現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 国際
  4. ’08米大統領選
  5. 徹底解剖 米大統領選
  6. 記事

経済不安で国民心理の「振り子」逆転 大きな政府

2008年11月8日

    写真米デトロイトで4日、大統領選の投票をする人たち=AP

     「まれにみるテンポで鉄鋼受注の勢いが弱っている」――。米鉄鋼労働者組合幹部のトム・コンウェイ氏は明かす。経済全体を映す鉄鋼業は、高炉の半数近くを休止させ始めたという。自動車不況が長引くミシガン州デトロイト郊外で、鉄鋼関連の仕事をするドナ・ショックさん(50)は「この先どうなるのか心配。できれば政府に助けてもらいたい」と話し、オバマ氏に票を投じた。

     民主党のオバマ氏が4日の大統領選で圧勝したのは、経済の先行きに不安を抱えた有権者たちからの強い支持があったからだ。投票所の出口調査でも政府は問題解決に向けて「もっとやるべきだ」と思う有権者が51%に達し、「すでにやりすぎだ」の43%を大きく上回った。政府の関与を求める声が多かったのは少なくとも94年以来初めてだ。

     米国は70年代以降、最も長い不況が懸念される。オバマ氏は「規制や消費者保護を弱め、豊かな人に恩恵を与えれば、社会全体の繁栄が広がるという理論に基づくブッシュ政権の政策は失敗した」と訴えてきた。

     危機とともに、人々の心理の「振り子」が逆に振れ始めている。その揺れが、民間の干渉を抑える「小さな政府」をめざした過去8年の共和党・ブッシュ政権の路線を否定し、政府の役割を強める「大きな政府」への転換を促している。

     米国では、ベトナム戦争以来、政府の行き過ぎた介入や規制に反対する傾向が優勢になり、規制緩和を進めた80年代のレーガン政権につながったといわれる。グローバル化の繁栄の中でその傾向は最近まで続いた。だが、競争激化や格差拡大への不満、社会保障への不安が増大。「周期が転じて、政府に助けを求める傾向が強まっている」とプリンストン大のアーロン・フリードバーグ教授は話す。

     危機の発端となった金融界にも規制を容認する見方が出ている。金融危機の背景について、著名な投資家、ジョージ・ソロス氏は「80年代以降に市場優先主義が広まり、規制緩和がグローバル化とともに加速したこと」と語る。

     民主党は伝統的に、所得再配分などによる「大きな政府」志向だ。今回は議会選でも議席数を伸ばし、その勢いは増しそうだ。金融対策の中心人物、フランク下院金融サービス委員長は「(大恐慌の際の)ニューディール政策のように、様々な規制を検討しなければならない」と話す。

     民主党はすでに年内と来年早々の2回にわたる追加の景気対策を打ち出す方針を明らかにしている。オバマ氏も7日、元財務長官のルービン、サマーズ両氏や連邦準備制度理事会(FRB)のボルカー元議長ら17人でつくる経済顧問委員会と選挙後初という会合を開き、景気回復などの重要性を強調する見通しだ。

     だが一方で、国内には「大きな政府」に抵抗感を持つ人も少なくない。経済政策に影響力が大きいルービン氏らも放漫財政や過剰規制に批判的な姿勢をみせる。政権発足後は、経済の現実と世論をにらみながら、政策の選択が迫られる。(ワシントン=西崎香)

    PR情報
    検索フォーム
    キーワード:


    朝日新聞購読のご案内