現在位置:asahi.com>国際>’08米大統領選>ひと物語> 記事 9・11「英雄」に募る怒り 消防士父子、子は現場で殉職2007年11月22日 生粋のニューヨーカー、ジム・リッチェズさん(56)は消防士になって31年になる。息子3人も、同じ道を歩んだ。 長男ジミーさんが30歳になる前の日だった。 「明日の誕生日、家族で夕食を囲もう」「うん、いいね」。それが最後の会話となった。 01年9月11日、長男は、世界貿易センタービルに最初に駆け付けた消防士の一人だった。 遅れて着いた父は、長男がビル崩壊に巻き込まれたことを知った。その日から、がれきのなかで捜索する日々が続いた。ヘルメットと遺体の一部が見つかったのは翌年3月。自らの手で掘り出し、星条旗で包んだ。 9・11は父親の体にもつめ跡を残した。大量の粉じんを吸ったことで呼吸困難となり、16日間、昏睡(こんすい)状態に陥った。 よみがえった意識に浮かんだ。「息子が殉職し、自分も死にかけたのは、テロリストのせいではない。ビル内で通じない無線機を導入し、アスベストで汚染された空気を安全だといい、紙のマスクしか与えなかったのは、あの市長だ」 9・11は当時のニューヨーク市長、ジュリアーニ氏を英雄にした。崩壊直後のグラウンド・ゼロで危険も顧みずに陣頭指揮を執る雄姿が世界中に流れ、卓越したリーダーシップが高く評価された。遊説でも9・11の経験を持ち出し、テロ対策の重要性を強調する。 だが、リッチェズさんが現場で見たのは、カメラの前に著名人と一緒に現れ、すぐに消える前市長の姿だった。犠牲者を踏み台にして脚光を浴びたとしか思えなかった。 同じ考えを持つ消防士たちと、ジュリアーニ氏の全国遊説を追いかける計画を立てている。演説会場の外で人々に話すつもりだ。彼の失敗、そして自分たちの怒りを。 ◆求める資質「正直さ」 「リーダーシップ」を上回る 同時多発テロの衝撃は今も人々の心に重くのしかかる。ジュリアーニ氏が共和党の大統領候補指名争いで先頭を走る背景には、「テロへの不安」がある。 一方、対テロ戦争に突進した「強力なリーダーシップ」への不信も広がる。4月のギャラップ社調査で「次の大統領に最も大切な資質は?」という問いに「リーダーシップ」と答えた人は16%で、「正直さ」の33%を大きく下回った。 PR情報 |