れられるよう、兄は勇気づけているのです」

     04年暮れ、上院議員に当選して母校に里帰りしたオバマは、後輩たちにこんなアドバイスをした。「夢を見るなら、大きな夢を見てください」。オバマの夢の原型は、今もハワイにある。(ホノルル=小村田義之)

    ■士官学校 一匹狼、権威や主流に反発

     巨大な星条旗が、大西洋の海風になびく。米メリーランド州アナポリスのネーバル・アカデミー(海軍士官学校)には、海軍士官を目指す若者たちが全米から集う。

     五十数年前。土曜日の午後、若きジョン・マケインが歩兵の制服に身を包み、小銃を持って行進する姿がしばしば見られた。靴磨きからつめの手入れまで厳しい校則に縛られ、違反が五つ重なると1時間の行進の罰が科される。

     「全部足すとボルティモアまで軽く往復できるぜ」。そう本人が話していたのを、当時、寄宿舎のルームメートだったフランク・ガンボア(74)はおぼえている。

     それでも宿舎を抜け出し、酒場に繰り出した。禁止されているテレビを持ち込んだ。不良学生マケインはビリから6番目の成績で士官学校を卒業することになる。「ジョンは学校に愛情と憎しみの両方を抱いていただろうね」

     海軍のほかに彼に選択の余地はなかった。祖父は1945年、戦艦ミズーリ上で日本の降伏調印式に立ち会っている。父も海軍提督となり、マケインは幼いころ、基地を転々として育った。

     落ちこぼれだったわけではない。敷かれたレールへの反発が悪ガキぶりとなって表れたとガンボアは考える。家族の伝統を誇りに思いつつ、その重さが選択肢を狭めるいらだち。「今の彼の振る舞いの元となる人格は、士官学校で作り上げたものだよ」

     その言葉の通り、70歳を過ぎた今も、政治家マケインには、若き日の面影が浮かぶ。

     02年に大企業の献金を規制する法案を成立させ、05年には不法移民の在留を条件付きで認める法案を民主党議員と共同提案した。外交・安全保障以外では「リベラル」と目され、中道層から一定の支持を得る半面、共和党の右派からは嫌われる。「マベリック(一匹狼(おおかみ))」のあだ名は健在だ。

     「反主流派ではなく、自分の考えに従って決めたいだけ。多くの政治家はただ党の方針に従っている」。弟のジョー・マケイン(65)は、兄の性格をそう説明する。

     その一匹狼が、遅咲きのホープとして表舞台で脚光を浴びる。ブッシュ政権の失政で有権者が保守政治と距離を置く今、無党派にアピールできるマケインを「時代」が呼び出した格好だ。

     指名候補の座を確実にした2月、保守系団体の会合でマケインは語った。「私のいくつかの立場が皆さんと異なっていたのはわかっている。だが、保守主義の基本的な部分は同じだ」

     ブッシュ大統領の負の遺産を背負い、党内の保守派とも折り合いながら、どこまで自分の信念を貫き通すことができるか。「反逆児」の試練が始まった。

    (アナポリス=真鍋弘樹)=敬称略

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